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ダーククリスタル エイジ・オブ・レジスタンス S1 【感想】

2019-09-21 15:46:44 | 海外ドラマ


凄い、めちゃくちゃ凄い。
後世に語り継がれるであろうエポックメイキングな作品。”人形劇”として製作されることに出資したNETFLIXが尊いわ。
その全てが職人たちの芸術作品あり、ワクワクが止まらない冒険ファンタジー。視聴後、メイキング映像を見て、これほど感動したのは初めてのことだ。

人形劇「ダーククリスタル エイジ・オブ・レジスタンス」の感想を残す。

各話50分、全10話。人形劇でこのボリューム。
今年放送されたGOTの最終章。そこで解消されなかったファンタジーへの飢餓感を本作が満たしてくれた。

30年前に製作された、同名人形劇映画の前日譚を描いた話。本作が配信される前に、そのオリジナル映画がNETFLIXで配信されていたので見たが、冒頭の10分足らずで世界観についていけずフェイドアウトしていた。

なのでオリジナルは未見。普段見慣れぬ人形劇であること、キャラクターデザインの癖が強いこと、細かく世界観が設定されていたことなど、なかなかすぐに入り込めなかった。夢中になり始めたのは3話目以降。最終話まで見終わったのち、あまり頭に入ってなかった1話目を見て、理解を深めた具合だ。



あらすじをざっくりいうと、未来か過去かわからない時代に、「トラ」という惑星があって、その惑星の生命の源泉が「クリスタル」という巨大な石にあり、そのクリスタルを悪用し、「トラ」を支配していた「スケクシス」族から、平和を取り戻すために、被支配族であった「ゲルフリン」族の面々が反乱を起こすという話。

導入部分でわかりにくいのは、主人公らしきキャラクターが複数いること。GOTほど複雑でないが、主人公は3人いて、それぞれ別の物語が平行して描かれる。スケクシス族の城で守衛をしている青年「リアン」、ゲルフリン族の中で主導的種族の女王の末娘「ブレア」、そしてゲルフリン族の中の地下種族であり、動物愛護女子「ディート」である。境遇が全く異なる3人が、時を同じくして導かれるように出会い、反乱の狼煙を上げる。



スケクシス族の造形は、鳥、あるいは、爬虫類な顔立ちで、醜く、明らかな悪党ヅラ。そして、実際に救いようのない生粋の悪党である。昔、トラの守護者であった「マザー」が彼らにクリスタルを預けてしまったことが不幸の始まり。彼らは常に、ズル賢く強欲で高圧的。そんな奴らが支配者として、ゲルフリン族から崇められる設定に違和感を覚えるが、そこが物語の起点になる。やや導入部の設定が入り組んでいるが、正義と悪が明確に区別されているため、展開はとてもシンプルに流れる。



似ていると感じるのは「ロード・オブ・ザ・リング」(「LOR」)。小さく非力で純粋なホビット族が本作のゲルフリン族にあたり、邪悪で凶暴な魔物たちが本作のスケクシス族。LORが、1つの指輪を巡る物語だったのに対して、本作はクリスタルを巡る物語だ。指輪もクリスタルも、状況によって、悪にも善にも振れる点も似ている。ただ、既視感みたいなものは全く見たらない。本作のデザイン、世界観があまりにも独創的で美しいからだ。

キャラクターは全て人形である。美術セットも現物である。背景や、特殊効果に一部CGが使われているが、その多くが職人たちの手仕事によるもの。オリジナル映画でも担当していたデザイナーが、本作のキャラクターのデザインを手がけ、若き職人たちが、それを手にとれる実物にしていく。デザイナー、彫刻家、メカニック、あらゆる職人の工程を経て人形は作られ、人形師と言われるパフォーマーたちによって、キャラクターたちの動きに命が吹き込まれる。勿論、人形だけではない、次々と移り変わるセットも、一瞬しか映らない、小道具、美術に至るまでだ。

いったい、この映像はどのように作られたのか、劇中、何度も頭を駆け巡る疑問は、最終話後のメイキング映像で明らかになる。想像の斜め上をいく緻密で膨大な製作工程があった。途方もないイマジネーション、技、労力、情熱の産物。当初、CGアニメとして企画が上がったらしいが、オリジナルの魅力が感じられないとして、NETFLIX側が「人形劇でやったらいくらかかるかな?」と、さらなる出資を提言。素晴らしい英断だ。結果、とてつもなく大きなプロジェクトに発展し、壮大な映像作品が完成された。

わざわざ人形劇にする意味がある。生身が実在する感触。見る人の感情移入が人形たちの動きを想像力で補完する。勿論、人形たちの表情は生命力にあふれる。喜び、驚き、辱め、恐れ、怒り、絶望、悪意、良心、勇気、慈しみ、愛、様々な感情の波が発せられる。声優たちの功績も大きく、リアン演じるタロン・エガートンをはじめ、そのキャスティングもかなり豪華だ。中でも、印象的だったのは、ブレア演じる、アニャ・テイラー=ジョイの声だ。非常に魅力的。少し鼻にかかった声で、柔らかく常に愛情を感じさせる声色、聡明で心優しいブレアにぴったりだった。

人形劇という制約を感じさせないほど、ダイナミックでスリリングなアクションが描かれる。お子様仕様ではない残酷な描写もあるため、万人にウケるドラマとは言い辛いが、未知の世界にワクワクするファンタジーの醍醐味を久しぶりに味わい、映し出される全ての映像に感動した。全話を通して本作を監督したのは、映画監督のルイ・レテリエだ。最近の映画より全然イイ仕事するじゃん(笑)。

次のシーズンへと繋がる終わり方だ。シンプルに続きが気になる。ただ、この膨大な製作工程を見ると、シーズン2が楽しみ!とシンプルには思えず、NETFLIXが資金繰りに失敗するのではないかと本気で心配になる。この時代、NETFLIXの映像を容易に視聴できる自分は幸運だとしみじみ思ったりする。

【90点】

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