Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

オン・ザ・ロード

2015年03月24日 | 2010年代 欧州

オン・ザ・ロード(原題:On the Road)

2012年 フランス=イギリス=アメリカ=ブラジル
監督:ウォルター・サレス
製作:ナタナエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール、レベッカ・イェルダム
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、ジェリー・リーダー
脚本:ホセ・リベーラ
出演:サム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、
キルスティン・ダンスト、ヴィゴ・モーテンセン、エイミー・アダムス、
トム・スターリッジ、アリシー・ブラガ、エリザベス・モス、ダニー・モーガン

 
 メリールウ メリールウ
 君はどうして国中を巡っている?
 エド、もらったばかりの女房は
 どこへやったんだ?
 サル、そこに君の欲しいものは
 あるのかい?

 みんなして、くすくすと笑う。
 ディーンは、みんなの視線を受けて満足げに微笑むだろう。
 彼に不安はない。モラルもマナーもへったくれもない。
 その場かぎりの愛を、自由を、貪り尽くすディーン。
 極端な熱情に惹きつけられたサルは、
 自ら望んで、放浪を続ける暮しに身を委ねる。

 ビート・ジェネレーションを代表する作家ジャック・ケルアックの自伝的小説
 「路上」の映画化、というか「路上」の余韻の映像化だろうか。
 すべてはノスタルジックで、泡のような儚さも感じる。

 だって、この作品を観た若者たちがこぞって路上へと飛び出すだろうか。
 あり金をつかんでブラジルへ押し寄せるだろうか。
 シカゴは赤く燃えているだろうか。

 否、そんな時代は、もはや遠い彼方にある。
 失われた過去が、さらに離れていくのを黙って見送るだけ。
 だからこそ、変わらないままのディーンが一人取り残されていく姿は
 胸をかきむしられるように切ない。

爆裂都市 BURST CITY

2015年03月07日 | ロック映画、映像

爆裂都市 BURST CITY


1982年 日本
監督:石井聰亙
製作:秋田光彦、小林紘
脚本:石井聰亙、秋田光彦
出演:陣内孝則、大江慎也、伊勢田勇人、鶴川仁美、池畑潤二、戸井十月、町田町蔵、泉谷しげる、
スターリン、コント赤信号、上田馬之助、麿赤児、大林真由美、平口広美、吉沢健

 
 ニューウェーブシーンの先駆けとなった石井聰亙監督が歪ませる激烈パンクSF映画。画面からはみ出ん
ばかりにエネルギッシュで支離滅裂な狂気の波に呑みこまれる。

 近未来の、荒廃しきった都市。夜な夜なライブにレースに熱狂するロックバンド、取り締まりを強化する
警察、原子力発電所の建設を進める暴力団に過酷労働に耐える下層民たち。それぞれがぶつかり合い、抗争
の種は尽きない。

 映画のキャッチコピー「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。」にもある通り、暴動そのもの
が主役。目まぐるしくシーンが変わり、兎に角にも暴れ続ける。陣内孝則&大江慎也がタッグを組んだバトル
・ロッカーズのライブには、ザ・スターリンが「マッド・スターリン」として往時のパフォーマンスまんまに
乱入し、轟音を響かせ動物の臓物を観客や警官らに投げつけていく。ルポライターの戸井十月、現在は作家と
しての活躍が目立つ町田町蔵が演じるフリークスの兄弟は、言葉を発しず呻き声だけで復讐を誓う。不穏な
気配が漂う中で、泉谷しげるは少年との愛欲に溺れていく。誰も彼もが爆発寸前!

 どこまでがマジでどこからがふざけてるのか、はたまた近未来的表現なのか、サイケか、前衛か、てんで
わからない。ただただロックンロールが鳴ってる瞬間は凄まじくカッコいいってことだけが伝わって来る。
それ以外の世界はクズだ。腐りきった世の中で、最下層の者たちが見る希望の光! ロッケンロー!!