から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ブラインドスポッティング 【感想】

2019-09-11 07:00:00 | 映画


”この映画にはアメリカの現実(リアル)がある”的なキャッチコピーはよく見るけれど、本作ほどアメリカ社会の問題を的確に集約させた映画も少ないのでは。人種差別だけじゃない。そこに銃社会と格差社会が加わるから、手がつけられない毒薬になってしまう。自由で平等な社会をボーダレスに実現させることは想像以上に難しい業だ。ストーリーはとてもわかりやすいのに、いくらでも掘り下げられる逸品。自身の乏しい考察力が残念。

主人公の黒人青年「コリン」は、とある事件をきっかけに投獄され、そののち、保護観察付きで釈放される。保護観察期間に問題を起こさず、平和に過ごせば、晴れて自由の身となる。本作では、その保護観察期間、残り3日間の間に起きる主人公の”サバイバル”が描かれる。

何も問題を起こさなければ良いだけだ。簡単なミッションに思えるが、主人公の周りの環境がそうさせない。周りの親しい友人たちの手にはドラックや銃がある。

舞台はカリフォルニア州にあるオークランドという都市で、あとでWikiで調べたら、人種の混成率が高い場所で有名らしい。本作の主人公には、プライベートでも仕事でも常に行動を共にする親友「マイルズ」がいて(極楽の加藤似)、彼は肌の色が違う白人だ。主人公とは幼馴染であり、異なる人種同士が同じ隣人として暮らし、分け隔てなく生活している地域社会が伺える。なお、彼らが暮らす街は割と貧しい地域のようで、アフリカ系が多く、マイルズの奥さんもアフリカ系だ。マイルズは、自他ともに白い「ニガー」といっている。但し、マイルズ側から黒人を「ニガー」と呼ぶことは頑なに嫌う。

一方、人種差別も同時に根付いていて、3日間で起きる事件の幕開けは、主人公が偶然、警察による傷害事件を目撃してしまったことによる。以前に頻繁に日本でも報道されていた、丸腰の黒人を警察官が銃殺するパターンだ。厄介ごとを避けるコリンは、そのままやり過ごすこともできたはずだ。しかし、本作が面白いのは”怨念”を主人公にまとわせたことだ。他人ゴトでは済まされない重大な問題として、主人公を巻き込む。

最近、アメリカの銃による無差別殺人事件が多発している。アメリカはどんなに人が殺されようが、銃を手離さない。己の防御として、銃を持たなければならないとする。全く理解ができない価値観であるが、本作のマイルズも、家族を守るためにと言いながら、まるで玩具を買うように銃を手にする。一瞬で人の命を奪い、誤爆も容易な凶器だ。本作で見られる様々なターニングポイントも、銃の存在が前提条件として関わっており、銃を無くすことが絶対的な正義と再認識させる。

コリンとマイルズの人種を超えた友情ドラマが本作の軸だ。清々しくもあり、時に、大きな痛みを伴う関係だ。真面目な黒人青年と、粗暴でキレやすい白人青年というコンビ。騒ぎを起こすマイルズと一緒にいることが、保護観察中のコリンにとっての最大のリスクになる。マイルズが「噴火」し、コリンが火消しに入るパーティーシーンは、人種間の見えない先入観、そして人種間にある無自覚な劣等感を晒すようだった。タイトルの”盲点”は、同じ環境で同じ時間を過ごしてきた2人の、肌の色が違うことで食い違っていた景色を指しているのだろう。やがて明らかになるコリンが逮捕された経緯が、”盲点”に気づかせるきっかけとなる。

主演の2人が本作の脚本を書いている。セリフの説得力の強さが違う。クライマックスの魂のラップに圧倒され、観る者の偏見が試される。対立が対立を生むアメリカ社会で、融和の道は遠いのか。。。。本作は希望で締めてくれる。「青汁も慣れれば悪くないじゃん」。

【70点】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする