Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

MyFFF2017閉幕

2017年02月13日 | フランス映画祭

9の長編、16の短編が出品された2017年の「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」は
今日がラストデイ。今年も面白かった〜! 

ただ・・・いわゆる大人向けというか、露骨な表現の多い作品が多くて、ちょっとコメントしづらいなあ
ってものも。年々、規制が甘くなってきているよーな気がしないでもない。社会的な倫理は当然、変化して
いくものだろうけれど「慣らされていく」感覚もある。

反対に、子供たちが主役となった作品群は、今のフランス社会に蔓延する閉塞感もなんのその、敏感に
空気を感じつつも、それを打ち破る奔放さがあって頼もしかった。あと、兎にも角にもラブリーだった。
「僕のまわりの悪魔(Les Démons)」のフェリックスが聞きかじりの知識から、エイズになったかも、と
勘違いしてクローゼットの中で泣いちゃうとことか、「転校生(Le Nouveau)」のブノアがジョアンナに
夢中になって上の空で聞く授業が「2ジョアンナを同じ数のジョアンナでジョアンナします。答えはジョアンナ
ですね」なんて聞こえちゃったりするところなんて、たまらなくかわいい。

片割れを探し続ける3人3様の思いが乱れる「奥深い水の中で(Dans les eaux profondes)」、洞窟の中で
管理された生活をおくる鳥たちを描く「影と翼(D'ombres et d'ailes)」からは、ふわりと流れてくる秋風の
ような悲しみを感じたし、ギャングの手下たちのすれ違い会話がコントみたいな「ダーン・ディール(Une
formalité)」や「パニック・イン・ザ・ヴィレッジ」の最新作は文句無しに爆笑だった。

多様な作品に心震えた約1ヶ月間。これからは、MyFFFの無い11ヶ月。。。早く来年にならないかしら。

アイム・オール・ユアーズI(Je suis à vous tout de suite)

2017年02月07日 | フランス映画祭

今月13日までwebにて開催中!!
フランス映画にたっぷり浸れるマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2017(MyFFF)にて
http://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/
長編「アイム・オール・ユアーズI(Je suis à vous tout de suite)」を鑑賞。

コメディ、だよね?
明るくてテンポよくてエロいけど、それだけじゃなくって、かなり複雑。

主人公は、いつも背中がぱっくり開いたドレスやミニスカートを好んで身につけるアナ。
父はアルジェリア人でイスラム教徒なのだが、フランス生まれの彼女はいわゆる禁欲的ではない。
困っている人を放っておけず、慰めるために自らの体を差し出すことも厭わない。
というか、他の方法を知らない。嫌と言えず、すべてが相手の言いなりの彼女。

そもそも両親ともに、お人好しの家庭で育った。食材店を営む父は客の要望にすべて応えようと奮闘し、
母は近所の人たちの心理カウンセラーを無料で引き受ける。
「ノン」を習わず育ったアナは、体を求められても断れなかった。
むしろ、それが誰かの慰めになることを知り、そこに自らの価値を見出そうとする。
アナの弟はそんな姉に反発し、よりイスラム教徒らしく、アルジェリア人らしくあろうと傾倒していき
姉弟は確執を深めていく。生死を左右する腎臓の提供を拒むほどに。

ちょ、盛り込みすぎ! 何が正解なのか、わからなくなるよ。
アナが他人にすべてを差し出しながらも、自らの人生に納得しているようにみえるところが余計に
混乱させられる。

自分の生き方を納得させるものが、その人のアイデンティティーになるのかな。
多くの人は「その人がそれでいいなら」と思うだろう。
自分に真剣に向き合ってくれる人を大切にしなければね。


家族の食卓(Préjudice)

2017年02月01日 | フランス映画祭

フランス映画オンライン祭!「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2017」にて
http://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/
ベルギー招待作品「家族の食卓(Préjudice)」を鑑賞。

ひどい。ひどいよ。
胸が苦しくなる話だけど、音楽は美しく素晴らしかった。

印象的だったのは、雨の庭のシーン。
バーベキューの最中、突然激しく雨が降りだした。
セドリックはひとり食卓に座ったまま。
他の家族はワインやお皿を持って、家の中に駆け込んでいく。
シンバルやドラムが鳴り響き、ビートが激しい雨の音に溶けていく。

みんな、食卓から離れていく。
セドリックだけが雨に打たれる。誰も守ってくれない。
辛い。辛い。辛い。
精神障害を抱え、家の中に閉じ込められたセドリックは、それゆえ家族に依存している。
母は、30歳も過ぎた大人のセドリックが声もかけないと家の中に入ろうとしないのに思い嘆く。
誰も彼も辛いと訴えてる。
止まない雨もあるのだ、と思う。