大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・02「堕天使イスカ」

2017-12-29 16:46:46 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・02

「堕天使イスカ」

 

 

 四メートルも落ちると佐伯さんはコンクリートに激突し、真下にした頭はザクロのように破裂してしまう!

 

 その無残さを自覚しているのか佐伯さんの両眼は閉じている。ひょっとしたら気絶しているのかもしれない。

 髪は後ろにたなびいて形のいいオデコが露出している。

 オデコが露出すると、ちょっと子どもっぽく、整った顔と相まって、いつもの美少女顔よりは可愛いというイメージになる。

 眉間に力が入って眉が緩い逆さへの字になって苦悶の表情、まつ毛の端には光るものが……たぶん泣いている。

 そんな佐伯さんを美しいと思ってしまう。

 佐伯さんの顔をこんなにマジマジと見たことは無い。

 

 こんなに観察ができるのは、佐伯さんが空中で静止しているからだ。

 佐伯さんだけじゃない、見える限りの世界が静止している。動いているのは、ゆっくりと佐伯さんに手を伸ばしながら近づいている西田さん……そして、それを見ているオレだけだ。

 なぜ、オレには見えている? というよりは見えていることがヤバい気がして静止しているふりをする。

 距離はほんの五メートルほどだけど、二人の死角になっているので気づかれることはないだろう。

 

 コーラスの指揮をするように西田さんの手が動くと、佐伯さんはゆっくり降りてきて、背の高さほどになるとクルリンと回って静かに足から着地した。

「わ、わたし……」

「不本意かもしれないけど、目の前で死なれるのヤダから助けたの……」

「……西田さんが?」

「われは堕天使イスカ。この時空の堕天使たちの束ねにして暗黒魔王サタンの娘。故あって、この地上にあれども、そは時が満つるまで。この学校には結界が張ってある。結界の内を血で穢されては綻びとなる。そのために助けたの、もう馬鹿な真似はしないで……だめか、文化祭の芝居に行き詰まっているのね。下らないことだけど、このために人の心が歪むのは見過ごせない……心の歪は結界の障りになる……」

 サタンの娘? それならビーデルじゃないか。オタクのオレはドラゴンボールのビーデルを思い出した。

 いや、あれはサタンではなくミスターサタン……だったよな。

 

「わたしが特別に教示してやろう。よいか、いや、いい……」

 

 そう言うと、西田さんは体を七三に構え、右手を……なんと言うか遠くを見る時に手で庇を作るように、いや、それよりやや高く右手を構え、左手を胸の高さにして右手の肘あたりに添える。そうそう『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の黒猫というか、『ラブライブ!サンシャイン!!』のヨハネこと津島善子の邪気眼決めポーズをとる。

「われはクィーンオブナイトメア、みだりに我が名を口にするものは、堕天使の電撃に触れて、ただの一つしかない命を落とすであろう。さもなくば、我が名をあがめ恐怖とともに讃えよ、さすれば雨後の蚊柱のごときそなたたちにも堕天使の天啓が下りるやもしれぬぞ、さあ、諸手を挙げ天の奥つ城にこそあれかしと我が名を讃えるのだ!」

「す、すごい! 本当の堕天使みたい!」

 佐伯さんが感極まって拍手する。ついさっきまで思い詰めて飛び降り自殺をやった人間とは思えない。ま、たしかに西田さんの決めポーズと決め台詞は真に迫っている。

「みたいじゃなくて本物の堕天使よ。さ、やってみて」

「は、はい……」

 見本を示したのが本物の堕天使なので、佐伯さんは三回目にはすっかりマスターしてしまった。

 オレは見とれてしまったが、この状況はおかしい、説明がつかない、有りえない!

 だが、俺が催眠術にかかっていたり、知らぬ間に超高性能なVR体験をしているのでなければ、堕天使系ファンタジーが実際に起ころうとしているんだ。ますます目が離せないぞ、これは。

「それでは時の流れを呼び戻すことにするは、時が戻れば、あなたが自殺しかけたことは無かったことになる。あなたも、いま静止している者たちも、その記憶は忘れてしまう。いま会得した決めポーズと台詞は残るから……では、わたしが校門を出たところで全てが戻る。それじゃ」

「あ、ありがとう西田さん!」

 

 西田さんが振り返らないまま校門を出ると、バグが回復したように喧騒が戻ってきて、再び学校は動き始めた。

「あ、えと……そうだ、先生と門田くんに見てもらわなきゃ!」

 西田さんは小気味よく回れ右をして校舎の中に戻っていった。

 

 で、俺の記憶は消えていないんだけど……いいのかよ!?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・7

2017-12-29 06:49:13 | 小説・2

小説・大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・7 



☆部内で意見が対立!

 たった二人の演劇部で、どないしたら対立すんねん!?

 そういう声が聞こえてきそうです。実際は見解の相異という程度のことなんですけど、キャプションはショッキングな方が面白いのです。

 何を対立しているかというと、演目です。

 わたしは、個人的にも真田山の部長としても『にんじん』を絶対やりたいんですが、一年の部員の九鬼あやめが、ちゃうことを言い出しました。
 前も書きましたが、『にんじん』の最大のネックは、ルピック氏役の男子がおらんことです。あの役は寡黙な中年のオッサンの役で、寡黙であるだけやのうて、時には厳しさと、ルピック氏自身が持て余すような愛情が表現できんとあきません。並の高校生がほんの一カ月ほどやってできるシロモンとちがいます。

 じつは、あたしにはアテがありました。軽音の幽霊部員で、シブイ男子がおったんです。エグザイルの曲なんか歌わしたら、ちょっと高校生離れした表現ができる子です。
 この子が、幽霊辞めて生き返ったのが誤算。ことしのスニーカーエイジの隠し球やったみたいです。

 九鬼あやめが『すみれの花さくころ』がやりたいと言うてきました。単に思いつきではなくて、あやめなりに、青雲書房の原作と、ネットに出てる改訂版も読んで、You tubeで上演作品も観ての意見です。
 憎たらしいのは、名古屋音大さんがやらはった曲を、もうマスターしてることと、ちょい役で出てくる由香いう役を演れる子まで見つけてるいうことです。

 発言や提案には、具体的な裏付けがないとアカンいうのを見事にクリアーしとります。

 ただ、問題点があります。本選の審査員がX氏やいうことです。三年前の本選で、この作品をやった学校を、以下のような理由で落とした人です。

「作品に血が通っていない。行動原理、思考回路が高校生ではない」

 上演作品を超えて、戯曲そのものを否定してかかった人です。どんなにうまいことやっても、大阪は既成作品いうだけでハードルが高い。そこへもってきて、X氏がボロボロに言うた本やって、どないすんねん!?
 最初のブログで「予選落ちの真田山」て書きましたけど、そこに山があるから登るごとく、そこに本選があるんやから目指したくなるのは演劇部員、それも部長とあればアッタリマエです。
 はなから落とされると分かってる本はなあ……。

☆今、こんな歌やってます
 ディズニーの『アナと雪の女王』の『Let it go!』 松たか子さんが日本語でやってますけど、うちらは英語でやってます。役になりきって、アクション交えて。
 これを臆面もなく、グラウンドでやります。いっぱい運動部が練習してる中、雰囲気はアウェーですけど、これも練習。裏話ですけど、あやめが入部をそそのかしたんは、この『Let it go!』を横で聞いてた子で、このディズニーアニメが大好きな子です。一年ながら九鬼あやめは、なかなかしたたたかな子です。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする