タイトル(大まかな訳:中国が世界を揺るがす)を見てなぜか「ちょっと読んでみようか」と思ってしまった本。普段は小説以外の洋書は手に取らないけれど、この本は「外国から見た中国を読んでみるのも面白いかも」と思ったのだと思う。
邦訳も出ていて、邦題は「中国が世界をメチャクチャにする」。
内容に対してこのタイトルはちょっと過激すぎるような気がする。
著者は中国に留学経験のあるイギリス人で、中国語も流暢らしい。
中国に留学した経験がある、ということで、中国びいきで書かれているのかな、と思ったけれど、自分で調査したこと、経験したことが中立の立場から書かれていてとても面白かった。
本自体は2004年の半ばから約1年半くらいかけて調査・執筆されたようで、内容は古く、主に文化革命以降から2000年代初頭の中国が書かれている(ブランドの違法コピー、知的財産権の侵害、中国人労働者に対する搾取、蛇頭による密入国、石油の買い占めなど)。
いろいろな側面から書かれているため、私があまり興味のない章ではわからない単語は放置し、ざくっと大まかな流れをつかんだだけだったけれど、面白かった章は辞書を引きながらでも続きが気になってなかなか本を閉じられなかった。
興味を引いた部分の1つは蛇頭によるイタリア密入国。蛇頭はそのままsnake head。Snake headがsnake bodyを引き連れて密入国の旅をする。著者が実際にインタビューをしたsnake bodyの1人だった中国人は、ロシア国内だったか、ロシアに向かう途中だったか、電車に乗っているときに蛇頭に「危険」の連絡が入り
走行中の電車から飛び降りた
らしい。そのほかの蛇頭の密入国の方法も書かれていてとても興味深かった。
もう1つは
住民票乗っ取り
。大学に合格した、と先生から連絡をもらったのに、いつの間にか不合格になっていて、その後の人生があまりうまくいっていないときに住民票を動かす必要が出てきたので、動かそうとしたら自分の住民票はすでに別の町に移動されていた。そんな時、同じ町に住む同姓同名の女性が出産したようで、その同姓同名の女性の同僚という人ががお祝いをもって自分の実家に来た(自分は出産していない。その町に同姓同名の人はいない)。気になって調べてみたら、高校時代の友人(別の名前)が自分の名前で銀行で働いていた(結婚して出産済み)、という、ミステリーというか、自分の身に起こったらホラーだよね、という箇所は、本当に読むのをやめられなかった(戸籍乗っ取りの宮部みゆき著の「火車」を思い出してドキドキした)。
政治的、経済的、文化的な点からももちろん書かれていて、本当にたまたま読んだ本だったけれど(読むのにも時間がかかったけれど)、読んでよかった本だった。
中国の人口を支えるための資源は中国国内だけでは不十分なので、資源を海外に求め、そのために森林破壊(違法伐採)など、環境への影響が甚大、ということで、著者の言う
人口(の多さ)は中国の矛盾である。一番の強みであるのと同時に一番の弱みでもある。
に納得した。
今回も知らない単語がたくさんあったけれど、印象に残ったのは
repair
。repairといえば、「修理する、直す」がすぐに思い浮かぶけれど、今回、正確な文章は忘れてしまったけれど、「会議の後、ランチに(を、へ)repairした」と読めた。「修理する、直す」は明らかに違うので辞書で調べた。
(大勢で)行く、赴く
とあった。なるほど、「ランチに行った」だけのね…