🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・
13『古いブレザー?』
「どっこいしょ」
爺さんみたいな掛け声をあげてしまった。思いのほか大きな声だったのでクラスのみんなが笑っている。
三好紀香など――黙れデブ!――のオーラを背中で発している。持久走で救けられたことが屈辱になっているのだから仕方がない。
でも、授業の終わりの起立礼で「どっこいしょ」が出たぐらいで、クラス中から蔑んだような注目を浴びるのは……。
イヤダ!!
「百戸、バレてないと思ってるだろ?」
八瀬が顔を寄せてくる。
「なにがだよ?」
「授業中、こっそりとジャガリコ食ってるだろ」
「食ってないよ!」
これまた声が大きく、移動の遅れたクラスメートに笑われる。
「机の中を見てみろ」
「食って……ああ!」
昼のおやつに買っておいたジャガリコの蓋が開いていて、八割がた中身が減っていた。
「ひょっとして、無意識に食ってたのか?」
「…………」
「しっかりしろよ、戦友」
背中を叩かれて、体育の授業のため移動する。
階段の踊り場まで来ると、桜子に出くわす。
「桃斗、何かした?」
「え、どうして?」
「クラスの子たちが、移動しながら『百戸くんが……』とか『百戸ったら……』とか言ってたから」
「あ~、今は話したくない」
「ん……?」
桜子を背にして階段を下りる。
「うっそー! やだー!」
桜子のビックリ声がして、八瀬がニヤニヤと駆け下りてくる。
「桜子に言うことないだろが!」
「ほっときゃ、あちこち聞きまわって、ややこしくなる」
さもありなんなので、大人しくピロティーを通って更衣室に向かう。
前の時間が体育だったんだろう、一年の野呂たちが更衣室から出てきて一年生の教室が並んでいる南館に向かっている。
「ん……?」
きつめだった野呂のブレザーが、余裕でフィットしている。
沙紀が後ろから野呂の背中を叩き、振り向いたはずみでブレザーの裏が見えた。
「え……?」
野呂のブレザーの裏には『百戸』の刺繍が……あれは、廃品回収に出した、オレの古いブレザー?