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ナイト・マネージャー 【感想】

2016-10-16 09:00:00 | 海外ドラマ


Amazonプライムにて。
先月開催されたエミー賞で、スザンネ・ビアがTVドラマの監督をしたことを知り鑑賞。
全10話。見応えたっぷり。非常に面白い。

製作はBBCだが、配信はAmazonがやっているとのこと。Amazonが独占配信する海外ドラマは「トランスペアレント」「モーツアルト~」「ROBOT」の3つしか見ていないが、その中では1番面白かった。Amazonもやるじゃないかと見直す。主演のトム・ヒドルストンにメロメロだ。

ホテルの夜間支配人(ナイト・マネージャー)をしていた男が、愛した女を殺した黒幕に復讐するために、国際機関の諜報員となり、その黒幕に潜入するというサスペンス・スリラー。

ホテルマンがスパイになっちゃうという、突飛な設定であるが、原作はジョン・ル・カレということで驚く。「裏切りのサーカス」や「誰よりも狙われた男」など、元MI6の作家ということでリアルな諜報活動を描いた物語が多いからだ。設定はかなりのフィクションであるが、諜報機関の組織内部にある縦と横の関係など、ディテールはさすがにしっかりしている。

オープニング映像が秀逸だ。豪華なシャンデリアが地上に落ちると爆弾のように爆破し、連なったダイヤモンドが落ちると空中で降下爆弾に変わり、海を渡る無数の輸送船の軌跡がシャンパンの泡に変わる。多くの戦争兵器が富を生み、富が多くの戦争兵器を生むという世界の裏の循環。平和を脅かす病巣ともいえる兵器ビジネスを美しい映像で表現すると共に、本作で描かれる舞台を象徴している。

本作の主人公が潜入する黒幕は、億万長者の大富豪だ。表向きは農耕機械の巨大商社であるが、裏の実態は違法な武器商人だ。難民救援などを頻繁に行い、世界的な慈善活動家として知られているが、その活動も武器ビジネスの隠れ蓑として利用している。大富豪の名はリチャード・ローパーといい、血も涙もない「世界一の悪党」である。家族や恋人に対して愛情深い一面があるものの、他人を利用することしか知らないシンプルな「悪」として描かれる。ローパーが本作のヴィランであるが、彼に共感の余地を持たせないのは、主人公のドラマに比重を持たせるためだと考えた。



主人公の名はジョナサン・パインで、エジプトのカイロにある高級ホテルでナイト・マネージャーをしていた。ある日、ホテルに訪れた町の有力者(ギャング)の愛人であるソフィーから、ある機密資料を預かったことが全ての発端となる。その時期、カイロでは民主化への大規模なクーデターが起こり成功したばかりだったが、パインが預かった資料はそのクーデターの裏に武器の闇取引があったことを証明するものだった。パインは正義のために大使館へその資料を持ちこむが、回り回って、その事実が闇取引した当事者たちに知れ渡り、パインに資料を渡したソフィーの元に「制裁」の魔の手が迫る。パインはソフィーを危険に晒した自責と、ソフィーへの愛によって、彼女を国外へ逃がそうと匿うが、失敗。ソフィーが残虐に殺される。その亡骸を見たパインの中で、ソフィーを殺した相手への憎悪が膨らむ。そして、その黒幕のドンがローパーであることを知るのだ。

その後、パインは国際執行機関の手引きでスパイとなり、ローパーの組織内に潜入する。潜入の目的は、内部からローパーの武器取引の証拠を見つけ、ローパーを滅亡させることだ。潜入の足がかりは文字通りの「命懸け」。命を賭けるほどのリスクを負わないと、潜入することができない強敵ということ。パインはホテルマン時代に培った能力と、イラク派兵時代に培った度胸を武器に、組織の中でメキメキと頭角を表していく。彼に降りかかる一部の疑惑の目を撥ね退け、ローパーを信頼を勝ち得ながら、ローパーの闇取引の証拠を捕えるため画策する。いつしか、パインはローパーの右腕までに上り詰める。痛快さとスリルの連続で目が離せなくなる。



絶対的な力持つローパー、美しいローパーの愛人、ローパーの元右腕でありパインに敵対するゲイ小男、世界中にいるローパーのビジネスパートナー、ローパーの競合、パインを引き入れ彼と共に打倒ローパーに燃えるベテラン女性諜報員、ローパーと裏で手を組む政府関係者など、多くのキャラクターが登場し物語を展開させていく。パインの潜入活動と共に、注目するのはベテラン女性諜報員アンジェラの活躍だ。アンジェラは妊婦のオバサンという設定で、「スパイに見えない人がスパイ」というリアリティがジョン・ル・カレ作品らしい。彼女のローパーに対する執念は過去の壮絶な記憶に基づいている。涙ながらにその記憶を語る彼女に感情移入し、もらい泣きしそうになる。アンジェラにはパインとは別の戦いが待ち受けており、彼女たちの機関の上層部が、ローパーと「グル」という問題に立ち向かうことになる。ローパーを逮捕するために上に話を通せば、ローパーに筒抜けという状況だ。そのジレンマをアンジェラたちがどう打破していくのかも見所だ。アンジェラ演じるオリヴィア・コールマンが素晴らしい熱演だった。



スパイスリラーとして高い完成度を誇るドラマであるが、本作の無二の魅力は、主人公パイン演じたトム・ヒドルストンと、パインと危険な恋愛関係に陥るローパーの愛人「ジェド」を演じたエリザベス・デビッキのラブロマンスだろう。2人があまりにも美しく、そのツーショットに凄い眼福感。



ヒドルストンの知的で美しい所作、時折見せる人間臭さが堪らない。シャツで決めてもジャケットで決めても男前。そして脱いでも男前。筋肉質で完璧な裸体を惜しげもなく披露(お尻も)。世界中にいるヒドルストンの女性ファンは本作で悶絶するに違いない。自分も俳優を見て、そのカッコよさにシビれたのは「ドライヴ」のライアン・ゴズリングや「ザ・ゲスト」のダン・スティーヴンス以来のこと。
また、ジェド演じるエリザベス・デビッキの出演にも色めき立った。「華麗なるギャツビー」で一目惚れし、「コードネーム U.N.C.L.E.」の悪女役に萌えた。抜群の長身スタイルに、絵に描いたような美しい顔立ち。クールに見えるビジュアルゆえ役柄が限定されてしまうのが彼女の不幸かも。美女はスッピンでも美女であり、彼女のスッピン顔をたくさん拝めるのも嬉しい。化粧をすればゴージャスになり、飾り気のない表情も驚くほど魅惑的である。絶倫爺さんのローパーがジェドにゾッコンというのも頷ける。しかしローパーとジェドのツーショットは似合っておらず、パインとジェドの美男美女同士の情事に小さな歓声を上げる。

監督はデンマーク人女性監督スザンネ・ビアだ。映画監督がTVドラマを手掛けるのは昨今の潮流であるが、本作はその中でも成功例といえる。人間ドラマやラブロマンスを得意とする人だが、ここまでスリラー色の強い作品を手掛けるのは初めてだと思う。スリラー、サスペンス、ドラマに加え、大規模なアクションも見事に描き切っている。ラストのカタルシスたっぷりのシークエンスも見事だ。彼女らしい遠景の風景描写の美しさも健在。本作の成功を受けてかどうかわからないが、映画「007」の次の監督候補に上がっているらしい。あるかもな。

【75点】

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