大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・アーケード・24・花子編《ちょっぴり変》

2018-03-24 13:23:41 | 小説

・24・花子編
《ちょっぴり変》



 花子というのは、ちょっぴり変な名前よね。

 太郎とペアになっていて、書類なんかの書式に山田太郎・山田花子などと並んでいたりする。
 他に平成花子とか昭和花子、市役所じゃ相賀花子というのが書類の書き方見本の名前になっている。犬のポチ、猫のタマなどと同じで平凡の代表みたいなもの。

 だけど、じっさいに花子という名前はめったにいない。

 わたしが花子という名前に「あれ?」っと思ったのは幼稚園の時。
 入園式のときに園長先生が「藤谷花子さん」と呼ぶと、参列していた人たちが一瞬注目した。「ん?」「え?」「そうなんだ?」てな感じ。でも一瞬のことで、園長先生は何事も無かったように次の園児の名前に移っていった。わたしの次の次の子が歩小鈴(ぽこりん)というインパクトのある名前だったので、花子はすぐに参列者の記憶から消えてしまった。

 まあ、その程度に珍しい名前。

 高校に入って間もなく、上級生の男子が用もないのに教室に来て「花子ってだれ?」と小さな声で廊下側の子に聞いたことがあった。
「あ……あの子です」
 廊下側の子は、少しビビりながら答えて、3人の上級生の視線がわたしに向いた。
「お、けっこう……じゃん」
 と言って帰って行った。
「あの人たち、なんて言ってたの?」
 廊下側の子に聞いた。
「あ……けっこう美人なんだって」
 どうやら花子という伝説的に平凡な名前はインパクトがあって「どんな子だろう?」と興味を持たせるようね。
「わたしって美人なんだろうか?」
 そう呟いてガラスに映る自分の顔を見て、すこしだけつまらなさそうにため息をついておく。で、振り返って廊下側の子と目を合わせ「アハハハ」と照れたように笑っておいた。廊下側の子と周囲の子たちも「「「「アハハハ」」」」と笑う。

 わたしは自分が美人であるという自覚がある。可愛いではなく美人。とくにパッと見にね。

 だから「美人だあ」というような反応をされたら「アハハハ」とか「エヘヘヘ」といリアクションをしておく。このリアクションはほとんど天然なんだけど、少し計算している。美人だと思われたとたんに、相手と壁が出来てしまう。そんな壁がやだから、このリアクション、いまでは条件反射のようになっている。

 この話をお父さんにしたら嬉しそうな顔になった。

「生まれた時にね『この子は美人になる』って、お祖父さんが言うんだ。で、名前は花子がいいって、満場一致で決まった」
「そうなんだ」と言っておいたが、なんの満場一致なのかは聞かなかった。
 なにごとも少しボンヤリというのがわたしのコンセプト。

 花子という名前は、ほんのりつや消しのコーティングなんだろうと思う。良い名前を付けてもらって感謝です。

 ちなみに廊下側の子は野村颯太と言って、お父さんの転勤で相賀に来た男子。わたしの程良い友達になって、今度の生徒会選挙では副会長に当選しました。

 

※ アーケード(白虎通り商店街の幼なじみたち) アーケードの西側からの順 こざねを除いて同い年

 岩見   甲(こうちゃん)    鎧屋の息子 甲冑師岩見甲太郎の息子

 岩見 こざね(こざねちゃん)   鎧屋の娘 甲の妹

 沓脱  文香(ふーちゃん)    近江屋履物店の娘

 室井 遼太郎(りょうちゃん)   室井精肉店の息子

 百地  芽衣(めいちゃん)    喫茶ロンドンの孫娘

 上野 みなみ(みーちゃん)    上野家具店の娘

 咲花 あやめ(あーちゃん)    フラワーショップ花の娘

 藤谷  花子(はなちゃん)    西慶寺の娘


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