から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

犬王 【感想】

2022-06-04 08:00:00 | 映画


大アタリ映画が続く。。。。(短めに感想)

湯浅ワールド全開。無二の作家性と創造性を、知られざる歴史フィールドで爆発させる。呪われて生を受けた異形の能楽師「犬王」と、呪われた剣によって視力をなくした琵琶法師「友魚」が出会い、バンド(?)を組んで室町時代の京を席巻するという話。バディ映画であり、ミュージカル映画であり、歴史ドラマ、これらの3つの要素が鮮やかに融合し、高ボルテージを保ったまま駆け抜けていく。実在したものの、文献として残っていないキャラクターを想像によって膨らませた物語。じゃあ好き放題やっていいか、とはならず、湯浅監督が考える「歴史」がしっかり守られていて、あくまで本作は時代劇。アニメという表現手法でしか実現できない世界を圧巻のスケールとダイナミズムで具現化する。本作で特筆すべき点は製作陣の豪華な座組みだろう。湯浅政明×野木亜紀子×松本大洋×大友良英、この4者の個性と才能が活かされたまま、見事に1つにまとまった作品ともいえる。想像するに初タッグを組んだ、湯浅監督と脚本家野木亜紀子のシナリオ作りは互いの異なる主張を含め、かなり難航しただろう。だけど結果的に2人の個性がなければ、この作品の成功はなかったと思える。特に、クライマックス後の犬王と友魚の行く末である。何かとミュージカルシーンにスポットがあたりがちの本作だが、個人的に刺さったのは終盤で描かれる友魚のアイデンティティの執着である。ここのドラマは生身の人間を描くことに秀でた野木亜紀子の手腕が効いていたのでは?と勝手に妄想する。そこに湯浅監督が描く時代の残酷で血なまぐさい描写がしっかり抑えられていて何倍もの味わいで響く。そして、何といってもキャスティングの旨み。湯浅作品の特徴はキャスティングに失敗しないこと。アヴちゃん、森山未來、津田健次郎、柄本佑、松重豊がいずれもビタハマり、かつ、見事な演技力。アヴちゃんは他で絶賛されているのであえて言及せず(言わずもがな素晴らしいので)。個人的には森山未來の熱演に圧倒された。ハッピーエンドかバッドエンドか、は見る側によって異なる映画。大いに楽しみ大いに感動した。

【80点】
コメント
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