Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

パンク侍、斬られて候

2018年07月06日 | ロック映画、映像
パンク侍、斬られて候

2018 日本
監督:石井岳龍
製作:若泉久央
製作総指揮:西澤力、笹岡敦
脚本:宮藤官九郎
出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、
若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司
撮影:松本ヨシユキ
編集;武田峻彦
音楽:森俊之
美術:林田裕至


パンク好きなら外せない映画。
それ以外の人は、遠巻きに指をくわえていてほしい。
この興奮、わかってたまるか、と思ってしまう。

どのシーンもキャスト全員が振り切ってて、ずっと心臓がバクバクいってた。
どこまで行くのか、どこへ行くのか。
うんうん、宇宙が砕けたね! そうこなくっちゃ。

もっと終焉に向けてぐっちゃんこに壊すかと思ったけれど
想定よりは十分に言葉や映像を尽くして、また役者陣の怪演を通じて
それぞれのキャラの背景を描いている。
がんじがらめの縦社会で行きていかなければならない侍たちはもちろん
念動力を操るバカのオサムも、偽教祖となる茶山も悲しかった。
それぞれの深い悲しみを弾き飛ばしてくれて、これぞパンクだった。

COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック

2015年07月04日 | ロック映画、映像

COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック (Cobain – Montage of Heck)

2015年   イギリス
監督・脚本・製作:ブレット・モーゲン
製作総指揮:フランシス・ビーン・コバーン

 90年代を代表するロックアイコンであり、ロック史に革命をあたえ、
「It's better to burn out than to fade away(錆びつくより今燃え尽きる方がいい)」と
拳銃自殺をした“Nirvana”のカート・コバーン。ドキュメンタリーの名手ブレット・モーゲン
監督が、遺された日記やアート作品、幼少の頃のホームビデオ・写真、未発表楽曲にプライベ
ートな未公開映像など膨大な資料をもとに、カート・コバーンの素顔に迫る。


 小さい頃のカートがたまらなくキュート!! 何これ、連れ去りたい。 

 金髪碧眼、やんちゃで、いつもニコニコ笑顔をふりまきーああ、もう鼻血が止まりませんー、
周りのことを気づかう優しい子だったという。しかし、ほのぼの映像満載で綴られる幼児期とは
打って変わり、両親の離婚によりショックを受け、落ち着きがなく扱いづらい子どもと見なされ
るように。その頃の様子をどこか淡々と語るカートの母親、父親、義母、妹・・・。家族親類の
間を泊まり歩き、どこにも居つくことができなかったカート。ドラッグにはまって憂さを晴らし、
頭の中に次から次に浮かぶイメージやアイデアをノートに書き連ねる日々。

 友人クリス・ノヴォゼリックと出会い、はじめたバンド“Nirvana”のメジャー1作目「ネヴァー
マインド」は大成功を収め、全世界で注目を浴びる存在となった。一気に生活が変わり、
メディアが打ち出す虚像やメジャー市場に戸惑うカートたち。
 
 ここで臨場感あふれるライブ映像が続き、しっかりとNirvanaの世界に引き込んでくれる。
 インタビューでは言葉を選ぶあまり、詰まって下を向きがちなカートに対し、「音楽っていう
のは個人的な体験なんだよ」と既にマスコミやファンとの距離感をつかんでいるデイブ・
グロールが興味深い。

 そして、ロックバンド“Hole”のギターボーカルであり、当時からゴシップクィーンだった
コートニー・ラヴとの熱愛、結婚。カメラを気にする様子もなく、家庭生活の中で撮られた
映像には、くつろいだ表情で愛を語る二人の姿が満載されている。赤ちゃんが産まれてからは、
臆面なく子煩悩な父親っぷりを見せるカート。家族に向けるその笑顔は、幼い頃のカートの
天使的なニコニコ顔と同じ。とてもとても幸せな気持ちになる。ただ、ヘロイン漬けのまま
出産をしたコートニーは世間から相当のバッシングを受け、親権をめぐっての裁判も。

 悪女の評判名高いコートニー・ラヴのインタビューはブレてなくていいよなあ。飾らなくて、
素直な人だと思う。

 インタビューをごく身近な人だけに絞り、プライベート映像をたっぷりと使用した、この映画は
今まで知らなかったカート・コバーンの実像を見せつけるものだろう。死して尚、時代のヒーローに
祭り上げられた彼の素顔に肉薄するドキュメンタリー決定版☆ってゆーのは、間違いないけれど、、、
けどさあ一方で、わかられてたまるかよ!! とも思う。
 
 親がそうだったから、とか、妻がこうだから、とか、マスコミのせい、とか理詰めすんな! 
 万人が納得できるための理由なんて欲しくない。そんな怒りがもうもうと湧いてくるのは、やはり、
わたしの中にもカート・コバーンがいるからなんだろうな、と思う。

   

ソレダケ that's it

2015年06月15日 | ロック映画、映像

ソレダケ that's it


2015年 日本
監督:石井岳龍
製作:重村博文、久保田康、小松賢志
スーパーバイザー:大里洋吉
プロデューサー:大崎裕伸
エグゼクティブプロデューサー:長谷川英行、川口貴史、近藤順也、渡邊恭子
脚本:いながききよたか
出演:染谷将太、水野絵梨奈、渋川清彦、村上淳、綾野剛


 内容と関係ないけど、劇場でチケット買うときや入るときに
「ソレダケで」「それだけ、ですか?」「それだけです」という遣り取りがおもしろかった。

 「爆音上映」って、どうも売り文句だけだったようで、特別措置はなし。
 ぐわんぐわんのデッカい音で、観たかったなー。

 
 石井岳龍監督が、ロックバンド“ブッチャーズ”のオファーを受け、楽曲の世界観をドラマ化したロック映画。

 ストーリーは、大黒砂真男が戸籍情報のつまったハードディスクを盗み取ったところから始まる。大黒は、
「殺したい男」の居場所と引き換えにディスクを渡すと、恵比寿に持ちかけるが、生半可な手が通用するはず
もなく、大黒は恵比寿に監禁され、そこで風俗嬢の阿弥と出会う。大黒と阿弥は協力して脱出し、くされ縁の
ように行動を共にするようになるが、大黒はそこで新たな殺意を見出し、阿弥は二人で暮らす幸せな未来を
夢見るようになる。

 どちらの考えも破綻しているのだけど、そのまま突き進んでいく愚かさ、無謀さ、若さ。
 これが20年前に制作された映画だったなら、希望に満ちた「その先」を阿弥と一緒になって追いかけれた
のだろうか。今の世の中じゃ底辺の暮らしなんてありふれすぎてて、逆にそこまで思い詰めるってことに
ピンとこない。
 
 まあだからこそ、後半はなしくずし。ラスボスのアジトに踏み込んでからは、どーでもよくなるっていう、
デストロイヤー的展開。綾野剛も染谷将太もぶっ壊れててよかった。

爆裂都市 BURST CITY

2015年03月07日 | ロック映画、映像

爆裂都市 BURST CITY


1982年 日本
監督:石井聰亙
製作:秋田光彦、小林紘
脚本:石井聰亙、秋田光彦
出演:陣内孝則、大江慎也、伊勢田勇人、鶴川仁美、池畑潤二、戸井十月、町田町蔵、泉谷しげる、
スターリン、コント赤信号、上田馬之助、麿赤児、大林真由美、平口広美、吉沢健

 
 ニューウェーブシーンの先駆けとなった石井聰亙監督が歪ませる激烈パンクSF映画。画面からはみ出ん
ばかりにエネルギッシュで支離滅裂な狂気の波に呑みこまれる。

 近未来の、荒廃しきった都市。夜な夜なライブにレースに熱狂するロックバンド、取り締まりを強化する
警察、原子力発電所の建設を進める暴力団に過酷労働に耐える下層民たち。それぞれがぶつかり合い、抗争
の種は尽きない。

 映画のキャッチコピー「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。」にもある通り、暴動そのもの
が主役。目まぐるしくシーンが変わり、兎に角にも暴れ続ける。陣内孝則&大江慎也がタッグを組んだバトル
・ロッカーズのライブには、ザ・スターリンが「マッド・スターリン」として往時のパフォーマンスまんまに
乱入し、轟音を響かせ動物の臓物を観客や警官らに投げつけていく。ルポライターの戸井十月、現在は作家と
しての活躍が目立つ町田町蔵が演じるフリークスの兄弟は、言葉を発しず呻き声だけで復讐を誓う。不穏な
気配が漂う中で、泉谷しげるは少年との愛欲に溺れていく。誰も彼もが爆発寸前!

 どこまでがマジでどこからがふざけてるのか、はたまた近未来的表現なのか、サイケか、前衛か、てんで
わからない。ただただロックンロールが鳴ってる瞬間は凄まじくカッコいいってことだけが伝わって来る。
それ以外の世界はクズだ。腐りきった世の中で、最下層の者たちが見る希望の光! ロッケンロー!!


ワン・プラス・ワン

2014年09月20日 | ロック映画、映像

ワン・プラス・ワン(One Plus One)

1968年 イギリス
監督・脚本 : ジャン=リュック・ゴダール
製作総指揮 : エレニ・コラード
出演:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズ 、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマン、
アンヌ・ヴィアゼムスキー、イェーン・クォーリア、フランキー・ダイモン、ダニー・ダニエルズ

 
 1967年に商業映画との決別を告げたゴタールは、パリ五月革命の最中、1968年5月19日カンヌ映画祭へ乗り込んで
賞の選出を中止に追い込んだ。「政治の時代」に身を投じたゴタールは、すぐさまアメリカに渡り、ベトナム反戦運動
をテーマにしたD・A・ペネベイカーとの共同監督作『ワン・アメリカン・ムービー』の撮影をはじめ、6月初旬には
ロンドンにて「ワン・プラス・ワン」のため、ザ・ローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮影。

 さまざまなプロジェクトを同時進行で動かしていた当時のゴタールが撮った本作は、過激な政治思想を唱える人々の
寸劇と、ストーンズの「Sympathy For The Devil~悪魔を憐れむ歌~」の制作過程が交互に映し出され、世界の至る
ところで高まりを増していた異常な革命の熱を映像化しようとした実験的な作品。
 ストーンズのレコーディングは試行錯誤の中で完成せず、未完であることに意味を求めたゴダールは、製作会社により
「Sympathy For The Devil」がエンディングに挿入されたことに大激怒し、「作品が盗まれた!!」と発言。ただ
ゴタール自身も主義をまげて(今後の活動資金を集めたいがために)爆発的な人気バンドを起用し、イギリス資本で全編
英語で撮ったという商業的な動きもあり、何かと複雑な事情が入り交じっている。

 私の印象でいえば「作品が盗まれた」のは製作サイドによってではなく、ザ・ローリング・ストーンズによって、だと思う。

 なんといっても、名曲「Sympathy For The Devil~悪魔を憐れむ歌~」が創られていく過程がつぶさに眺められるなんて、
ほんとうに光栄だし、凄いことだ。
 ミック・ジャガーはスタジオの中心にいて、何度も出だしを唄いながら、1つ1つ音を拾い集めて曲を形づくっていく。
キースはリラックスした様子で、フレーズをいくつも試している。アコギを抱えたブライアンは衝立の奥。バンドからも、
この世からも去っていってしまう彼の1年前の貴重な姿が捉えられている。

 リズムが固まったところで、レコーディングメンバーはマイクを囲み「フッ!フー!」という印象的なコーラスが
繰り広げられる。これが政治思想満載のショートフィルムと組み合わせられると
 ブラック・パワーだって フッ!フー! リロイ・ジョーンズの『ブルースの魂』だと? フッ!フー! 
 ベトナム反戦 フッ!フー! アンヌ・ヴィアゼムスキー フッ!フー!  ヒットラーの『わが闘争』 フッ!フー! 
 ポルノ書店店主 フッ!フー! 毛沢東主義 フッ!フー! 
 てなもんで、これぞPaint It Black! すべての世界がストーンズによって塗りつぶさていく。
 ざまあみろ、ロックンロールを何かの道具に使おうだなんて、ちゃんちゃらおかしいのだ。
 この曲自体、革命なんだよ!! と思うのだけど、
 その一方で、映像には出てきていないはずの、ゴタールのいらついた顔が映画の全編にチラついてチラついて
 ゴタールもまた、この映画の主役だよなあと感じる。