サ カ タ の ブ ロ グ 

やぁ、みんな。サカタだよ。

インドの山奥で

2017年10月04日 | サカタだよ
個人と個人の垣根をはらって声にならない他人の心の声を聞きとる能力と、本当に困った場合に時を止める
能力に磨きをかけるため、インドの山奥で修行したのは2か月ほど前のことです。会社の夏休みを消化して、
自力ではなく飛行機に乗って飛んだのです。エアインディアです。



せっかく修行しようというのにインドに入国するにはビザが必要らしいので大使館にビザを取りに行くことから
始めないといけません。やれやれ、自力ではなく自動車に乗って行きました。タクシーです。

修行のためであることを隠して、観光ビザを取ろうとしたら、怪しいと思われたのでしょうか? 勤め先を確認
されました。仕方なく、マガジンハウスと答えました。すると、ジャーナリストに観光ビザは与えられないので、
ジャーナリストビザ(制約が多い)を申請せよといわれました。いや、マガジンハウスにジャーナリズムはない
から安心してほしい。そう話しても信じてもらえません。



20年前ミャンマーの山奥で修行したときも、まずビザをもらいに大使館に出向くことから始める必要があり、
勤め先を吐かされてジャーナリストにビザは与えられないと宣告されました。当時はアンアン編集部にいた
ので、秋の服とか春の服とか、黒い服の特集を大使館で見せて、この通り私はファッションエディターだから
政治にも軍事にも関心は一切ない。そう誓約書を書いて、ビザをもらったことがあります。

インド大使館では話が違って、ジャーナリストならジャーナリストビザを取れというので、ジャーナリスト魂は
これっぽっちもないのに自分はジャーナリストだと嘘をついてビザをもらいました。

「貴様ジャーナリストではないな?」
エアインディアのカウンターでパスポートをチェックされるとき、係の人が顔をしかめたので嘘がバレたのか
と思ったら、見たことがないビザだから少し待ってほしいといわれ、係の人が上司を呼んできて
「あなたはジャーナリストなのか?}
と尋ねます。本当は違うので内心ものすごく恥ずかしかったんですけど、それはもう臆面もなく
「はい、わたしはジャーナリストです」
と真っ赤な嘘をついて飛行機でデリーに飛び立ちました。



インドの入国審査では、担当者がニコニコしながらパスポートの内容をえらく時間をかけて検討し、
「他の日本人とビザのタイプが違う」
「あなたの旅行の目的は何なのだ?」
「あなたはジャーナリストなのか?」
「本当に観光なのか?」

いろいろ質問してくるので、カタコトの英語で答えるフリして担当者の心に、直接、こう話しかけました。
聞こえますか? 聞こえますか? わたしはジャーナリストです。正真正銘のジャーナリストといっても
過言ではありませんが、今回は休暇で来ています。旅行の目的は観光であり、パキスタンや中国との
政治的な軋轢や軍事のバランスに関心は一切ありません。本当に観光なので、ここを通してください。

……担当者の心に直接メッセージが届いて、入国することができました。



さっそくインドとパキスタンの国境のほうにあるチベット仏教の寺院をめぐるべく、ヒマラヤを越えます。
ラダックというチベット文化圏のレー空港は、軍の施設を午前中だけ民間機の離着陸に利用している
ところなので、ジャーナリストのチェックが厳しいのですが、心に直接、話しかけて事なきを得ました。
これも修行のうちです。



そのころカシミールのそう遠くないところでテロがあり、インドと中国の国境にある高度4250mの湖へ
世界第2位の標高の峠(5360m)を越えて向かうことが、ジャーナリストには難しくなりました。本当に
困ったので、検問で時間を止めて、そのあいだに通過しました。書類はどうあれジャーナリストではない
わけですから何も問題ありません。どちらかといえば修行のうちです。



帰国するときも、出国の手続きの際に担当者がパスポートをあちこちめくって
「あなたはジャーナリストなのか?」
「公式な訪問ではないのか?」
「旅行の目的は何なのだ?」

いろいろ質問してくるので、カタコトの英語で答えるフリをして担当者の心に、直接、こう話しかけました。
聞こえますか? 聞こえますか? わたしは……ジャーナリストではありません。アルファブロガーです。
というのも嘘で、ブロガーでさえないのです。ただの、サカタだよ。

担当者の心に直接メッセージが届いたのか、出国審査をクリアして手荷物チェックの列に並んでいたら、
さっきの担当者がまたやって来て、もうちょっと聞きたいことがあるから列を離れて壁ぎわに立って待てと
いいます。ジャーナリストになるんじゃなかったと後悔しましたが、ジャーナリストではありませんでした。
娯楽出版社の編集者にすぎないのです。本当に困ったので、時を止めて、自力で日本へ飛びました。




次回は「網棚のお荷物」というおはなしです。
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