Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

地下室のメロディー

2014年04月21日 | 1960年代 欧州

地下室のメロディー(原題:Mélodie en sous-sol)

1963年 フランス

監督:アンリ・ヴェルヌイユ
脚本:ミッシェル・オーディアール、アルベール・シモナン、アンリ・ヴェルヌイユ
出演:アラン・ドロン、ジャン・ギャバン、ヴィヴィアーヌ・ロマンス、モーリス・ビロー、ジャン・カルメ



数々の悪事を働いてきたシャルルは、出頭後に人生最後の犯罪として
カンヌのカジノから大金を奪う計画を立てる。
仲間に誘ったのは、服役中に知りあった青年フランシス。
これを演じるは、まだアゴが細い、いかにも色男風のアラン・ドロン。
さっそく、フランシスをカンヌへ行かせ、計画の下準備をさせるが、
三流のチンピラでしかない彼は、たぶらかしたはずの踊り子に本気になるわ、
仲間からの連絡も無視するわ、どうにもこうにも。

強奪計画の当日でも、排気口をくぐるもなかなか進まず、屋根をつたうのも
一苦労だったり、ヒヤヒヤし通りで、今日びの映画では、ここまで大事な局面にきても
主役が不器用すぎて話が進まないって、そんなにないかも。
当時のアラン・ドロンファンじゃないけど「もうやめてあげて!!」って思ってしまうほど。

そして、最後の最後の、アラン・ドロンの突っ伏した背中! 
最低で、最高!!!!!
予想していなかったくせに、これが見たかったんだって気にさせられる。
加えて、ジャン・ギャバンの表情も絶品。
もうこの先、人生で何かあったら、これを思い出せばいいんだな・・。
オチとしては、「太陽がいっぱい」以上だと思う。

世界残酷物語

2014年04月06日 | 1960年代 欧州

世界残酷物語(原題:MONDO CANE)

1962年 イタリア
監督・脚本:グァルティエロ・ヤコペッティ
製作:グァルティエロ・ヤコペッティ、パオロ・カヴァラ、フランコ・プロスペリ

ニューギニアでは豚に人が授乳していたり、南の島では女性たちが多数で男狩りをしていたり、
アメリカでは死んだ愛犬にお墓を建てたり・・・と世界各国でのあらゆる奇妙な風俗、習慣、趣味嗜好を
ジャーナリストであり、映画監督であるグァルティエロ・ヤコペッティが映し出す。
嘘かホントか!?
今みればユーモアに満ち満ちている映像をニヤニヤ観察する感覚だけど
この映画が公開されたのは50年以上前!

願わくはタイムスリップして、往事の映画館で往事の人々と一緒に見てみたい!!
お尻がムズがゆくてたまらないだろうけど、一緒に驚愕してみたいなあ。

捏造映像もかなり仕込まれている、いかがわしいドキュメンタリー作品☆
本作の世界的な大ヒットを受けて、原題 "MONDO CANE" から、これ以降の
いかがわしいドキュメンタリー映画は「モンド映画」と総称されるようになったという
記念碑的作品でもあります。
しかし60年代によく、これだけ世界各国の文化を知っていたなあ、と感心しきり。

残酷、ということで言えば
太古から変わらぬ暮らしを続けていた未開の地に、キリスト教の布教者がやってきて
今まで何も不自由ないと思っていた現地の人々が教えを受けることで、「漠然とした不安」を持ち
心身ともに苦しみ、信仰なしでは生きられないと思うようになるのが、悲しいなと思った。
しかしその発想から、貨物飛行機信仰へ向かうなんて、ユーモアの感覚が尋常じゃない。
ヤコペッティの目、凄すぎる。

世界が歪んでみえるのではない、
いかに世界が歪んでいるかが、よくわかるのだ。

若者のすべて

2013年05月20日 | 1960年代 欧州


若者のすべて(Rocco e i suoi fratelli)

1960年 イタリア=フランス
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
製作:ゴッフリード・ロンバルド
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、
マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリ
出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、クラウディア・カルディナーレ
カティーナ・パクシヌー、アドリアーナ・アスティ、シュジー・ドレール、ニーノ・カステルヌオーヴォ

イタリア南部の貧しい地域から、北部の大都市ミラノへ移住してきた兄弟たちの物語。
ボクサーとしてカネを稼ごうとジムに入った次男のシモーネと、三男のロッコ、その二人の間を揺れ動く娼婦のナディアとの
関係が核となって描かれています。

この3人の、変りゆくさまが実に見事なのです。
シモーネは、先に出稼ぎに出ていた長男に代わって一家を支える次男のはずなのに、マイペースでおだてにのりやすい単細胞。
ナディアに入れあげて、ボクシングのトレーニングにも身が入らず、カネをたかったり、盗みをしでかしたり、好き放題。

一方、三男坊のロッコは、おとなしくて、まだまだ大人にはなりきれていない様子。
家族で安アパートの一間に転がり込んだ頃は子どもっぽさをわざと出しているのか、椅子をぎっこぎっこ揺らしながら唄ったり、
朝食のコーヒーをフーフーしながら飲んでいるポーズが可愛いすぎる!のです。

すれっからしの娼婦であるナディアは、シモーネにもたかるように寄っていったのですが、突然姿を消し
数年後、偶然に出会ったロッコの優しさにひかれていきます。
客をとることをやめ、すっかりロッコ一筋になったナディア。まさに恋する乙女の表情。

ふたりの関係に嫉妬したシモーネは仲をひきさこうと、嫌がるナディアをロッコの目の前で無理矢理に犯します。
この事件を経て、シモーネはさらに荒れるようになり、深く傷ついたナディアはシモーネを軽蔑しながらも復讐するために寄り添います。
ここでは、典型的な悪女を演じるナディア。すっかり破れかぶれといったていで、この「演じてる」感じも、演じているのですよね。
ボクサーとしての立場も、惚れた女の心も奪われて、放蕩を繰り返すシモーネを、いつまでも赦すロッコ。
現実派の四男チーロに「聖人ロッコ」とまで言わしめるのですが・・・あまりに考え方が観念的。
シモーネも愚かだけど、ロッコもまた愚かだと思えます。

大勢で構想を練った脚本だけに、どのシーンも見応えがあってインパクトがありました。
原題は「Rocco e i suoi fratelli」ロッコと兄弟たち ですが、最初っからロッコが主役の設定だったのかなあ?
と疑いたくなるほど、途中からのロッコへの光の当て具合が急激に増したように思えます。
ヴィンチェ/シモーネ/ロッコ/チーロと、それぞれの兄弟の名前がついた回にくぎってあるし、もとは兄弟たちが
それぞれの立場で南北の貧困の差を感じていく物語だったのが、撮影の中でアラン・ドロンがロッコの役に入り込む
うちに、急成長を遂げたような気がしてなりません。

見終わった後は、どうにもうまくいかない現実に寂しさを感じるのですが、ラストシーンで五男のルーカがロッコの
ポスターをそっと撫でて去っていく姿に、心をやさしく撫でられるような感じがします。

夕陽のガンマン

2013年05月06日 | 1960年代 欧州

夕陽のガンマン(原題:Per qualche dollaro in più)

1965年 イタリア
監督:セルジオ・レオーネ
製作:アルトゥーロ・ゴンザレス、アルベルト・グリマルディ
脚本:セルジオ・レオーネ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ

ポンチョを羽織った若武者の流れ者モンコ、黒ずくめのスーツ姿の初老の大佐、二人は凄腕の賞金稼ぎだ。
この二人が次に狙った相手は同じでだったので、協力しながら、まあ時には出し抜きながら
一味を撃退することになった!!

『荒野の用心棒』の大ヒットから2作目のセルジオ・レオーネ監督作品。
そもそも黒澤明監督の『用心棒』を西部劇に作り替えたのは「荒野の用心棒」なのだけど、
「もしも黒澤明が西部劇を撮ったら?」と仮定すると、この作品の方が近くなるのではないかと思ってしまう。
とてつもなく長い間を持たせて緊張感を持たせたり、男達の荒々しい目の煌めきから深い情感を感じさせるところに
黒澤スピリッツを思い起こさずにはいられません。

それから役者陣の天性の輝きも見事なもの。
クリント・イーストウッドの早撃ちがキレッキレで☆
振り向き様の早撃ちに痺れまくる!!
これまで無名で、これが映画2作目だなんて、信じられないくらいだけど
ちょっとした間を持たせて、そこで目が細させる表情が甘くて、サマになりますなあ。

それに比べ、リー・ヴァン・クリーフの怪しさときたら・・・。
馬の鞍にのせた各種の銃をあやつり、黒ずくめのスーツに、パイプくわえて
だまし合いだらけのセリフ。
胡散臭いっっ!! でも、たまりません!!!

太陽はひとりぼっち

2012年10月29日 | 1960年代 欧州

太陽はひとりぼっち(原題:L' ECLISSE)

1962年 イタリア=フランス
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:アラン・ドロン、モニカ・ヴィッティ、フランシスコ・ラバル、リッラ・ブリグノン

ヴィットリアは、長年つきあっていた恋人と別れた。
彼女は、素人投資家の母を証券取引所へと訪ねたが、母は相場に夢中で話を聞いてもくれなかった。
空しさを抱えたまま友達のアパートでふざけたり、セスナでローマの上空を飛んだりして、過ごす日々。

アフリカのイメージと音楽で、踊り狂うシーンがいい。
「彼らは幸福を追求せず、自然のままに生きてるんでしょ?」
「ここでは物事すべてが複雑だわ、愛でさえも」というヴィットリア。
確かに、幸福を希求しすぎるから、複雑になってしまうかもしれない。

母に会いに再び取引所へ行くと、株の大暴落がはじまっていた。
借金を負った母を心配して、仲買人のピエロに相談したヴィットリア。
ピエロは、彼女に興味をもち、接近していく。

このピエロは落ち着きが無く、カフェの女の子のお尻を触るわ、電話でも怒鳴りちらすわ
恋人が実は金髪ではなく染めていただけで別れるというようなゲスな男で、
でも、アラン・ドロンなんですよね~。
一見スマートにみえる、けど・・・思いやりはない感じで、ヴィットリアが躊躇するのもわかります。

愛の不毛を知りながらも、また恋に落ちていくヴィットリア。
ふいに現実に立ち返りながら。