ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
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シャイー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス来日公演(10/27) @サントリーホール

2009-10-28 | コンサートの感想
世界最古のオーケストラであるライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演の初日を聴いてきた。
指揮はカペルマイスターであるリッカルド・シャイー。
このコンサートはもともと行く予定ではなかったのだが、先週末に急に聴きたくなってネットで探していたところ、幸いにも一番安い席をゲットすることができた。
値段は安いけど、私の大好きなP席でかつ3列目。
これは、まさに願ったり叶ったりだ。
こんなふうに偶然聴くことができたコンサートは、想い出深いものになることが多い。
今回も果たしてそうだった。

<日時>2009年10月27日(火)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
■モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
(アンコール)
■クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
■マーラー:交響曲第1番 ニ長調「巨人」
<演奏>
■アラベラ・美歩・シュタインバッハー (ヴァイオリン独奏)
■リッカルド・シャイー(指揮)
■ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

オケは対抗配置。シャイーはこのオケではこの形で演奏することが多い。
マズアがムターとメンデルスゾーンのヴァイオリンのコンチェルトを演奏した映像をみると普通の配置だったので、やはりシャイーの強い意向なのだろう。
この日の前半のプログラムは、アラベラ・美歩・シュタインバッハーをソリストに迎えて、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番。
いやー、明るい!
実に明るく爽やかなモーツァルト。それも赤とかピンクの明るさではなく、輝くオレンジの明るさだ。
ロッシーニ風のモーツァルトといってもいいかもしれない。
シュタインバッハーは、もっとドラマティックな表現もできる人だが、この日は伸びやかな表情がとにかく印象的。
第2楽章あたりは、さながらオペラのアリアを聴いているようだった。
一方でシャイーとゲヴァントハウスの緻密で陰影に富んだ伴奏があったからこそ、彼女の「歌」が映えたことも見逃せない。
アンコールのクライスラーでは、卓越した技術とパワフルな表現力を活かし、モーツァルトとはまた違った面で聴衆を魅了してくれた。

後半は、マーラーの「巨人」。
素晴らしいマーラーだった。
ゲヴァントハウスのオーケストラが、こんなに色彩豊かで逞しい音楽を聴かせてくれるとは正直思わなかった。
一方で18世紀から脈々と流れる「伝統の味」も、しっかりオケの響きの芯の中に存在した。ただ、それが古色蒼然とした色に染まっていないだけ。
これは、やはりシャイーの存在、影響が大きいということなのだろうか。
この日シャイーはフレーズのひとつひとつを克明に描き、それらを大きな流れの中で見事に息づかせていた。
パーツパーツが次々と登場して演技をし、結局脈略のない音楽になってしまう恐れもある「巨人」だが、一本筋のとおった大きなドラマに仕上げたのは、やはりシャイーの力。
軽いだとか浅いだとかいう批評を耳にすることも多いが、どうしてどうしてシャイーは既に紛れもない巨匠だ。
マエストロ・シャイーのほんのちょっとした指示で音・サウンドがみるみる変化する様を目の当たりにした私は、そう考えるしかなかった。

エンディングのあとホール全体が大きな拍手とブラボーの声に包まれる中、一度舞台袖に引っ込んだシャイーが再びステージに登場して、オケの全員を満面の笑みで称える。
私はそのときのシャイーの表情が忘れられない。
言葉はなかったが、はっきり彼の心の声を聴いたようなきがする。
「みんな、やったな。最高の演奏だった。さあ、立ち上がって聴衆に挨拶しよう!」

日本公演はまだ始まったばかり。
これから聴かれる方は、大いに期待していいです。
シャイーとゲヴァントハウス管弦楽団のことについては、もう少し書きたいこともあるのだが、それはまた別の機会に。
コメント (2)
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