まりあ戦記・053
ウズメにそっくり。
でも、比較にならないほど大きい!
わたしが乗っているウズメが三階建てくらいだとすると、目の前に横たわっているソックリは十階建てぐらいはある。
「なんで、こんなに大きいの?」
素朴な質問をすると、ナユタがあとを続ける。
「って、ゆーか、なんでマンションの下に、こんなのがあるの?」
「職住近接というやつですか(^_^;)」
中原さんが締めくくる。さすがは現役っていうか、本物少尉。
「今度のウズメは三人で操作するんです(^▽^)/」
徳川曹長が、新型ワンボックスカーを納車しにきた自動車販売会社の営業のようなことを言う。
床下からの振動と騒音がひどいので「いったいなんなのよ!?」とみなみ大尉がヒスを起こし、金剛少佐が「しかたない、飯の前に見ておくか」と、みんなをクローゼットに入るように指示して「あ、エレベーターになってるんだ!」と感動したのは、ほんのつかの間で、十秒後には、マンション地下のハンガー(格納庫)に来ているってわけ。
横たわったウズメは、ほとんど完成しているところもあれば、手首や膝とかは欠損というか、まだ取り付けられていなくて、大きいだけに、進捗状況が部分によってひどく差があるように思える。
「作りながら更新してる様子だな」
金剛少佐がニヤニヤ、このオッサンのニヤニヤは、みなみ大尉ほどじゃないけど、ちょっとムカつく。
「搭乗するのは背中からです。胸部にコクピットがあります」
「「「う~ん」」」
三人そろって唸る。
十階建ての大きさとは言え、それは全長のことで、コクピットの胸部は外径で三メートルあまり。装甲やコクピット内のコンソールや機器の容積を考えると、シート部分は一メートルちょっと。三人が乗り組むには、ちょっと狭くはないかなあ……。
「大丈夫ですよ、搭乗すると睡眠状態になって、三人の思念を融合させてオペレートすることになります。手足を動かしての操作は、どうしてもタイムロスが出るし、体を動かせば疲労するのも早いですからね。そういうところを考えた、次世代機であるわけです」
エンジニアらしく、徳川曹長はとくとくと解説する。
少佐とみなみ大尉は、ウズメ以外にも各部のチェックをしたいと言うので、わたしたちは姉妹(?)三人で部屋に戻ることにする。
「こっちから行きましょ」
「中原さん?」
「ここに来るには、他のルートもあるみたい。確認しながら行きましょ。それから、わたしのことは姉さんとか呼んでください、そういう設定ですから」
さすがは現役軍人、わりきりが早い。
別ルートでマンションの一階に出て廊下を歩いて本来のエレベーターに向かう。
途中、数人の住人に出くわす。みんな、旧知の間柄みたいに「こんにちは」とか「あら、金剛さんちのお嬢さん」とか挨拶してくれる。
ちょっと不思議。
「あれだけの騒音があるのに、みなさん普通なんだ……」
「住人は全員が改アクト地雷のロボットね。いざという時には我々をガードするセキュリティーになんだと思う」
え、えええ……
ちょっと、言葉が出てこなかった。