半月のうちに世相は変わった。始まるまで「ラグビーって何? それ誰が見るの?」という顔してた人たちが
あれよあれよとファンになり、日本チームが勝つと感動のあまり感謝の気持ちまで口にする豹変ぶり。一国の
総理まで、被災地そっちのけで観戦にはしゃぐ。そんなラグビーのワールドカップも日本が負けるとまた急に
注目されなくなり、これから準決勝も決勝もあるのに終わったことになっている。半月のうちに世相が2度も
急転回するとは、熱しやすく冷めやすいにもほどがある。そんなふうに見つめていたら思い出したことがある。
2007年だから12年前のこと、紳士のスポーツと呼ばれるラグビーの世界で選りすぐりの紳士だけが務められる
フルタイムラグビーレフリーなる公式審判員にアジア人として初めて日本から平林泰三という人が選ばれた。
当時ラグビーといえば国内では集団婦女暴行のイメージしかなかった時代だから、これは画期的な出来事だと
思って一流スポーツ選手にインタビューするページで例外的に平林レフリーを取材した。
ラグビーのことは何もわからないが、ライターさんが元ラグビー部だというので大船に乗ったつもりで聖地、
花園へ。なんかスクールウォーズで見たことある。その程度の認識で、しかしアジア人で初のレフリーという
記事のポイントだけは押さえるべしと意気込んで出かけた。半月で世相が変わるぐらいだから12年もあれば
激変する。いまや日本人だとかアジア人だとか表面上は問題にならないのに、あのころはニュースバリューが
そこにあったもんだから、取材中にライターさんが平林レフリーに
「ハーフですよね」
と確認したとき、ん? ハーフ? 日本人がアジア人として初めてレフリーになったのに、どういうハーフ?
ヨーロッパ人とのハーフだと話が変わってくるぞ? と頭の中ぐるぐるしてるのが顔にすっかり出たという。
「そうです」
冷静に答えるレフリーの紳士的な表情を伺うとハーフに見えないこともない。一流スポーツ選手のページで、
例外的にレフリーにインタビューした意図は「紳士のスポーツと日本人」(当時の感覚)だから、ハーフって
あっさり認めてどうするの。
にわかでないラグビーファンなら、とっくにおわかりのことだろう……フルバック、ウイング、センターとか
スタンドオフ、スクラムハーフ……そういったポジションがいろいろあることを。平林レフリーの選手時代の
ポジションを確認するために一応、
「ハーフですよね」
と尋ねたのを聞いて、脳内でスクラムハーフと結びつかずに「何人と日本人の?」と聞きたいけど聞けなくて
花園で地蔵になった自分。あのとき余計なことを聞かなくて本当によかった! といった話をしても、わかる
人がちょっと増えてきたようだから、半月のうちに世相は変わった。
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