から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

蜜蜂と遠雷 【感想】

2019-11-01 23:00:00 | 映画


”世界は音で溢れている”。音楽の神に愛され、音楽を奏でずにはいられない”天才”という稀有な人間たちの生き様から、音楽の深淵を見る。音を楽しむと書く「音楽」は、音を拾い集める遊びでもあったか。映像化困難という前評判だったが、いざ見てみれば、これほど映画化、そして劇場鑑賞にうってつけの原作はなかったのではないかと思う。見事な映像化だ。上下に分かれる長い原作。原作は未読だが、おそらく2時間の映画に収めるために、見どころであるコンクールのシーンに絞った模様。音楽を知らない素人にも、わかりやすいエンタメとして提示してくれる。「大丈夫、彼はねじ伏せる気だ」、演奏シーンには駆け引きが見え、十分にスリリング。主要キャラの4人の個性が立ちまくっており、それぞれが共鳴し合う構成。演じる4人の俳優がもれなくいい。だけに、ブルゾンのキャスティングが浮いてしまうのが残念。クライマックスは、女王の「帰還」あるいは「覚醒」。疾走感あふれる選曲と相まって、カタルシスが襲ってくる。トラウマと悦びがせめぎ合い、向こうの世界に突破する感覚。その圧巻のラストシーンに、劇場全体が恍惚の空気に包まれているようだった。
【70点】

ブルーアワーにぶっ飛ばす 【感想】

2019-11-01 23:00:00 | 映画


「ブルーアワー」とは、夜の手前と朝の手前に訪れる、外の空気が青く染まる時間帯だ。この時間に主人公はあてもなく駆け出す。わかるわ、その感覚。。。。
アラサーの女子が、故郷への帰省をきっかけに自分の人生を見つめ直すという話。主人公はCMディレクターとしてバリバリ働く。発注した制作会社の人間に、クレームの電話をかけるシーン。独特の抑揚で怒りを抑えながらまくし立てる(夏帆が絶品)。癖強めの女子の個性に期待感が高まる。男っ気のない人に見えながら、結婚していて、かつ、会社の上司と不倫している。仕事もプライベートも大忙しだが、充実というより、どこか虚無感を湛える。そんな中、仲良しの後輩のリクエストで”何もない”という茨城の実家に一緒に帰省することになる。
久しぶりの帰省、随分と老け込んだ両親、そしておばあちゃん。それぞれの愉快な個性を描きながらも、時間の残酷さを突きつけ、切なさがこみ上げてくる。そして、かつての自分に思いを馳せる。こんな生き方で良かったっけ!?
監督自身をモデルにしたという主人公の砂田。監督の想いを体現した夏帆が素晴らしく、女優として成熟期に入っている模様。「天然コケッコー」より追いかけてきた身としては感慨深い。最後のネタバレを含めて、主人公が掴んだものの実感がなくて消化不良。楽しみにしていたシム・ウンギョンもクセが強すぎて入ってこない。
何の気なしに見たが、偶然その回は監督と夏帆が登壇する舞台挨拶があった。テレビでみるより、夏帆の身長が高く綺麗だった。上映前、監督からの夏帆への手紙に会場が半泣き。鑑賞前にかなりバイアスがかかった(笑)。
【60点】