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希望の歌、喜びの歌〜令和元年度 自衛隊音楽まつり

2019-12-18 | 自衛隊

 

令和元年度の自衛隊音楽まつり、自衛太鼓が終わると
その盛り上がりは最終章のフィナーレにつながっていきます。

その前に、これも音楽まつり恒例となった、演技支援隊の紹介があります。
大きな楽器の出し入れやステージ途中のセッティング、カラーガードが
使用する小物を手渡すなどという細々とした仕事も行います。

東部方面隊から選抜された隊員12名とそれを率いる隊長からなり、
会場のアナウンスでは、

「自衛隊在職中に一度あるか無いか。
ほとんどの自衛官は経験せずに過ごすこの機会を
自分の進化の糧として変換し、幕を閉じるまで
この音楽まつりの進行を支えてまいります」

と紹介されていました。

最終章のテーマは

「ディスティネーションー到達へのひびきー」

演技支援隊の敷いた赤い絨毯を指揮者がまっすぐに指揮台に向かい、
敬礼をすると、スポットライトには4名の奏者が浮かび上がりました。

曲はモーリス・ラヴェルの「ボレロ」
本来はヴィオラとチェロのピチカートとスネアドラムの刻む、

タン・タタタ・タン・タタタ・タンタン

の繰り返しから入るこの曲ですが、吹奏楽なので
ハープが弦楽器の代わりを行います。

そして、フルートがまずメロディを16章節奏でるのが原曲ですが、
本日のは8章節で別の楽器に交代するという変則アレンジです。

フルート、クラリネットときて原曲には無いユーフォニウム、
そしてトランペットに受け継がれていきます。

リズムの上に執拗にメロディが繰り返されるあいだ、
全部隊はボレロのリズムである三拍子で静かに行進し、
最初のフレーズがリピートされたときには整列を済ませていました。

それと同時に、第302保安警務中隊が音楽まつり参加各国の
国旗を掲げ、入場してきました。

国旗を持つ旗手は赤絨毯の上を、銃を携えた「ガード」は
その横を護衛する形で肩を並べ、進路の両側を
青と白の制服に身を包んだ儀仗隊に守られて歩いていきます。

後ろに見えるコンバス奏者は呉音楽隊からの出張だと思われます。

 

ところでわたしはこの4カ国の旗が入場するのを見るたびに、
4カ国のうち全てが、この旗の下にお互いかつて干戈を交えたことがある、
という事実に思い当たり、感慨を覚えずにはいられませんでした。
アメリカに至っては、他三ヶ国全てが「かつての敵国」です。

平和な時代に生まれるって本当に素晴らしいですね。

曲が盛り上がり、カラーガードがステージ前方に位置すると、
ちょうどそのとき曲は転調し、エンディングへと向かいます。
もちろんステージ用に短くアレンジしてあります。

そのとき、音楽隊以外の全部隊(自衛太鼓、カラーガード、防大儀仗隊)
などが速足で入場してきて、音楽隊の周りに整列しました。

始まる前、どうして太鼓があるのだろう、と思っていたのですが、
このときに謎が解けました。
ラスト4小節、ハ長調に戻ってクライマックスを迎えるところで、
銅鑼とともに自衛太鼓が演奏に加わったのです。

全部で5打、トゥッティ(総員演奏)の大音量の中で
二台の大太鼓の音ははっきりとその存在を主張し、
視覚的にも音楽的にも目を見張るような効果となりました。

そして、このとき、防大儀仗隊の列員が銃を構えています。

ラストサウンドを振り終わった指揮者が、挙げた両手のうち
左手だけをさっと振り下ろすと、儀仗隊の銃が号砲を発射。

銃声は一斉にというわけではなく、
「パパパーン」という感じで三音聴こえてきました。

しかし、この写真を見ると、全部が空包入りではなく、
もしかしたら弾が入っているのは一人置きで、あとは
文字通りの「エア撃ち」なのか?という疑問がわきますね(笑)

「ボレロ」への拍手が止むと「喜びの歌」のメロディが始まりました。
いわずと知れたベートーヴェンの第9交響曲「合唱」の第四楽章です。

今回は何かとベートーヴェンづいていますが、その理由として
ドイツの軍楽隊を招聘するということがあったのでしょうか。

そこで自衛隊の歌手が出場です。
ただし、メロディは「喜びの歌」でも、これはクラシックの人がよく知っている

「♫フロイデ シェーネル グッテル フンケン トフテル アウス エリージウーム」

というあれではなく、

「希望の歌~交響曲第九番~」FULL

という、藤澤ノリマサの曲です。

藤澤バージョンのオリジナル出だしを歌うのは、海自東京音楽隊の男性歌手。
9小節目からは同隊歌手の中川三曹がこれに絡みます。

そのとき、ステージ後方には空自の歌手がペアで。

陸自のペアも後ろでサビの部分(喜びの歌のメロディ)を歌います。

「あなたが笑顔でいられるように みんなが笑顔でいられるように」

日本語にしてみると、なんてこのメロディにぴったりの歌詞なんだろう、
とそのハマり具合には感心せずにはいられません。

どちらかというと日本語歌詞の

「晴たる青空 漂う雲よ 小鳥は歌えり 林に森に」

よりも、なんというか言葉が人ごとではない感じがあります。

演奏をしない部隊は決められた振り付けでステップ踏みながら拍手。

ワンコーラス終わると、後ろにいた空自ペアが前に出てきて二人で歌います。

管楽器奏者は普通に歌が上手い人が多いので、
音楽まつりの歌手も人材に事欠きません。

男性歌手、みなさん本業ではないにもかかわらず大変お上手です。

海自の二人はその間後方にお目見え。

そして陸自の二人が引きついで2コーラス目の最後を。
その間彫刻のように身動ぎもせず立ち続ける302。
「ボレロ」で行進してきて、音楽が止まった時に立ち止まってから
一度も整列し直していないにもかかわらず列に全く乱れがありません。

恐るべし第302保安警務中隊。

ほとんどの人が笑顔なので見ていてこちらが嬉しい。
「エガオノチカラ」です。

どさくさに紛れて? ハイファイブしている人たちもいるよ。

3コーラス目は歌手六人全員で熱唱。
東京音楽隊の中川三曹は得意のハイトーンでオブリガードを。

今年の男性歌手は体型と背丈がわりと揃っていますね。
三人でコーラスグループ(名前は”J’s-ジエイズ-”とかね)組めそう(笑)

カラーガードと自衛太鼓が交互に並んでいます。

最終章の指揮を行うは海上自衛隊東京音楽隊長、
樋口好雄二等海佐。

先般の即位礼に伴う国民祭典では自衛隊音楽隊が大活躍でしたが、
黛敏郎の作曲した「黎明」を指揮したのは陸自中央音楽隊の
樋口孝博一佐、そしてこちらの樋口好雄二佐がファンファーレを指揮しました。

また、そのときの陸海空合同音楽隊での「威風堂々」の指揮は
空自中央音楽隊長松井徹生二等空佐でした。

「希望の歌」が感動のうちに終わりました。

楽器を持っていない人は両手を大きく振って・・。

全出場部隊の退場曲が始まりました。

「君が代行進曲」です。

両手バイバイで退場していく出演部隊。
手前の陸自隊員は「千本桜」のボイスパーカッション奏者じゃないかな?

全員がはけて暗くなった会場に、ピアノの音が流れました。
「ベートーヴェンコラージュ」で演奏した太田沙和子一等海曹です。

東京音楽隊の歌手、中川真梨子三等海曹が歌う
「瑠璃色の地球」が始まりました。

このとき会場のスクリーンに映し出されていたのがこの映像。
この組み合わせにグッときて熱いものがこみ上げてきたわたしです。

暗い会場に蛍のような光が舞い、スクリーンに映し出された
銀河系の映像と相まってうっとりするような効果を醸し出していました。

歌が続く中、最終章の指揮を行った樋口二佐が赤絨毯をまっすぐ歩み・・、

最後のピアノの音と同時に静かに敬礼を行いました。
この瞬間音楽まつりは終了します。

代々木体育館の会場入退場は、二つの入退場口から一方通行で行います。
その点武道館よりも人の流れがスムーズに行われるのですが、
箱が大きいだけに入場者数も大幅に増やしたらしく、
終わってから体育館を出るまでが大変でした。

ようやく会場の端までたどりついたとき、演技支援隊が
これからお仕事らしく整列しているのが見えました。
真ん中に立っているメガネの隊員が確か隊長だったと記憶します。

最後に紹介されていた隊員は全員ではなかったんですね。

最後にフロアをのぞいてみたら、赤絨毯にカーペットクリーナーをかけてました。

最初の日、体育館の外に出た人たちは皆、NHK通りのイルミネーション、
「青の洞窟」のブルーの灯に歓声をあげていました。

今回縁あってここ代々木で自衛隊の奏でる音楽に酔いしれた人々にとって、
イルミネーションでブルーに輝く並木は、
令和最初の音楽まつりを
思い出深く彩る最高の舞台装置となったに違いありません。

 

 

終わり。