ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ケフェレックのバッハアルバム

2006-01-08 | CDの試聴記
最近暇を見つけては、オペラ等のレーザーディスクをDVDへせっせとダビングしています。
技術がどんどん発達していただくのはもちろん大歓迎なのですが、その間に集めた大切なソフトは一体どうしたらいいの?
レーザーディスクのプレーヤーは昨年修理をしたばかりなので、しばらくは大丈夫だと思っていますが、今後故障したらひょっとすると一巻の終わりになるかも・・・。
せっかく修理したのに、1年くらいあとになって急に寿命が尽きる、という苦い経験を何度かしているので、今のうちにDVDにダビングをしておこうと考えた次第です。
でも相当量のソフトがあるので、果たしていつ終わることやら・・・。また長い間かけてせっせと録画した大量のビデオテープ群は?いや、もっと深刻なのは、ハードが動くかどうかすら心配なVHDのソフト。
あー、もう悩ましい限り!考えるのも嫌になってきます。

こんなときは、やっぱりバッハ。
今日聴いたのは、パリ生まれの名花アンヌ・ケフェレックが初来日の時に録音したバッハのアルバムです。

J.S.バッハ作曲
■パルティータ第5番ト長調 BWV.8292
■パルティータ第2番ハ短調 BWV.826
■半音階幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903
<演奏>
 アンヌ・ケフェレック(p)
<録音>
 1975年11月11日&12日、世田谷区民会館

ほんと素敵な演奏。
彼女のバッハは初めて聴きましたが、すっかり魅了されました。
こんなに瑞々しいバッハはそうは聴けないでしょう。
冷たいレモンを口に含んだ時のような感覚、といえば何となく想像いただけるでしょうか。
パルティータ第5番の冒頭を聴いただけで、その特長はすぐに分かります。
テンポが実にいいのと、アーティキュレーションがどんなときでも適切なので、音楽が常に躍動感に溢れています。
パルティータ第2番の第一曲シンフォニアも、グラーヴェ部分で必要以上に劇的な表現はみせません。だからこそ、続くフーガが音楽として見事に息づいていくのでしょう。
サラバンドでは、もう少し切なくなるような緊張感にとんだ表現を私は好みますが、ケフェレックはここでも過度の表現をあえて避けているようにみえます。でも一見そっけなく弾かれているようで、かえって内に秘めた叙情性が自然に滲み出てくるから不思議なものですね。
終曲カプリッチョは、ポリフォニーの綾を見事に描ききった素晴らしい演奏。
最後の半音階的幻想曲は、ピアノという楽器の機能を存分に使って、文字通りファンタジックな名演奏。続くフーガも神秘的な主題の提示に始まり内的緊張感に満ちあふれていました。

さすがにグールドのような凄みを持った演奏ではありませんが、決してべたべたせず透明感があってかつ暖かい。
これって、私の理想のスタイルです。
それからこの録音で使用されたベーゼンドルファー・インペリアルの深みのある音色もたまらなく魅力的で、このケフェレックの名演奏に大きく貢献しています。
私の大切な1枚になりました。

コメント (20)
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