大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・フケモンGO・05・ジャイアンツのキャップを被って

2018-04-10 06:39:33 | 小説5

フケモンGO 05 
 ジャイアンツのキャップを被って



 スマホの中のケージが三つになった。

 女生徒の那比気芳子、ライブのチケット、宇佐軌組の誠女親分。
 ケージをクリックするとアイコンに変わる。ダブルクリックすると3Dの画像になって、指を使って回転させたり拡大することができる。
 チケットは回転させても拡大しても面白くないが、人間は少し面白い。
 芳子はクラシックなセーラー服。セーラー服と言うのは体の線が分からない造りになっているけど、彼女は姿勢がいいので胸のところがツンとしている。見えている膝下の細さと相まって、かなりスタイルが良いことが分かる。で、顔は癪に障るほど可愛いかったりする。
 誠女親分も美人でスタイルもいいんだけど、たくましい。よく見ると、なんだかオリンピック選手みたいだ。
 そういうことが分かるのも、クルクル回転させたり拡大したりできるからだろう。

 どういう仕掛けか、芳子だけが勝手に現れて、要らないことを言う。

「いつまで寝てんの!」「メールだよ」「食パンキレてるから買いにいこう」「お母さん遅くなるって」「あ、午後から雨だよ」「今日はプラゴミの日だよ」「鼻毛伸びてるわよ」「洗濯物とりいれよう」など色々。
 二日ほどは面白かったけど、三日目には煩わしくなってきた。だってお母さんよりも口うるさいんだから!

「暑いからヤダーーー!」

 朝から三回も「外に出よう!」と言うので、四回目にはキレてしまった。
 夏休みは冷房の効いた家の中に居て、ウダウダやっているところに値打ちがある。夏期講習だって一日も休まずに通ったんだから、あたし的には大手を振ってウダウダしていていいと思っている。
『でももう丸々四日外に出てないんだよ、腐れ女子高生になっちゃうよ』
「腐ってもいい、昼まで寝るんだからあ」
 頭から夏布団をひっかぶる。
「ん……なんか臭う?」
『スマホ見てごらん』
「ん……?」
 枕もとののスマホを手繰り寄せる。
「……なにこれ?」
 眠い目をこすると、画面は一面のお餅の表面みたいだ。真ん中に小さなくぼみがある。
『寝返りうってごらん』
「ん、こう?」
 素直にうつ伏せになる……すると画面は同じお餅の表面なんだけど、小さなくぼみは無くなっていて、下の方に行くに従って少し隆起しているような気がする。
「なんだこりゃあ……」
 無意識にスクロールすると隆起の下が谷間になって来た。

「これって……ウッ……やだ、お尻じゃないの!」

『亜美のお尻だよ』
「ゲ、なによ!?」
 身体をよじると、画面の体も同じようによじれた。
『三回クリックしてみ』
「ン……」
 こういうところは従順なので、言われた通り三回クリックする。
「こ、これは……(-_-;)」
『四日目の……便秘』

 芳子は便秘体操を教えてくれて、なんとかスッキリすると、ジャイアンツのキャップを被って外に出た。

 いつもの習慣で公園を斜めに通り駅前に。それだけで汗みずくになるので、用事もないのに、やってきた準急に乗る。
 十分も乗ると汗が引いていき、ニ十分を過ぎると寒くなってきて降りた。
「この駅は初めてだなあ……」
 人間の体と言うのは勝手なもので、冷房で冷えた体に暑さが心地い。

 駅前のロータリーまで出るとスマホが振動した。

「あ、なんか居る!」
 画面のナビに!マークが震えている。
 ナビに従って三つ角を曲がると居た。

 パラシュートを引きずった外人のパイロットが……。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする