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クィーン・オブ・ザ・サウス シーズン1 【感想】

2017-07-22 08:00:00 | 海外ドラマ


海外ドラマ「クィーン・オブ・ザ・サウス」のシーズン1、13話を観終ったので感想を残す。
また1つ、見逃せないシリーズに出会った。日本でリリースしてくれたNetflixに感謝。

麻薬の密売人であった恋人をカルテルによって殺された女子「テレサ」が、麻薬業界のなかで上り詰めていく姿を描く。

1話目の冒頭で、真っ白のスーツにサングラスをかけた、いかにも「麻薬カルテルの女王」といった装いで主人公が華々しく登場する。ドラマで描かれるのは、彼女の回想録であり、どのようにしてそこまでに上り詰めたかが描かれる。副題である「女王への階段」のとおりのようだが、シーズン1の最終話でようやくその「階段」のスタートラインに立ったばかり。シーズン2以降で本格的に主人公の活躍が見られそうだ。



メキシコの路上で両替をしていた主人公テレサが、麻薬の売人に見染められ、恋に落ち、裕福で幸せな生活を送る。しかし、間もなくして恋人がカルテルを裏切っていたがわかり、カルテルに殺され、その恋人であるテレサも命を狙われる。「自分に何かあったらこれを持っていれば助かる」と恋人から託された一冊のノートをもって、暗殺者の魔の手から逃れる。

ドラマのベースとして描かれるのは、カルテル同士、あるいはカルテル内の抗争である。海外ドラマでは「ブレイキング・バット」や、最近だと「ナルコス」で描かれてきた世界と同じだ。大金が動く麻薬ビジネスのダイナミズム、「ファミリー」として結束する人間たちの信頼関係、カルテルならではの異常な残虐性など、描かれる裏社会の様子は相変わらず刺激的だ。しかし、これまで男性側の視点でのみ描かれてきた設定に対して、本作では常に脇役であった女性を主人公にしている点がフレッシュで、最もユニークなポイントといえる。

また、現代における麻薬ビジネスの構造についても詳しく描かれているのも興味深い。メキシコやコロンビアなどの中米から生産された麻薬をアメリカに持ち込み、アメリカ国内で流通させることが彼らの仕事だ。「カスタマー」と言われるお得意さんたちはお金持ちばかりの様子。アメリカ社会と麻薬ビジネスの関係は根深いと本作をみて改めて感じる。トランプが「メキシコとの国境に壁を作れ!」と躍起になっている背景の一端でもある。

逃亡するテレサは、カルテル内で対立する二派の権力抗争に巻き込まれる。その二派というのが「夫婦」である。テレサの命を狙うのが夫側(エピファニオ)の勢力であり、奥さん(カミラ)側の勢力がテレサをかくまう。テレサには恋人を殺された復讐心などは微塵もなく、ただただ命を助けてほしいだけだ。身の安全を確保するために、不本意ながらカミラ側のビジネスで働くことになる。そこでテレサの隠された度胸や頭脳が発揮され、めきめきと頭角を表していくのだ。

テレサの仕事は麻薬の運び屋である。その初仕事は、中東の自爆テロとよく似ている。運びがバレないように小分けにされた麻薬を呑みこみ胃の中に隠す。袋が胃の中で破れたら即死だ。本作ではその袋が欠陥品であることが事前にわかり、胃の中で破裂するリスクを追いながら、テレサは仕事を真っ当する。カルテルにとってみれば、運び屋は捨て駒であり、その体よりも胃の中の麻薬が優先される。死亡した女性の体内から慌てて麻薬を取りだす様子がエグい。

そんな非情な世界で、様々な苦難をテレサが突破していき、それでも人としての良心を失わないテレサの奮闘が本作の見どころといえる。

しかし、それ以上にシーズン1については、エピファニオとテレサの壮大な夫婦ゲンカが印象として強く残る。このあたりの描き方が面白くもあり、つまらなくもある。テレサをかくまうカミラの存在感は、カリスマ性を感じさせるには十分であり、テレサを通じて若かった頃の自分と重ねているようにも見える。カミラをカッコよく描き切ったほうが流れとしてスムーズだが、中盤のエピファニオの妨害(攻撃)を一方的に喰らう展開がしつこく、「イイ加減気付けよ」と中盤で中だるみする。愛する娘との親子関係も描かれるが、娘が正論で、母親であるカミラの身勝手さが強調される。



一方で、シーズン1の最終話で描かれる、2人の喧嘩がいよいよ大爆発を起こす展開が面白い。ツッコミどころは多いけど、政府とカルテルのパワーバランスが一気に崩れカオス状態となり、今後の展開に目が離せなくなる。その状況下でテレサは絶対絶命の危機に瀕し、守ってきた「一線」を超えてしまう(テレサの友達の描き方がイマイチ)。彼女の成長というべきか、墜落というべきかは見方次第であるが、次シーズン以降、テレサがカルテルのダークサイドに呑まれていくのは確実とみる。テレサを演じているのは映画のイメージのほうが強いアリシー・ブラガで、彼女の熱演が光るドラマでもある。

冒頭でカルテルのボスとなったテレサが、今後、どのような過程を経て、その位置にまで上り詰めるのかはまったく読めない。カミラの後継者になるのか、それとも全く別のカルテルに入るのか。。。いろいろと想像を巡らす。

シーズン2は現在アメリカで放送中であるため、日本でリリースされるのはもう少し後になりそうだ。

【70点】
コメント
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