先週、ジャック・ブラックの久々の新作「バーニー みんなが愛した殺人者」を観た。
Rottenで2012年のコメディ部門でNo1の評価を受けていた映画だったので
日本公開を楽しみにしていたが、やや肩透かしをくらった感じだ。
このテの小粒映画は大概DVDスルーになるので
劇場公開までこぎつけた配給会社には感謝するけれど、
個人的にはDVDスルーで良かったかも。「21ジャンプストリート」の逆パターンだ。
本作は1996年、アメリカのテキサス州で実際に起きた事件に基づく物語だ。
39歳の葬儀屋の男「バーニー」が、81歳の大富豪婆ちゃんを殺害した事件。
観終わった後に、この事件について調べたら、
以前にTV番組の「奇跡体験アンビリバボー」でも、
世界で起こった珍事件として、その全容が再現VTRとともに紹介されていたらしい。
その放送内容を観ると、映画で描かれていた内容とほぼ同じものだった。
この事件が普通の殺人事件ではなく「珍事件」たる理由は、
殺害者のバーニーが、町一番の心優しい人間で誰からも愛される市民であり、
そのバーニーを減刑にしようと町民たちが擁護した点にある。
一方で殺された大富豪婆ちゃんは、支配欲が強く誰に対しても意地悪な人間だった。
彼女は町一番に嫌われていたので、町民たちの動機もスンナリ受け入れられる。
「善き人」と「悪しき人」が出会ったことによる悲喜劇が描かれる。
まるで童話のようだ。
物語は、2人を取り巻く町民たちの証言を中心に、
過去の事件を振り返る構成になっている。
具体的なエピソードを絡め、様々な視点で、
2人についての町民たちの証言が出るが、
「あんな良い奴(バーニー)はいない」
「あの人(殺された老女)は最低だった」
総じると、この2つのことしか話していない。
「(撃ち込んだ銃弾が)5発じゃなくて3発なんだから、刑は軽くなるでしょ?」といった、
町民たちのトボけたコメントにユーモアを感じるとともに、
その過剰にも見える擁護に「もしかして町民たちは洗脳されている??」と一瞬思う。
しかし、そうした作為が劇中感じられないため、思い過ごしと判断することに。。。
2人の描かれ方が「真にいい人」「真に悪い人」に留まっているのが物足りない。
「人は知らないうちに人を洗脳している」という解釈もできるが、
本作においては、そのヨミはあまりにも飛躍し過ぎていると思う。
深読みをしてしまうと、つまづいてしまうものの、
コメディ映画としては普通に笑って楽しめる。
主演のジャック・ブラックが絶品だ。
ますます超えてきた体型に、丸みを帯びた四角い顔。
目、鼻、口といった顔のパーツがセンターに寄っていて、チョビひげが妙に合う。
似顔絵が描きやすい恵まれた容姿に加え、
天然な(病的にも映る)善人を軽やかに体現する。
彼の朗らかな歌声と、1センチだけ宙に浮いているような、
フワフワとしたダンスが非常に楽しい。
ジャック・ブラックを語るためには必須の1本といえよう。
大富豪婆ちゃんを演じるたのは、久々に見た大女優シャーリー・マクレーンだ。
ただ憎たらしいだけでなく、チャームを感じてしまうキャラになっているのが正解だ。
揚げ豆を音を立ててひたすら食っている表情が最高(笑。
本作がコメディ映画として成立しているのは、2人の好演によるところが大きい。
田舎町の検察官役のマシュー・マコノヒーも良いスパイスになってる。
「映画のような実話」を「映画にした」という映画で、
前評判以上の感動はなかったものの、まずまず楽しかった。
【65点】
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