引き続き「ロッキー」の復習。
ロッキーシリーズの最終章。目も当てられない前作の「5」から、鮮やかなV字回復。それどころかシリーズの集大成的な役割を見事に果たす。何度観てもロッキーの美学に感動するなー。「挑戦する人間を止める権利は誰にもない」など、ロッキーの生き様に密着した名言の数々が輝く。
まずタイトルが印象的だ。「ロッキー」ではなく「ロッキー・ボルボア」というフルネームがいつもと同じ調子でスクリーンいっぱいに出てくる。「ボクサーもいつかは人間に戻る」という過去作のセリフのとおり、伝説のボクサーとして知られ、ある意味「公人」として存在したロッキーが、「個人」になったことを示唆する。ロッキーはすっかり老齢となり、引退をしてから久しい。愛するエイドリアンは亡くなり、過去の思い出から離れられないでいる。「過去なんてクソだ」というポーリーとのコントラストが切ない。サラリーマンとして仕事をしているロバートとの間には溝があり、偉大な父に対する息子のコンプレックスと、それを理解しつつも息子を愛し続けるロッキーがいる。公人としてのロッキーは、過去の人でありながらも人々の記憶に深く刻まれており、町に出れば「昔ファンでした」という人に握手とサインを求めれ、ロッキーも嫌な顔せず笑顔で応じる。かつてロッキーが活躍したボクシング界も様変わりしていて、かつて自分がいたヘビー級の試合は黒人選手ばかりだ。移ろいゆく時代の中で、老齢となったロッキーの新たな挑戦は、誰のためでもない自分のためというモチベーションの元にあり、これはシリーズの始発点「1」に近いものだ。
ロッキーの対戦相手となる無敗のチャンピオンにも、ロッキーと戦うべき意味が用意されているのが秀逸。「敗北」(意味が違うが)を教える師としてロッキーが必要だったという構図だ。
錆び付いた肉体となったロッキーが戦う戦術はパンチの破壊力で、アクション演出の進化も加わり、シリーズで一番迫力をもったファイトシーンになったと思う。ラストは判定を聞かずリングをあとにし、観客の歓声に応える姿が美しく、それは同時にこれまでシリーズを愛してくれたファンからの歓声にも応えるかのようだった。
「1」以来の傑作といえるのだけれど、少し残念だったのはスタローンの整形顔だ。眉が異常に曲がっていて無理矢理、肌を引き上げているのがわかる。顔面が普通に怖い。スタローンの見栄ではなく、役作りのためと信じたいところだ。
【75点】
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