ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

陸軍分列行進曲〜令和元年度自衛隊音楽まつり

2019-12-04 | 音楽

 

例年ならまだ音楽まつり全日程が終了しないうちから、我慢できずに
写真をアップしてしまうわたしが、今年はなぜエントリアップまで
実質2日かかってしまったかといいますと、それはパソコンのトラブルでした。

トラブルと言っても何のことはない、大量にRAW画像をアップロードしていると、

「もうHDに空き容量がなく読み込めません」

ということをPCから宣言されてしまっただけなんですが。
しかしここでわたしはよせばいいのにせっせといらないデータを捨てたりして
自力で何とかしようと格闘を始めてしまったのです。

同じことになった方はもしかしたら経験がおありかもしれませんが、
(わたしだけかな)手作業でそんなことをしてもほぼ焼け石に水。
それどころか必要なファイルを見分けることもできず、作業は行き詰まり、
もはやこれまで、と専用アプリを導入したら一瞬で仕事が終わりました。

これが本当のタイムイズマネーです。

しかし、今回、驚いたのは自分で撮った写真の多さでした。
たかだか一回のイベントで、
わたしはRAW画像1400枚、
1時間につき700枚、1分間に70枚、つまり

1秒毎にかならず一回以上シャッターを押していた

ということになります。
・・実際に目で見るよりファインダーを覗いていた時間の方が長かった?

 


さて、オープニングが終わり、音楽まつり、次はセレモニーです。

第302保安警務中隊の儀仗隊が入場してきました。
隊長を入れて28名、全国から推薦されて入隊試験を受け、
それに選ばれたその中からの選りすぐりのメンバーです。

保安警務中隊の写真を見ていつも思うのですが、どんな訓練をしているのか
彼らの動きは写真というコンマ秒の瞬間においても常に完璧に揃っています。

肉眼で見た音楽隊の行進やマーチングは、もちろん一般レベルで言うと
段違いに訓練された団体のそれですが、やはり写真に捉えた瞬間は
この「肉体と規律のスーパーエリート集団」に敵うものではありません。

第302保安警務中隊は役職で言うと「ミリタリーポリス」ですが、
国家行事の際に国賓を迎えるという「日本の軍隊の顔」であるので、
ロンドンのバッキンガム宮殿の近衛兵さながら、容姿チェックがあります。

ただ厳密には個々の目鼻立ちというより、全体的に並んで立ったときに
規格から外れていないかが選考のポイントなのではないかと思われます。

眼鏡をかけることも許されないようですが、視力の悪い人は応募できないのか、
それともコンタクト着用と言うことで許されるのか、どちらでしょうか。

純白に日の丸レッドのパイピングが施された制服に身を包んだ
カラー(国旗)ガード(護衛)に運ばれて入場してきました。

国旗入場の前に観客には起立を要請するアナウンスがかかります。

第302保安警務中隊の制服は昨年度刷新されました。
52年間着用されていた前の白いスーツ襟のも好きでしたが、わたしはこの
「日の丸カラー」の新しい制服は近年にない名作だと声を大にして言います。

コシノジュンコ氏は間違いなくこのカラーガードをイメージして
この制服のデザインを行ったのに違いありません。

そして、詰襟にベルト、斜めのパイピングというデザインも
世界的に見ると華奢な日本人にはよく似合うと思います。

去年、武道館で行われた音楽まつりで、よりによって
大臣展覧の招待公演で国旗旗手が台から足を踏み外し、
万座が息を飲むという「事故未満」があったのを思い出しました。

あの後、おそらく警務中隊全員で(参加してない人も)正座して(しらんけど)
徹底的な反省会になったと思われるのですが、それにしてもあのとき
足を踏み外しても旗手がバランスを崩さず、もちろん国旗を落とすことなく
瞬時に体勢を立てなおしたのには驚嘆させられたものです。

あの咄嗟のリカバーこそが、彼らが日頃行っている
厳しい訓練の賜物だったといまでもわたしは思っています。

しかし、自衛艦旗事件のように、しばらくの間は音楽まつりで
同じ光景を見るたびにあのシーンが脳裏をよぎってしまうのは、
あれを目撃した人にとって、もうこれはどうしようもないことです。

やっぱり一緒に目撃した人とはその後何度かその話をしましたし、
何よりも当の旗手は二度と同じ徹を踏まない覚悟で臨んでいることでしょう。

続いて国歌斉唱が行われました。
去年は前奏に続いて斉唱となっていたと記憶しますが、今年は

「前奏はありませんので」

にまた戻っていました。
うーん・・・・なぜに?

前奏がないと最初の「き」を誰も歌わないんですよね。
わたしは指揮者の動きを見て歌おうとしたのだけど、
体育館は広いので指揮のタイミングより音が聞こえてくるのが
遅くて、
やっぱり最初からは歌えませんでした。

ステージ前のスタッフもこと自衛隊行事とあって全員が起立しています。
カメラマンは自衛官であっても敬礼しなくてもいいんですね。
これは「任務中」と言うことなんだと思います。

昔練習艦隊の艦上レセプションで案内してもらっていたら
喇叭譜君が代が始まったのですが、

「立ち止まって敬礼しなくていいんですか」

と聞いたら、

「任務遂行中はしなくていいことになっています」

と言っていました。

わたしごときを案内する任務なんてどうでもいいから
立ち止まって敬礼してくれ!と内心思っていましたが。

第302保安警務中隊は国家吹奏中捧げ銃をします。
訓練ではこの足の開き方の角度まできっちり測られるそうですよ。

選ばれたメンバーの中からさらに選抜された28名、
その指揮官になるというのは一体どういう自衛官なのでしょうか。

階級は三等陸尉ですが、これはつまり、彼らは防大卒ではなく
陸曹から選抜され、その隊長が任官すると言うことだと思います。

流石にそんなメンバーを率いる隊長だけあって動きが美しい。
剣の敬礼動作から鞘に収めるまでの一挙一動も全て絵になっています。

序章とオープニングの指揮を行ったのは航空中央音楽隊隊長、
松井徹生二等空佐です。

この後、

「東京オリンピック ファンファーレ」

が陸海空4名のトランペット奏者によって演奏されました。

 

このファンファーレはオリンピック委員会とNHKの公募に
寄せられた作品から選ばれたアマチュア作曲家の作品です。

初演は1964年10月10日、東京オリンピックの開会式において、
陸上自衛隊音楽隊の副隊長玉目利保三佐指揮による
隊員総勢30名によって初演されました。

このファンファーレとセットで想起される古関裕而作曲の
「(東京)オリンピック・マーチ」とともに全隊が退場すると、

東京音楽隊のハープ奏者演奏による、坂本龍一作曲
映画「ラストエンペラー」のテーマが暗い会場に流れます。

モニターとナレーションでは、自衛隊音楽隊の歴史が紹介されました。
警察予備隊、海上保安庁において式典などの必要性から
音楽隊が発足するまでの経緯を説明したものです。

この時初めて知ったのは、航空中央音楽隊の発足時、
音楽隊準備要員として陸上自衛隊中央音楽隊からまず三人、
移籍して2年後、「臨時航空音楽隊」がその三人をコアに発足し、
現在の名称になったのは昭和57年になってからということです。

ということは最初の三人は陸自から空自にコンバート?
したということになるんですね。

最初の出演は陸上自衛隊中央音楽隊です。
「陸軍分列行進曲」が会場に響きわたったとき、全身に鳥肌が立ちました。

 

同じブルーと白のセレモニー用制服を中央音楽隊が世間に披露するのは
おそらくこれが初めての機会だったのではないかと思われます。

陸自中央音楽隊には、陸自だけが保有する第302警務中隊とともに
国賓等の歓迎行事における演奏を行うという同隊だけの任務があります。
その特別任務のためにこの度衣装も誂えたということなのでしょう。

手前のモニターに総火演のヘリの映像が見えていますが、この間
会場には土をけたてて進む戦車や水陸機動車、レンジャー訓練など
次々と広報映像が流され、音と視覚が多面的に織りなす効果は
それはもうとてつもなく効果的でした。

今回も観艦式と同じく、募集対象者を中心にチケットを捌いたそうですが、
わたしがもし入隊を考えている対象者だったら、これを見ただけで
陸自に入隊を決めてしまったかもしれません(笑)

右肩にはホルンを模した金糸のマークが見えます。
音楽隊の制服としてもなかなかいいものです。

ただ夏の公務にはまさかこれを着ることはないと信じたい。

曲は渡辺俊幸作曲 祝典序曲「輝ける勇者たち」です。

渡辺俊幸氏というと、わたしはNHKの「大地の子」のテーマを思い出します。

中央音楽隊が行う第302保安警務中隊のドリルとの競演は、いわば
「陸軍分列行進曲」に象徴される「ミリタリースタイルの追求」そのものです。

そういえば、第一章のテーマは

「トラディションー伝統と伝承の響きー」

でした。

従来の武道館での演奏の違いで言うと、圧倒的にマーチングが
動きのある、ダイナミックなものになっていたということです。

ブラスバンドの本質から言うと、広い体育館であるここは
彼らにとって見せ甲斐のあるフィールドとなったのではないでしょうか。

三方向に音楽隊を配して中央で儀仗隊が一糸乱れぬドリルを行います。
このシーンは、銃を持ち替えたり構えたり、左脇に抱えて
パートごとに敬礼をしていくというドリルをしているところ。

敬礼の角度のシンクロ具合がすごい・・・。

クライマックスでカンパニーフロント(一列になって全員が前進)
を行うのが音楽隊ではなく儀仗隊とドラムメジャー。

後ろから一線になって進み、前方でドリルを行ったのち、
銃剣を下に向けるポーズでエンディングに備えます。

 

ラストサウンドで銃剣を空に向け、フィニッシュ!

陸自中央音楽隊と第302保安警務中隊、
相変わらず期待を裏切らない質実剛健ながら花のあるステージでした。

 

続く。