フランスには、「Relais desserts(ルレ・デセール)」という菓子職人による協会があります。パティシエおよびショコラティエの意見交換の場として、1981年に設立されています。設立から30年以上が経過していることになります。現在の協会長(Président Relais Desserts)は、フォンテーヌブローにアトリエ及びサロン・ド・テを持つ「フレデリック・カッセル(Frédéric Cassel)」氏です(2003年就任)。この協会の初代協会長は、1972年、パリに「ペルティエ」をオープンさせた「ルシアン・ペルティエ(Lucien Peltier)」氏でした。
フランスでパティシェとして初めて就職したお店で待っていた杉野英実シェフの仕事は、安い外国人としての労働力だったそうです。そんなある日、パリでルシアン・ペルティエ氏のお菓子を見たことで転機が訪れたというお話でした。パリで評判になっていた新進気鋭の天才と言われた「ルシアン・ペルティエ」のケーキに衝撃的に魅せられた杉野英実シェフは、4年かけて念願をかなえ、「ルシアン・ペルティエ」のお店に働かせてもらうことになります。
今は、パリジャンも旅行者の日本人である私達に、親切に英語を話してくれる時代がやってきましたが、私が上の息子とパリ旅行に行った10年前位は、本当は英語で話せる人もなかなか話してもらえませんでした。パリで日本人がよくかかるという「パリ症候群」が理解出来る気がしました。「パリ症候群(Paris syndrome)」とは、現地の習慣や文化などにうまく適応できずに、精神的なバランスを崩し、鬱病に近い症状を示すことを言います。それが、20年以上前であれば、さらにさぞかし大変だったのではないでしょうか。
杉野英実シェフの若き心は、ルシアン・ペルティエ氏の作品に出会い、幾度も幾度も手紙を出して、彼の元で勉強したいという情熱を伝え、そしてその夢を実らせました。そして、今の杉野英実シェフの基礎を育てたルシアン・ペルティエ氏。すごい出会いだと思います。杉野英実シェフは、2000年、ルレ・デセールのアジア初の会員となります。いまでは、「ジャック(Pâtisserie Jacques)」のオーナーパティシエの「大塚良成」氏、「オリジンーヌ・カカオ(Origines Cacao)」のオーナーショコラティエの「川口行彦」氏、「エーグル・ドゥース(Aigre-douce)」のオーナーパティシエの「寺井則彦」氏(以上、Relais Desserts au Japon)、そして、「青木定治」氏(Relais Desserts en Île-de-France)も会員です。
パリを旅していると、素人の私でさえ、心ときめくスイーツがいろいろとお店にあります。街角の小さなお店で買ったイチゴのスイーツを日本で留守番している子供達に食べさせたいと思いました。日本の有名店のお値段よりかなり安いのですが、本当においしかったのです。泊まったプチホテルのフランスパンは、今まで食べた日本のどのお店のフランスパンよりも私の口に合っていました。パリはおいしいものの宝庫です。
お菓子作りは、非常に体力のいる仕事です。杉野英実シェフには体に注意をしてがんばっていただきたいと思います。