見終わってしばらく経つが、「ストレンジャー・シングス」のシーズン3の感想を残す。
計8話。1年半ぶりの新シーズンだ。
現在のネットフリックスで最も視聴者数が多いキラーコンテンツ。仕事で映画会社の方と打合せをした際、「ストレンジャー・シングスが面白い!」で話が盛り上がってしまうほど、日本での認知も広がっているようだ。シーズン3の製作は、全世界に及ぶNetflixファンの期待を背負っていたと思うが、いやいや、恐れ入った。文句なしのシリーズ最高傑作。80年代がアツい。スリラーがアツい。青春がアツい。
物語は、前作から1年が経過した1985年の夏休みの設定。まず、目を奪われるのは、子役たちの成長である。前作の撮影から2年近く間を置いたせいか、みんなかなり大きくなっている。中でも、主人公のマイクの身長が著しく伸びていた。顔つきも随分と変わった。マッシュルームカットで可愛かったウィルも声変わりを経ている。見た目だけでなく、精神的にも成長していて、マイクとエルはすっかり恋仲になり、ベッドの上で接吻を繰り返している。「アメリカの子は早いんだなー」と呟きながら、彼らの成長を愛でる。仲良しメンバーの友情は変わらず、前シーズンから加わったマックスを含め、わちゃわちゃと騒ぐ様子がとにかく可愛い。彼らが着こなす、ダサい80年代ファッションも堪らない。
80年代文化の再現は、これまでのシーズンにも増して凄まじい力の入れよう。アメリカ人にしか理解しにくい「コーラ」のクダリなど、全てのアイテムにフォローすることはできないが、細かすぎる描写に、制作陣のオタクな遊び心が透ける。昨今の映画の流行りである”80年代”だが、それらとも一線を画す仕上がりといえ、当時、同じ世代であったアラフィフ世代は悶絶すると思われる。サブカルの代表格である、映画ネタの使い方にはテンションが上がった。「ターミネーター」、「ネバ―エンディング・ストーリー」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」といった伝説的映画のネタが、巧く活かされてニヤニヤする。「ネバ―エンディング・ストーリー」のデュエットシーン、最高にチャーミングだったわ。
今回、物語の舞台として大きく機能するのが、新しくできたショッピングモール「スターコート」である。町の商店街が、ショッピングモール出現により駆逐される時代を反映したものだろう。そのセットの仕上がりが素晴らしい。箱そのものはどこかのショッピングモールを借りているのだろうけど、中の内装は、このドラマのために全て作りこまれている。他にも、地下の巨大研究所、広い遊園地など、美術セットの予算は、間違いなくテレビドラマのサイズではない。
子どもたちが大人に近づいたことで、描けることの幅も広がった。これまでのシーズンにはなかったバイオレンスやグロテスク描写が、しっかり描かれる。戦いのなかで生傷は絶えず、首を絞め上げられ、拷問シーンまである。エルだけが戦いの矢面に立っていて、他の子どもたちは安全圏にいた前シーズンから、フラットな状況に変わり、リアルな感覚がさらなるスリルを醸成する。なので、しっかり怖い。同時に、エルの超能力パワーはこれまで以上に活用される。その度に鼻血が出るシステムのため、彼女の体調が気になってしまう。
回を追うごとに、面白くなる脚本だ。序盤はややルーズな立ち上がりで、ファンがドラマとの再会をかみしめる時間に費やされる。その後、バラバラに分かれて展開していた事件が、ミステリーを孕んで1つの展開に繋がっていく。そして、最高潮でラストを迎える。まさにドラマシリーズの理想形。クライマックスの”花火”を使ったバトルシーンが痛快かつ美しくて秀逸。壮絶な状況下でも、ファンタジーを優先する潔さが本作の魅力だ。また、未解決を次シーズンに持ち越さず、しっかり決着をつけるのがいい。
そして、本シーズンを特別なものにしているのは、登場人物たちのドラマパートである。テーマは「いつまでも子どもじゃいられない」ってとこか。大人になることは何かを捨てていくことでもある。地下室で遊んでいたボードゲームは卒業、それぞれに自我が芽生え、スレ違いが見えてくる。大きな犠牲を伴った今回の事件により、メンバーは新たな旅立ちを迎える。固い友情で結ばれた、ひと夏の最後の思い出。映画「イット」にも通じるノスタルジー。切なさが胸を締め付けるラストに、しばし余韻に浸る。
大満足のシーズンであった。おそらく次のシーズン4も作られると思うが、もはや子どもの成長を見守る親の心境であり、彼らとの再会を楽しみにして待つ。
【80点】
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