ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

迫SA氏の第2室

2009年06月16日 | 訪問記
迫SA氏の第2室の写真も、これからそこで鳴る音楽の悦楽を、堅く約束しているかのような奥床しいたたずまいてあるが、はたして訪問した者がどの部屋に通されるか、一定の法則があるだろうか。
4号線を仙台に向かって、将監トンネルに入るための車線を左に取ると、一本のかこわれた道は空中になだらかなアーチをつくってほの暗いトンネルに吸いこまれて行くが、SA氏のこの部屋に入るには、ただコースを取っただけでは、難しい。
あるお宅のオーディオ・ルーム隣室で御茶をもてなされるも、ついに装置と対面できなかった、他流試合お断りの家もあったような伝聞は、いまも楽しいけれど、これは避けたいものである。
鳴っていたアルテック605の美音を思い出していると、めずらしく沼S氏が登場された。
修理のおわって一部回路変更されたROYCEの『845アンプ』の偵察に、嗅覚鋭く馳せ参じたのである。
是枝アンプや、東独の励磁スピーカーなど多彩な遍歴の氏は、抜群の聴取力と知識で一刀両断迫ってくるので目まいをおぼえることもあるが、その最初の一言はこんな風だ。
「この音は、さきほど電源をいれたばかり...とか?」
当方は、パイプを指に遊んで聞こえないふりをしていたが、過日テレビ放映されたジャズ番組での感銘などを聞くあいだに、『Farmers Market Barbecue』も音のかたちをみせてきた。
そこで沼S氏がご持参の、ケルテス・デッカ盤『新世界』を聴いてみた。
目玉の飛び出るような大枚を投じて入手の貴重盤のいきさつもおもしろいが、ティンパニーからトライアングルから、さまざまの音の総和が分離と集合をくりかえし、壁面いっぱいにしばらく広がって終章を迎えると、「うむ、このレコードからこのような音は、いまだ聴いたことがありません」とあっさり態度を変え、SA氏のあみだした管球回路の選択を分析するように、遠眼を凝らしてアンプを見ている姿があった。
前段の300Bはともかく、整流管は何を使っているのでしょうとの質問に、はじめて調べると「あっ、やっぱりムラードのGZ-37」と痛痒な表情をされ、これは、なかなか手に入らない名球なんですよ、とこれまでの音の全てが、この球にあったかのような説得ある解説が述べられる。
そういえば、費用はいらないと申されて...まさかそういうわけにも、と沼S氏に告げると、あっけにとられたような顔である。
845アンプを改造のSA氏は、工作について蘊蓄の一言もないばかりか、ROYCEで鳴り出した初めての音出しに、当方の反応を待って横顔をただ心配そうに窺っていたあの日のSA氏のことが懐かしく思い出された。
沼S氏は「わたしの部屋の装置も、必要なときには足の裏にびりびりっときますよ」と笑って符丁を申されて、刀を納め戻っていったが、いつかお訪ねして励磁のフルレンジが8個並んでいるという未踏の装置を聴きたいものである。







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