Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

危険なメソッド

2012年11月08日 | 2010年代 欧州

危険なメソッド(原題:A DANGEROUS METHOD)

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:マイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、キーラ・ナイトレイ、ヴァンサン・カッセル


スイスの精神科医ユングのもとに美しき精神病患者ザビーナが連れられてきた。
彼は、この患者にフロイトの提唱する対話療法を試みることにして、彼女に親しく接し、
人間性を尊重し、治療を開始した。
ザビーナは、子供の頃から父親に暴力を受けており、更にはその暴力に快感を感じていたことを告白する。
症状は改善され、医師志望だったザビーナは大学に通いだし、精神科医を目指すようになった。

数年後、ユングは彼女の症例をまとめたレポートを持って、オーストラリアのフロイトを訪ねる。
フロイトは、ユングを自身の後継者とみて、親しく迎え入れるのだが・・・
史実をもとに、その後のユングとフロイトの決別、ザビーナとの一時の愛と別れまでを描く。

精神患者ザビーナ役のキラー・ナイトレイは、下あごをつきだし、目をひんむいての大熱演。
病魔を隠しもちながらも精神科医を目指していく凛とした姿も素晴らしかった。
しかしながら、リビドーの実質を知りたいと盲目的にユングを誘惑するザビーナに対し、
「リビドーの自制によって己の精神を病んでいく」というフロイトの理論を盾に
本能をむき出しにしていくユングという醜悪な事態が、あまりにもザビーナ役のキラー・ナイトレイが
美しすぎるが故に、単なる恋物語にみえてしまうのです。



もっと醜く、ひどく、目をそむけたくなるような泥沼を描いてほしかった。
抑制を解放したにも関わらず、お互いの精神を蝕んでいくような矛盾を。
まあ、わたしの好みの問題です。

公園や邸宅の庭など風景も美しく、女性たちの着る白を基調としたワンピースも毎回見とれるほどに素敵だったし
きれいな英語の発音(フロイトはドイツ語で話してこその頑固親父っぷりがでると思うのですが←超偏見)で、
清潔感のある、調和のとれた創り。
この世界では、あくまで無邪気で、無自覚な男としてのユング。
フロイト、ザビーナとの別れが、彼を更なる内面性の研究へと誘い、神秘主義へと向かわせたのかもと、
思わせるような途上の物語でした。

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