Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2015年04月15日 | 2010年代 米

 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(原題: Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance)


2014年 アメリカ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、アーノン・ミルチャン、ジョン・レッシャー、ジェームズ・W・スコッチドポール
製作総指揮:クリストファー・ウッドロウ、 モリー・コナーズ 、 サラ・E・ジョンソン
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ジャコボーン、アーマンド・ボー、
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
出演:マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エマ・ストーン、エイミー・ライアン、ナオミ・ワッツ、ザック・ガリフィアナキス、アンドレア・ライズボロー

 レイモンド・カーヴァーの小説を読んでいる時、描かれているそちら側が現実で、実は読んでいるこちら側が虚構であるかのような、錯覚に陥る時がある。短編「愛について語るときに我々の語ること」は、キッチンで2組の夫婦がジンを飲みながら愛とは何かを延々と語り合う話だ。いくら脚色を加えるとはいえ、この言いようによっては地味な、受け手の心の奥底で展開されるような物語を夢の舞台ブロードウェイで上演しようってこと事態が荒唐無稽に思えてしまう。

 案の定、周りの人々からも「なぜカーヴァーなの?」と訊かれまくるリーガン。リーガン・トムソンは、かつてスーパーヒーロー「バードマン」役でトップスターの名を欲しいままにしていたが、それ以降のヒット作は無かった。再起をかけてブロードウェイへの進出を自ら演出・主演の舞台で目論むのだが、代役でやってきた個性派俳優マイクの言動に振り回されっぱなし。プレビューを観た批評家たちからは散々こき下ろされ、同僚(女優)の気安さから手を出した恋人には妊娠を告げられ、実娘は身勝手きわまりないマイクに惹かれている様子。次から次へと起きていく問題に立ち向かっていく「バードマンだった男」と背後霊のように彼につきまとう「バードマン」。



 リーガンが歩き回るところにカメラが付いて行き、あたかもノーカットで撮られているかのように場面場面が繋がっていく。まるで、すべてが夢の中のようだ。「現実と虚構が入り混じる世界」とも表現されている今作だけれども、私にとってはすべてが幻想のように思える。夢オチにつぐ夢オチ。解放されたように見えても、新たな悪夢の始まり。つくりもの(芸能)の世界に生きるというのは、そういうことなのかもしれない。
 
 マイク役のエドワード・ノートンの熱演には、にやにやしながら見入ってしまった。垂れ目で優しい顔立ちをしているのに、癖のある役も似合う。せっかくなら役名をまんま「エドワード・ノートン」で出て欲しかったなあ(ひどい誤解を背負い込むことになるだろうけど)。それくらいの、わっかりやすいブラックユーモアも入れてくれれば。
 

17歳

2015年04月09日 | 2010年代 欧州

17歳(Jeune & Jolie)

2013年 フランス
監督・脚本:フランソワ・オゾン
製作:エリック・アルトメイヤー 、 ニコラ・アルトマイエール
出演:マリーヌ・ヴァクト、ジェラルディン・ペラス、シャーロット・ランプリング
フレデリック・ピエロ、ファンタン・ラヴァ、ナタリー・リシャール、ヨハン・レイセン

 17歳の誕生日を迎えた夏、イザベルはリゾート地で知り合ったドイツ人の青年と
はじめての経験をする。行為の最中に、彼女の瞳に映っていたのは、もう一人の自分。
青年に心惹かれていたはずのイザベルだったが、次の日には彼に対し、何の感情も持て
なかった。

 彼女の頭をしめていたのは、別のこと。あの娘はだれ? 私はだれ?

 バカンスの終わった秋には、彼女は“レア”と名乗り、売春を重ねていた。ぶ厚い化粧を
して母親のクローゼットから失敬した地味なシャツを着て、20歳と偽り、不特定多数の
男たちと会う。



 イザベルを演じるマリーヌ・ヴァクトの華奢な腰に、折れそうに細い足が不安定さを強調
している。学校では大人しく息を潜め、母親といる時は不満げ、しかしベットの上では勝ち
誇ったような表情もみせる。一番リラックスしてみえるのは、歳の離れた弟といる時だろう。

 いやーもう、ドキドキするよね。彼女から目が離せない、というかカメラは流れるように
彼女の動きを執拗なまでに追っていく。そして、どの瞬間も彼女は美しい。ゾッとするくらい
綺麗な横顔に少女と女の境目をみる。

 新しい自分になりたい、早く大人になりたいから。自分の若さと美しさを見せつけたいから。
スリルのあるゲームみたいで楽しいから。いろんな人の性に興味があるから。大人たちが未だ
隠し続けている世界に何があるのか知らないと。私だってお金を稼げる。親の庇護なんて、
もう要らない。だけど見知らぬ大人たちには優しくされたい。同世代の子たちを密かに出し抜
いて優越感に浸りたい。私は特別な存在だから。愛されたいから、求められたいから。

 理由なんて何とでもつけられる。すべて彼女の中にあるモヤモヤ。心の奥底から湧き上がる
新しい感情や欲望の呼び方がわからないのだから、自分自身を把握することもままならない。

 ただ、そこにドアがあったから、あるいはドアがあるように思えたから、ノブを回して
開けてみただけ。そして季節が変われば、当たり前のように次の部屋へと移っていく。
それが彼女なりのフェイズ、なのだろう。

エイプリルフールズ

2015年04月01日 | 2010年代 邦

エイプリルフールズ

2015年 日本
監督:石川淳一
製作:石原隆
脚本:古沢良太
出演:戸田恵梨香、松坂桃李、 富司純子、里見浩太朗、 寺島進、高橋努、浜辺美波、
滝藤賢一、山口紗弥加、浦上晟周、りりィ、高嶋政伸、岡田将生、窪田正孝、矢野聖人、
菜々緒、ユースケ・サンタマリア、小澤征悦、戸次重幸、宍戸美和公、大和田伸也、
古田新太、千葉真一


 テレビドラマ「リーガルハイ」の製作陣がおくるオールスター・キャストの群像コメディとくれば、
面白いのは間違いないよね、こーゆーイベント的な映画は、当日見なきゃな!と思って劇場へと
スキップしてゆきました。



 が、思ってたよりは人情劇。
 4月1日についた嘘が連鎖して大騒動へと転げ回っていくのですが、それぞれのエピソードでの登場
人物が抱えてる事情が重くて、一概に「嘘」はダメダメ~と切り捨てれません。

 笑えるか、どうかはツボ次第かな。役者さん達のピタッと役にはまりこむ、細か~い演技が好きな
人は含み笑いしぱなっしかも。
 私は里見浩太朗&富司純子の演じる、いかにも上品なご夫妻が「宮様ごっこ」してるのが好きだなあ。
そりゃあ信じちゃうよ。コーヒーカップを配膳する手も震えちゃうよ。すっかり感じいってる「良い人」
な運転手さん・滝藤賢一のお父さんっぷりにも脱帽。

 だけど、キャストほぼ全員が嘘をつくと思ってたのにそーでもないんだな。。。爆弾はもっと用意
してほしかった、というのが正直なところ。
 意外と真面目に「エイプリルフールというもの」に向き合ってると思います。