
ジェイク・ギレンホールの久々の新作「エンド・オブ・ウォッチ」を観る。
ポリス映画、あるいはバディ映画の新たな傑作と言いたい映画。
スリリングで骨太なドラマに胸が震える。
本作はアメリカの中でも、犯罪多発地帯として知られるLAのサウスセントラルを舞台に、
若き警官(巡査)コンビの日々の仕事ぶりを描いた話だ。
テレビの民放でよくやっている「衝撃映像!」みたいな番組で、
アメリカの警察官が逃走犯を追うカーチェイスや銃撃戦といった映像が紹介されるが、
本作はそうした映像の渦中にある生の事件現場を、警官たちの視点から描いている。
ジェイク・ギレンホール演じる警官コンビの片方(「テイラー」)は、
動画投稿(?)のために自分たちがパトロールする姿を自画撮りしていて、
そこで録画された映像が、映画そのものになっているという寸法だ。
観ているこっち側はその場に居合わせているかのような臨場感を味わうことになる。
ありそうでなかったタッチのポリス映画だ。この手があったかーと感心する。
「警官も制服とバッジをとれば生身の人間だ」
冒頭のジェイク演じるテイラーのナレーションが本作を象徴している。
銃社会アメリカにおいて、イカれた凶悪犯たちを相手にする彼らの仕事は文字通り命がけだ。
彼らが保険に入ることなんて、果たしてできるのだろうか。。。
ギャング抗争や、人身売買、麻薬取引の裏側など、
映画のキャラクターとともに目の当たりにする凶悪事件の数々は、
平和ボケした日本では想像できるものではない。
その場面はときに凄惨で、精神的にもタフでないと務まらない。
劇中何度も見られる、犯罪のにおいをかぎ分ける彼らの嗅覚は、
そうした修羅場の中で培われたものだと、容易に説明づけられる。
そして、命がけの仕事を終えた1日の終わりに彼らが行きつくのは、愛する家族のもとだ。
平穏で和やかなプライベートと、過酷な仕事とのコントラストが何ともいえない。
ギャング間の抗争には黒人とラテン系という人種間の対立が色濃く映るが、
警官コンビのテイラーとサヴァラは、白人とメキシコ系のコンビで
仕事でもプライベートでも「兄弟」という堅い絆で結ばれている。
人種の壁があったり、なかったり、それがアメリカという国の深さなのだろう。
警官コンビを演じたジェイク・ギレンホールとマイケル・ペーニャの熱演が圧巻だ。
生身の人間として、生身の警察官として、キャラの真意に肉薄している。
彼らは実際にLA警察で訓練を受けたらしく、警官特有の所作が自然と身についているようだ。
コンビ2人のパトロール中の車内で、
互いを口悪く罵り、じゃれ合うような軽妙な会話は時に笑いを誘い、
凶悪犯を追い込む彼らの姿は、ちゃんとヒロイズムがあって痛快だったりする。
緊張感だけのシリアス一辺倒なドラマに終わらなかったことも好感だった。
リアルな人間を描いた結果に過ぎないだろうけど。
【75点】
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