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 衆議院は11月26日の本会議で、「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法案」を、全会一致で可決し、参議院に送付しました。この「特別措置法案」は、新型インフルエンザワクチン接種での副反応で、障害を負ったり死亡したりするなどの健康被害に対する補償などを定めています。

(追記)

 参議院は11月30日の本会議で、新型インフルエンザワクチン副作用被害補償法を、民主党などの賛成多数で(自民党は欠席)可決、成立させました。健康被害に対する公的補償や海外メーカーの免責を定めており、国内ワクチンの不足を輸入ワクチンで補う態勢が一応整ったことになります。

(追記終わり)

 この法律は、「厚生労働大臣が行う新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済に関する特別の措置を講ずるとともに、新型インフルエンザワクチンの使用による健康被害に係る損害を賠償すること等により特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者等に生ずる損失について政府が補償することにより、新型インフルエンザ予防接種の円滑な実施を図ることを目的とする。」(特別措置法第1条)ものです。

 その第11条には、「政府は、厚生労働大臣が新型インフルエンザワクチンの購入契約を締結する特例承認新型インフルエンザワクチン製造販売業者を相手方として、当該購入契約に係る新型インフルエンザワクチンの国内における使用による健康被害に係る損害を賠償することその他当該購入契約に係る新型インフルエンザワクチンに関して行われる請求に応ずることにより当該相手方及びその関係者に生ずる損失を政府が補償することを約する契約を締結することができる。」とあり、国内生産で不足するワクチンを輸入するときに、副作用が出た場合に免責するよう求めている海外のワクチン製造メーカーに応えるための条文になっています。

 ワクチンなどの医薬品を輸入する場合、安全性を確認する臨床試験(治験)が行われ、5年程度かかります。それでは今回の状況では間に合わないため、「特例承認」という「薬事法」第14条の3の規定が利用されます。「特例承認」は、緊急時に限ってですが、日本と同程度の審査態勢が整った国であれば、承認が可能となる制度です。いままで適用された例はありません。

(参考) 薬事法第14条の3 第14条の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、次の各号のいずれにも該当する医薬品・・・である場合には、厚生労働大臣は、同条第2項、第5項、第6項および第8項の規定にかかわらず、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、その品目に係る同条の承認を与えることができる。
 一 国民の生命及び健康に重大な影響を与える惧れがある疾病の蔓延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品・・・であり、かつ、当該医薬品・・・の使用以外に適当な方法がないこと。
 二 その用途に関し、外国(医薬品・・・の品質、有効性及び安全性を確保する上で本邦と同等の水準にあると認められる医薬品・・・の製造販売の承認の制度又はこれに相当する制度を有している国として政令で定めるものに限る。)において、販売し、授与し、並びに販売又は授与の目的で貯蔵し、及び陳列することが認められている医薬品・・・であること。


 イギリスの大手薬品メーカーのグラクソ・スミスクライン社のワクチン(製品名:Arepanrix)は9月末にヨーロッパで承認され、欧州連合(EU)加盟の27カ国で販売が認められています。国産メーカーのものと同じく鶏卵でインフルエンザのウイルスを増殖させますが、国産のワクチンでは用いない「アジュバント」と呼ばれる免疫増強剤が添加されています。厚生労働省はイギリスのグラクソ・スミスクライン社とスイスのノバルティスファーマ社(Novartis Pharma)の2社とおよそ5,000万人分の新型インフルエンザワクチンについて、購入契約を締結しています。この輸入ワクチンは、高校生と高齢者(65歳以上)への接種が予定されています。

 新型インフルエンザ予防接種を受けたことによって、
  (1)疾病が生じ、政令で定める程度の医療を受ける者には、「医療費および医療手当」
  (2)政令で定める程度の障害の状態にある18歳未満の者を養育する者には、「障害児養育年金」
  (3)政令で定める程度の障害の状態にある18歳以上の者には、「障害年金」
  (4)死亡した者の政令で定める遺族には、「遺族年金または遺族一時金」
  (5)死亡した者の葬祭を行う者には、「葬祭料」
が給付されます(特別措置法第4条、これは「予防接種法」の第12条と、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」の第16条と同じものです)。

 「厚生労働大臣は、自らが行う新型インフルエンザ予防接種を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該新型インフルエンザ予防接種を受けたことによるものであると認定したときは、次条及び第5条に定めるところにより、給付を行う。」(「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」第3条)

 「市町村長は、当該市町村の区域内に居住する間に定期の予防接種又は臨時の予防接種を受けた者が、疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した場合において、当該疾病、障害又は死亡が当該予防接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、次条及び第13条に定めるところにより、給付を行う。」(「予防接種法」第11条)

 「独立行政法人医薬品医療機器総合機構は、医薬品の副作用又は生物由来製品を介した感染等による健康被害の迅速な救済を図り、並びに医薬品等の品質、有効性及び安全性の向上に資する審査等の業務を行い、もって国民保健の向上に資することを目的とする。」(「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第3条」)「機構は、第3条の目的を達成するため、次の業務を行う。一 医薬品の副作用による健康被害の救済に関する次に掲げる業務 イ 医薬品の副作用による疾病、障害又は死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこと。二 生物由来製品を介した感染等による健康被害の救済に関する次に掲げる業務 イ 生物由来製品を介した感染等による疾病、障害又は死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこと。」(同法第15条)

 定期の予防接種による健康被害の救済措置における給付の額は、「予防接種法施行令」において規定されています。「予防接種法」に規定する一類疾病(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ(急性灰白髄炎)、風疹、麻疹(はしか)、日本脳炎、結核)については、
(1)障害児養育年金(施行令第12条):1,531,200円(障害の状態が政令別表第一に規定する一級の場合)、1,225,200円(二級の場合)
(2)障害年金(施行令第13条):4,897,200円(一級の場合)、3,915,600円(二級の場合)、2,937,600円(三級の場合)
 (いずれの年金についても、一定の場合には、介護加算額の加算及び特別児童扶養手当等に係る減算が行われる)
(3)死亡一時金(施行令第17条):42,800,000円(法による障害年金の支給を受けた場合には受給期間に応じて減額される)

 予防接種法に規定する二類疾病(インフルエンザ(65歳以上の者、60歳以上65歳未満の者であって、心臓、腎臓、または呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活行動が極度に制限される程度の障害を有する者およびヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常の生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者))については、
(1)障害年金(施行令第21条):2,720,400円(一級の場合)、2,175,600円(二級の場合)

 インフルエンザワクチンの接種など予防接種法に基づかない予防接種による健康被害については、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」に規定する医薬品の副作用による障害等の場合には、同法及び「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法施行令」に定めるところにより、副作用救済給付が行われることとなります。その給付の額は、同令において規定されており、予防接種法による給付額の55%程度(9分の5)の給付額になります(遺族一時金は6分の1程度)。
(1)障害児養育年金(施行令第9条):850,800円(障害の状態が一級の場合)、680,400円(二級の場合)
(2)障害年金(施行令第7条):2,720,400円(一級の場合)、2,175,600円(二級の場合)
(3)遺族一時金(施行令第11条):7,135,200円(同法による遺族年金の支給がなされていた場合には当該支給額相当分が減額される)
(4)遺族年金(施行令第10条):2,378,400円

 特別措置法第5条には、「給付の額、支給方法その他給付に関して必要な事項は、政令で定める。」とあり、また、「前条第1号から第4号までの政令及び前項の規定に基づく政令は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第15条第1項第1号イに規定する副作用救済給付に係る同法第16条第1項第1号から第4号までの政令及び同条第3項の規定に基づく政令の規定を参酌して定めるものとする。」とあります。

(追記)

 新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法施行令(平成21年12月4日政令第277号)

(1)障害児養育年金(施行令第4条):850,800円(障害の状態が一級の場合)、680,400円(二級の場合)
(2)障害年金(施行令第5条):2,720,400円(一級の場合)、2,175,600円(二級の場合)
(3)遺族一時金(施行令第10条):7,135,200円(同法による遺族年金の支給がなされていた場合には当該支給額相当分が減額される)
(4)遺族年金(施行令第8条):2,378,400円(10年を限度として支給する)


(追記終わり)

 カナダの保健当局は11月24日、ワクチン接種で深刻なアレルギー反応である、アナフィラキシー・ショックが6例起こったと発表しました。ワクチン接種でアナフィラキシー・ショックを起こしたケースのすべてが、11月2日に配布されたグラクソ・スミスクライン社のワクチン「Arepanrix」(製品名)の特定のロット(17万2千人分)で起こったようです。先行する11月20日の報道では、カナダ中部のマニトバ州で、イギリスの大手医薬品メーカー、グラクソ・スミスクライン社の製造した10月出荷分の一部のワクチンに通常とは異なる頻度で重い副反応(serious and immediate anaphylactic reactions、アナフィラキシー・ショック)が発生したので、グラクソ・スミスクライン社は接種を中止するように要請したとなっていました。アナフィラキシー・ショックの発生率が通常は10万件に1件ほどのものが、その10月出荷分は2万件に1件ほどと発生率が5倍になっているようです。

 厚生労働省は11月26日、カナダにおいてグラクソ・スミスクライン社の新型インフルエンザワクチン「Arepanrix」による副反応問題の調査を、11月30日にも開始すると発表しました。厚生労働省は「Arepanrix」の3,700万人分の購入契約を締結していることから、この調査結果は「特例承認」の予定に影響することになります。

 第2回厚生労働省政策会議(平成21年10月19日)議事要旨から

 出席議員:死亡した場合の救済額について、定期1類接種なら4,280万円であるのに対し、新型インフルエンザの接種では700万円程度となっていることの妥当性はどう考えるのか。
 厚生労働省:700万円が妥当な水準か議論が必要と考えるが、季節性インフルエンザ等の他のワクチンとの整合性も検討しなければならない。今回は早急な法律の成立が求められていることもあり、次の予防接種法改正の際に、他のワクチンと一緒に検討したい。

 出席議員:今回の接種は国が責任を負うとのことだが、被害者の損害賠償訴訟を制限するということか。
 厚生労働省:被害者の損害賠償訴訟を制限するのではなく、訴訟となれば国の事業として国が賠償責任を負う。医師等に対する訴訟であれば国が求償を求めない限りは国が支払うということである。輸入ワクチンについては、ワクチン使用により生じた健康被害に関する賠償について、政府が補償する契約を締結できることとする。

 出席議員:新法は免責ではないという理解で良いか。
 厚生労働省側:被害者が新法に基づく給付額に不満なら、損害賠償訴訟を起こすことは可能である。その場合、輸入ワクチンについての製薬会社に対する訴訟であれば、国が支払いを行う。医師や医療機関に対する訴訟であっても、医師等に故意や重大な過失があれば、国が求償を求める可能性があるが、それ以外の場合は国が支払う。

(追記)

 第2回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会が平成21年11月30日(月)に「都道府県会館」(東京都千代田区平河町2-6-3)で開催されます。

(追記)

 新型インフルエンザ感染者の死亡については、11月30日現在で、82例目となってしまっています。神奈川県藤沢市の2歳の男児が亡くなってしまいました。基礎疾患はなかったようです。ご冥福をお祈りいたします。

11月30日(月) 2:48 発熱により医療機関受診 38.9度。タミフル処方され、帰宅
朝食を摂り、昼前に睡眠
13:00頃 40.4度
14:16 救急搬送により医療機関到着。心肺停止状態 37 0度
15:26 死亡確認
20:35 PCR検査により新型インフルエンザの感染確認

            (この項 健人のパパ)

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