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劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

新作オペラ『雪女の恋』制作過程6<稽古場の確保>

2018年12月30日 | オペラ
 東京ミニオペラカンパニーvol.2『雪女の恋』二幕の上演に向けて、徐々にだが着実に態勢づくりが進められている。音楽家・舞台スタッフの理解と協力のお蔭だが、プロデューサーとしては「稽古場の確保」が喫緊の課題である。ソリスト4名・コーラス12名に加えて、指揮者・演出家・オーケストラ5名の日程と時間帯調整は至難の業だが、制作サポートに就いてくださったソリスト藪内俊弥氏の粘り強い尽力によってその「稽古日程」が確定された。今度は制作者の出番である。
 年明けに、立ち稽古・合唱音楽稽古・オケ音楽練習がスタートを切り、合同稽古も控えている。確定された稽古日程に対する「稽古場の確保」は急務となり、都内の施設に電話をかけまくり、予約が取れるとすぐに使用料の支払い・承認書の受け取りに走った。どちらの施設にもピアノがあることや、こちらの条件に合った広さがなければならない。少人数のキャスト稽古、合唱音楽稽古、全体の合同稽古、それぞれ異なる広さが求められるのだ。藪内氏による情報にも助けられ、北区の施設、葛飾区にあるコンサートホールの練習室・リハーサル室、東京文化会館リハーサル室、ほとんどの稽古場を抑えることができた。
 残ったのは、オケ音楽練習用の稽古場である。音楽関係者が利用する施設には、アップライトではあってもピアノはまずあるし、ヴァイオリン・チェロ・フルートは奏者が持参できる。問題は、ハープであった。ハープの備品がある施設はほとんど無い。レンタル業者に依頼する(搬入・設置・搬出も含めて)し、複数回の練習に対応してもらうと、相当の費用が掛かる。いきおい、公共施設以外にも当たるしかなかった。
 そして、「カノン音楽教室(綾瀬)」に行きついた。そこにはハープを教授するスタジオがあり、5人の練習にも十分なホールもあった。ハープの貸与と練習場の使用が同時に可能となったのである。また、教室主宰者がフルート奏者でもあることから、音楽家の利用には理解があり親切な対応をしてくださったので心強い思いだった。
これで、全日程の稽古を進められることになり、安心して年を越せそうである。


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新作オペラ『雪女の恋』制作過程5<公演案内DMとロビー書展>

2018年11月30日 | オペラ
 公演チラシが完成すると、印刷物として関係者に配布される。私も300名分のDM発送の準備に取り掛かる。年賀状のやり取りをしている友人・知己たちへの公演案内である。
 今回は案内状に一筆添える必要がある。19歳から始めて半世紀を超える上演活動の大きな節目とするため、また時期的にも年末年始の挨拶も兼ねるので、個人的なメッセージを一人一人に送りたいのだ。一筆とはいえ、言葉を通した会話である。これを数百人に向けて書くのには、一日や二日では無理で一週間は掛かる。投函してからしばらくして通帳(チケット代金の振込先)を開くと、入金額と氏名の印字が確認される。すぐさまチケットを郵送するのだが、その際には会場の座席表も同封する。全指定席にしたため、その方の座席が一目で分かるように印をつける。
 演劇からオペラへとジャンルは移ったが、ライフワークとしての上演活動が「芸術を通した人間の集会」というモットーを胸に抱き続けてきた。かつて「民衆演劇」を世に問うてきた先人たちがいる。ロマン・ロラン『民衆劇論』(大杉栄訳『民衆芸術論』)、ジャン・ヴィラール「国立民衆劇場」、ベルトルト・ブレヒト「叙事詩的演劇」、宮本研(『明治の柩』『ザ・パイロット』『美しきものの伝説』)…学生時代に出会った書籍や舞台、そして戯曲の手ほどきを受けた劇作家から受けた影響は私の上演活動の核になっている。来年2月、ホールのロビーで、人々はどんな語らいをするのだろう。
 さて、ロビーといえば、当日「雪女の恋」にちなんだミニ書展がその一角で催される。「奎星会」の役員を務められている成田誠一氏と門下生お二人の書が展示されるのだ。成田先生には、前回公演の「悲戀~ハムレットとオフィーリア」の題字をお願いした。『今回、台本にある詞章を素材に書いてみたい』というお言葉を頂き、二行および三行の詩句を三点お送りしたら、すべて作品にする、とのことだった。今月初め、その作品が東京都美術館での「奎星展」に出品された。美しく・たおやか・力強い書たちであった。それらは、別々の展示コーナーに掛けられていたのだが、東京文化会館小ホールのロビーでは、三作がまとまって「雪女の恋」の世界を表出することとなる。ホール内では「歌劇」、ロビーでは「書」によって、人間の魂と美が深く描かれる。


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新作オペラ『雪女の恋』制作過程4<公演チラシとホームページ>

2018年09月30日 | オペラ
 オペラに限らず、公演準備の重要な仕事の一つに「広報宣伝」がある。観客・聴衆一般に公演内容を知らせ、集客につなげる方法手段である。従来からのアナログ媒体はいわゆる公演チラシ(フライヤー)であり、近年のデジタル媒体はホームページになる。
 チラシは、劇場に置かれたりDMで郵送されたりする一枚の紙である。それは公演日時や会場、公演内容や出演者・スタッフ、チケット取扱い先などを知らせる印刷物なのだが、その目的以外に、その公演に臨む制作者の意図や姿勢、創造される作品世界の表徴が示されている。それだけに、プロデューサーとしては、公演チラシのデザインには神経を使う。そこに、劇世界の入り口があるからだ。
 今回のオペラ『雪女の恋~ニ幕~』の場合も、「画面」のイメージ=山奥に降りしきる雪とタイトル文字=書家によるダイナミックな墨痕は決まっていた。題字は知己の島津碧嵓氏に依頼し、出来上がった書を持参して「チラシデザイン打合せ」に臨んだ。東京二期会事務局・大門千寿子さんに紹介されたデザイナー・坂本伸二氏は、こちらの意図を理解され、後日、さのオフィスにおいて見せて頂いた作品は見事なものだった。これでお客様を作品世界に案内できると安堵と満足感に浸ったものである。デザインが確定した後は文字原稿の配置やフォントの調整になるが、原稿自体の変更もあり、校了は印刷所への入稿ぎりぎりとなった。
 ホームページ(ウエブサイト)は、ネット社会ならではのツールだ。パソコンやスマホを利用する者にとっては、欠かせない情報の交換の場となる。東京ミニオペラカンパニーもHPのアドレスを持っている。公演チラシにもこのアドレスが掲載されているので動画や静止画・関係者の情報なども発信できるし、アクセスしてくれる方はその情報画面を閲覧しコメント・問合せも寄せられる。ホームページは前回の公演vol.1『悲戀~ハムレットとオフィーリア(一幕)』(2016虎ノ門JTアートホールアフィニス)の際に立ち上げたが、このサイト制作を担ったのは、高橋早苗さんである。私が以前舞台系講師を務めていた神奈川総合高校の出身で、情報・広告会社勤務の傍ら、こちらの要望をメモに取りそれを画面上にきちんと反映してくださっている。 


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新作オペラ『雪女の恋』制作過程3<楽譜と台本>

2018年08月27日 | オペラ
 作曲家とのやり取りによって脚本としての確定稿は上がったが、それを基にスコアの仕上げに掛かる過程で、音楽上また歌唱上の条件から書かれている詞の一字一句通りには行かなくなり、作曲家によって、助詞の変更や詞の一部削除や修正がなされる。それがある程度進んだ段階で「譜面と詞との摺り合わせ」が必要となり、それを経て完成台本と楽譜が確定されるのだ。

 7月11日「台本と楽譜の摺り合わせ会合」が持たれた。台本作者と作曲者の他に、この会合をリードするオペラ演出家およびソリスト代表が参加した。原詞と符合していない各小節の点検、意見交換による修正、そして確定。それを譜面の1ページずつに対して行うので、かなりの時間を要する。
 7月17日上演台本の完成。演出家とのやり取りによって、詞自体の字句のみでなく、表記・形式の統一までがなされた。確認のため、作曲家に「完成台本」を添付送信する。
 7月27日楽譜(ヴォーカルスコア)の完成。同時に、台本(45ページ両面A4横組み)および楽譜(212ページ両面縦組み)が簡易印刷に回される。

 8月4日馬込オフィスに台本・楽譜各70部が配送される。ソリスト・舞台スタッフにレターパックで順次発送する。

 台本・楽譜は、11月から始まる稽古までに、混声合唱メンバーや演奏家(+伴奏譜面)はじめ関係者にも渡されることになる。
 9月には公演チラシの印刷と納品、10月1日チケット発売日と予定はめじろ押しだが、その準備は着実に進められている。
 東京ミニオペラカンパニーvol.2『雪女の恋~ニ幕~』公演日は、来年の2月25日(月)開演18:30、上野・東京文化会館小ホールである。


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新作オペラ『雪女の恋』制作過程2<脚本②>

2018年04月30日 | オペラ
 私の演劇上演には音楽が欠かせない。もちろん演劇の中心は俳優の演技であるが、演劇作品全体に占める音楽の位置は重要でしかも大きな存在だ。近年上演した「音楽演劇」「全体演劇」という冠が付いた劇作品では、劇世界を開き登場人物を操る「神」の役割や、中世のフランス北東部と近世江戸との往還、その時間と空間を変転させる働きを担っている。しかし、それらは劇を動かす働きはしても、あくまでも俳優の演技の外側に位置する存在であった。
 東京ミニオペラカンパニーvol.2『雪女の恋~ニ幕~』は、ストレートプレイではなく、オペラ作品である。つまり、俳優から歌手へセリフから歌唱へと表現の主体が変わるとともに全編に音楽が流れることになる。演劇では外側にあった音楽が、歌劇では内側というよりど真ん中に存在することになる。
 オペラは、演劇ではなくクラシック音楽の範疇に分類されている。私は演劇人であり、また音楽界に身を置いたこともないので、クラシック音楽の構造や表現に対しては不案内だ。そのため、新作を手掛けるにあたっては、作曲家の全面的な協力を仰がねばならない。
 構想から2年、書き上げた第一稿は一応オペラ脚本の体裁にはなっている。付曲されることを前提としているため、散文ではなく韻文で、セリフではなく歌詞で…厳密な押韻ではなくとも…書かれている。また、「始め・中・終わり」のドラマも内蔵している。しかしそれは作曲家の眼から見ると、劇形式ではあっても音楽表現の構造にはなっていなかったようだ。
 私がドラマを構想するとき劇中劇の構造になることが多い。ギリシャ古典劇で生まれた「コロス(舞唱団)」が物語る世界が入れ子細工のようになって主要人物が登場したり、主人公の幻想が過去の現実を呼び寄せたりする。今回の『雪女の恋~ニ幕~』も、混声合唱団が昔話の世界を開き、雪の精と人間のドラマを進める役割を担っている。当初、この「合唱」に演劇の<群読>表現を用い、(劇中劇としての)アリアや重唱と対比させようとした。しかし、演劇の<語り>と音楽の歌唱表現とのつながりは音楽構成の流れにおいて問題があり、劇中劇の構造は生かしながらも最終的には「合唱」は<群読>ではなく<男声/女声/合唱>という声楽表現に落ち着くこととなった。
 また、演劇では必要最小限のセリフで進めるが、音楽では構成上同じ言葉=歌詞がリフレインされることが一般的だ。しかし同時に、ある曲が後になって繰り返されることは少ない。その場面で同じメロディが流れる必然性がある場合に限られる。雪女の姉妹が相手に念を押すような歌詞(前の場面にも出てきた)などは省かれることになった。昨年から今年にかけて細部の修正を合わせると、決定稿まで八稿を数えただろう。
 作曲家・鳥井俊之氏は、辛抱強く私の意図をくみ取って作曲に当たられ、なんとか上演可能なオペラ脚本(=リブレット)になるまで導いてくださった。


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