Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『Summer House After Wedding 』いよいよ初日

2016-01-28 | Weblog
いよいよ初日、と、書いてみたが、本当に幕が開くのだなあと思いつつ、なんだか信じられないような気もしている。
清水弥生の『Summer House After Wedding 』、初日である。
ぎりぎりまで台本の完成のために粘った清水弥生は、気が抜けたのか、その後、風邪でダウンしかけている。励ましのために、いつものように好物のラスクを買って与えているが、なかなか元気が戻らない。
清水は『ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド』を発表するのに足かけ五年かかったが、今回も構想段階から言えばゆうに二年はかかっている。
そして、私より台本が遅いのだから、大物である。遅い台本を待つ現場の気持ちを痛感させられる日々であった。
ともあれ、期待の新人。作品も、大作である。
登場人物は十二名。なんとか二時間以内におさめたいのだが。

「アジア共同プロジェクト」として立ちあげられた、取材やワークショップを含んださまざまな連続企画の、公演としては、第一弾である。まずは3年計画で、今回の作品は今年限りのものであってワーク・イン・プログレスではないのだが、これから再来年までに向けての展開も、並行して着々と準備されている。

さて。

『Summer House After Wedding 』、英語題名なのがなんだかわかりにくくて、どうかと思う、という意見も聞く。
『Summer House After Wedding 』。確かに、これだけだと、わかりにくい。
「Summer House」は、夏の、避暑用の別荘。これを強引に、「海の家」と解している。
「After Wedding」は、結婚後、ということである。
簡単に言えば、結婚前にも「海の家」に行っていたカップルが、結婚後に「海の家」に行ったら、という話である。
この劇の場合の「海の家」は、たいへん皮肉で面白い設定だが、夫婦生活で家庭内暴力やハラスメントといったトラブルが起き、夫から逃れ隠れて滞在する女性たちのための、「シェルター」の喩である。
この劇では、フィリピンから日本に出稼ぎに来て、介護の仕事をしていた女性の運命を辿っている。
私も、「アジア共同プロジェクト」の一調査員として、フィリピンから来たそういう女性たちの、かなり多くにインタビューしたし、彼女たちがフィリピンに帰ったその後を追って、現地へも行った。例えば、例えば、今は撤退した米軍基地スービックの近くにあるパンパンガという土地の思い出が、今回はかなり私の想像力を支えている。これは清水の企画であるから、私はこの素材で何か書くという気持ちはない。しかし、いろいろな刺激を受けた。この二十年のフィリピンとのつきあいの中でも、とくにしっかりと腰の入った部分もある。逆に演劇としてまとめなければならないというプレッシャーを強く感じたところもある。
まだまだ切磋琢磨している。それでも幕が開く。

私たちの格闘、そして実生活でも母親となった清水弥生戯曲世界の新展開を、ぜひぜひ見届けていただきたいと、思う。
『ブーツ~』までの三本の清水作品に出ている劇団メンバーも、初めて関わる人も、こんなのは初めて、と、戸惑いながらも、しっかりと受けて立っている。

フィリピンから参加しているマイレスとマージの演技に、ぜひ注目してほしい。
マイレスは、私の知己のフィリピン女優では、総合力に於いて、断トツにナンバー・ワンである。見ればわかる。彼女がときどき日本で演技をするようになって15年経つと思うが、今回がもっとも深度を深めたものになっていると信じる。
マージも素敵である。チャーミングだし、説得力がある。言葉にできない独特の空気感がある。彼女の魅力も劇場で見てほしいと切に思う。
加えて、彼女らはかなり多く、母国語でない言語で、演技をする。それを可能にしているものは、何か。俳優としての入り方の「常識」の部分が、しっかりしている。
この二人の演技を見る価値はじゅうぶんにあると思う。

植野葉子のすがすがしさも、この劇世界にぴったりだという直感が、当たったと思う。
中山マリ骨折のため一つの役を担って貰った円城寺あや。あまりやってもらったことのない種類の役だが、これが面白い。

劇団としては、3月に『カムアウト』公演も控えているが、『Summer House After Wedding 』と両方に出るのは、四人。女優に限っては、ただ一人の予定である。
公演ごとに住み分けのようなことができるのだとしたら、まるで大劇団であるが、実情は、ちょっと違う。私たちなりに、こだわりと、作戦が、あるのだ。

ともあれ、ご来場お待ちしています。

……………


写真は、劇中ではなく、ゲネプロ終了後。撮影は、姫田蘭さん。

下段左より
 杉山英之     Hideyuki Sugiyama
 宗像祥子     Syoko Munakata
 マイレス・カナピ Mailes Kanapi
中段左より
 植野葉子     Hako Ueno
 川中健次郎    Kenjiro Kawanaka
 松岡洋子     Yoko Matsuoka
 マージ・ロリコ  Marj Lorico
上段左より
 樋尾麻衣子    Maiko Hio
 円城寺あや    Aya Enjyoji
 田中結佳     Yuka Tanaka
車椅子が
 中山マリ     Mari Nakayama
その隣が
 武山尚史     Naofumi Takeyama


以下、『Summer House After Wedding 』公演、最新情報。
http://rinkogun.com/SummerHouseAfterWedding.html
…………………………………………

アジア共同プロジェクト

Summer House After Wedding

清水弥生=作
坂手洋二=演出
珍田真弓=翻訳

ある日、彼女は家を出た、子どもを連れて。
支えるのは誰か、支えられるのは誰か―
超高齢化社会、海外からの労働力に頼らざるを得ない日本。
移住労働に従事するフィリピン人女性への取材を元に
燐光群の新進作家・清水弥生が書き下ろす、
時代の芯を突く渾身の一作!

2016年1月28日(木)~31日(日)  森下スタジオ Cスタジオ

1月28日(木)19:00
29日(金)14:00/19:00
30日(土)14:00/19:00
31日(日) 13:00/17:00


受付開始○開演の40分前 開場○開演の20分前

★1月29日(金)19時の回にアフタートーク開催!
終演後、作者・清水弥生と演出の坂手洋二、今回出演のマイレス・カナピ、マージ・ロリコとトークを行います。(通訳・渡辺真帆)
本公演の前売券をお持ちの方、ご予約の方はご入場いたただけます。どうぞお楽しみに。

会場 森下スタジオ Cスタジオ
〒135-0004 江東区森下 3-5-6
TEL 03-5624-5952 (Cスタジオ直通:開催当日のみ)
地下鉄都営新宿線、都営大江戸線「森下駅」A6 出口 徒歩5分
東京メトロ半蔵門線、都営大江戸線「清澄白河駅」A2 出口
徒歩10分


マイレス・カナピ Mailes Kanapi
マージ・ロリコ  Marj Lorico
植野葉子     Hako Ueno
中山マリ     Mari Nakayama
川中健次郎    Kenjiro Kawanaka
松岡洋子     Yoko Matsuoka
樋尾麻衣子    Maiko Hio
杉山英之     Hideyuki Sugiyama
武山尚史     Naofumi Takeyama
田中結佳     Yuka Tanaka
宗像祥子     Syoko Munakata

円城寺あや Aya Enjyoji


照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○三津久
美術○じょん万次郎
衣裳○ぴんくぱんだー・卯月
演出助手○村野玲子
通訳○鈴木なお・渡辺真帆
音響操作○川崎理沙
字幕操作○桐畑理佳
舞台協力○森下紀彦
衣裳協力○小林巨和
文芸助手○久保志乃ぶ
イラスト○沢野ひとし
宣伝意匠○高崎勝也
制作○鈴木菜子 近藤順子
協力○国際交流基金マニラ日本文化センター
CompanyStaff○鴨川てんし 猪熊恒和 大西孝洋
古元道広 秋定史枝 宇原智茂 根兵さやか 長谷川千紗
鈴木陽介 福田陽子 西川大輔 宮島千栄 橋本浩明
内海常葉 秋葉ヨリエ 齋藤宏晃

■アジア共同プロジェクト
日本社会を他のアジアの人たちの視点からとらえ、また日本人の視点から他のアジアの社会をとらえることで、共生する「未来」の可能性を描いていけるような演劇を表現していくことを目的として、2015年より清水弥生が発起人として立ち上げた国際文化交流プロジェクト。2016年度以降、フィリピン、タイの俳優たちとの共同制作が予定されている。

■清水弥生
劇作家。早稲田大学在学中に、モリエールに関する卒論で、同大の2003年度小野梓記念学術賞受賞。2004年より燐光群に所属、多くの作品の演出助手として参加。2008年5月、燐光群アトリエの会公演『シンクロナイズド・ウォーキング』で 劇作家デビュー。緻密な取材からうまれる、リアルで奥深い人物造形とユニークな設定から、人々の生活における悲哀、感情の機微を、ユーモアを交えて軽快に描いていく。 2012年にはアジアン・カルチュラル・カウンシルの助成により、二ヶ月間ニューヨー ク・シアター・ワークショップでの研修を受ける。近作「ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド」は第20回劇作家協会新人戯曲賞の最終候補作となり、新進劇作家として注目を集める。


【日時指定自由席・整理番号付】 前売開始○1月10日(日)
一般前売 3,000円 ペア前売 5,400円 当日 3,300円
大学・専門学校生 2,500円 高校生以下 1,500円
※学生券は前日までにご予約の上、当日受付にて要学生証提示。
※ご予約順に整理番号をお取りし、開場時に番号順にご入場頂きます。
 開場時間を過ぎますと整理番号は無効となります。

★燐光群オンラインチケット(一般・ペア前売のみ) 
http://rinkogun.com 
24時間いつでもホームページ上でご予約頂き、セブンイレブンでチケットをお受け取り頂けます。
お支払いは現金(セブンイレブン)、またはクレジットカードとなります(手数料はお客様負担)。
※会員登録(無料)が必要です。

★ご予約・お問合せ○燐光群/(有)グッドフェローズ
03-3426-6294 
①<お名前/電話番号/希望日時/チケットの種類と枚数>をお伝え下さい。
 こちらからのお返事を以てご予約とさせて頂きます。
②当日、受付にて代金と引換でチケットをお渡しします。
※開場時間を過ぎますと、あらかじめお取りした整理番号は無効となりますので、
 お早めにご来場ください。
※開演直前・直後は(一時的に)ご入場を制限させて頂く場合がございます。
※未就学児のご入場はご遠慮下さい。

助成 芸術文化振興基金
   国際交流基金アジアセンター
   セゾン文化財団
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