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扉をたたく人 【感想】

2011-12-04 00:26:18 | 映画
映画を観てきた経験上、アカデミー賞における作品賞よりも、
俳優個人賞にノミネーションされる映画の方が個人的にタイプな映画が多い。

劇場で見逃してしまったまま、すっかり忘れていた、
3年前の映画「扉をたたく人」のDVDを観て改めてそう感じた。

当時目立ったプロモーションもなく、あまり露出のなかった本作。
旧作コーナーにもストックは一つしかなく、あまり知られていないという点では
隠れた良作といえるのでないかと思う。

本作は、アメリカのとある大学で教授をしている中年男性と、
その彼の別宅に誤って居座っていた不法移民(若いカップル)との交流を描いた話だ。

9.11以降の多民族国家アメリカのリアルといった社会性を盛り込みつつ、
不法移民の青年との出会いによって、大学教授の閉ざされた心の扉が開かれていく過程を描く。
その過程が暖かくて、美しくて、ときにやるせなくて。。。

人間っていいな、
とよくわからないけどそう思った。

ウィキで本作の情報を調べたら、全米では封切時わずか4館のみでの公開だったが、
最終的に270館まで拡大され、6か月間にわたるロングランになったという。
最近だと英国王のスピーチも同様の現象で、良作を見抜くアメリカ人の目は肥えてるなと思った。

主役を演じたリチャード・ジェンキンスが、本作でオスカーノミネーションとなった。
当時は「ミルク」のショーン・ペンがオスカーをとったが、彼のパフォーマンスの方が好きだ。
数多くの映画に脇役として出演してきたベテラン俳優。
本作では、特異ではない身近にいそうな人間の感情の機微を見事に好演。
彼の抑えた演技、メガネの奥にある寡黙な眼差しから、様々な想いが巡ってくる。
ラスト、彼が地下鉄ホームで一人太鼓を打ち鳴らすシーンが心に残って、頭を離れない。

あと、不法移民の母親役で出たヒアム・アッバスが凄まじく綺麗だ。
役柄とおりの気品、凛とした強さ、息子への揺るぎなき愛。
彼女の美しい佇まいにため息が出た。
彼女の過去主演作「シリアの花嫁」を観よう。。。

大学教授と移民青年とのつながりに普遍的な「音楽」を用いた脚本も素晴らしい。

決して甘くない展開に、胸が苦しくなったが、
別れのない出会いはない、
そんなリアルを一貫して物語に投影した監督に拍手。

私にとって忘がたい映画となった。

【85点】
コメント
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