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ビッグ・アイズ 【感想】

2015-01-25 02:52:57 | 映画


ティム・バートンの映画の中で一番好きな映画は「エド・ウッド」だ。それ以来、10年ぶりとなる実話を扱った本作。否が応でも期待が高まる。

内容は、予告編で観たままだ。奥さんが描いた絵「ビッグ・アイズ」を、旦那の名で売りさばく夫婦の話で、ゴーストペインターとなった奥さんがその正体を世間にバラし、その顛末までを描く。

あっという間の2時間だった。これは誉め言葉ではなく、悪口に近い。「え?それで終わり!?」とエンドロールで呟いた。終わり方の問題ではない。

ティム・バートン映画の魅力は、彼の「偏愛」に基づくユニークな世界観にある。「自分が好きなんだからしょうがないでしょ」といった風で、メルヘンな物語であっても、時に「毒っ気」と映る描写も平気で放り込んできたりする。それを彼の作家性と位置づけるには不十分かもしれないが、少なくとも彼の映画を観るにあたっては、彼の「偏愛」ぶりを目撃することは大きな楽しみなのだ。(ここ最近の映画ではだいぶ薄れているけど)
で、本作。まず実話の素材がとても起伏に富んだ話にも関わらず、映画の中身は驚くほど平坦だ。ティム・バートンが監督したという情報がなければ、彼が手がけた映画とはわからないだろう。本編を通じて終始感じたのは、ティム・バートンの傍観ぶりである。「自分だったら、こう解釈してこう描いてやる」という気概が全く見えない。実在の人物に取材をして、そこからヒアリングした情報をそのまま、劇中の登場人物たちの心情として描いただけだ。とりわけ本作では、瞳が異様に大きい「ビッグ・アイズ」という絵が、物語の軸となっているというのがポイントで、それは主人公の「目は心の窓」という表現手法に基づくもの。かつて純粋に愛し合った夫婦の形が、いびつに変形する過程を目撃するシンボルとして役割を担うはずなのだが、本作はそれを活かし切れていない。とても勿体ないことだし、ティム・バートンであれば如何様にでも料理できたはずだ。

主演はエイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツの2人。何をやらせても間違いのない演技派2人の夢の初競演で、その期待に見事に応える名演ぶりだ。クライマックスの裁判シーンは、クリストフ・ヴァルツの真骨頂のようなもので大いに楽しませてくれる。もっと面白い映画になっただろうなーと思う。1950~60年代のファッションを初めとする、時代の光景は目に楽しい。

見終わってWikiで調べたら、主人公の実在の女性はティム・バートンの知り合いとのこと。その関係性が影響したのだろうか。
映画監督の「新境地」というのは、何かを捨てるのではなく、何かを足すことを意味するものだと思う。とてもじゃないが本作をティム・バートンの新境地として評価したくない。

【60点】

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