Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

イリュージョニスト

2011年04月26日 | 2010年代 欧州
イリュージョニスト (L'Illusionniste) アニメーション映画
2010年 イギリス=フランス 
監督・脚色・音楽:シルヴァン・ショメ

観客が何人だろうと、見向きもされなくても、同じように
昔ながらの手品をみせて、町から町へわたっていく、初老のマジシャン。
ある日、離島に住む貧しい少女は、初めてみた手品師を「魔法使い」と
信じ、トランクを持って彼を追いかけてきた。
言葉も通じない2人の、優しさにあふれた、ささやかな日々。

あたたかな手書き風のアニメーションで、言葉少なに
映像と音楽だけが物語をつむいでいく。
この、やさしくて、せつない物語をもっと
ずっとずっと・・見ていたかった。

年老いた手品師が、自分を慕う少女を喜ばせようと、
財布を空にしてまでも願いを叶え続け、注いだ愛情は、
少女に生き別れた自分の娘の姿を重ねていたのだ・・・と
思うと、ほろりと苦い。
そして、少女は都会の風を受け、いつしか大人になっていく。

フランスの喜劇王とよばれるジャック•タチが生前に「娘に捧ぐ」かたちで
遺した脚本を「ベルヴィヴ•ランデブー」のシルヴァン・ショメが
脚色・監督。
このシルヴァン・ショメという監督は、不思議なコビトをつかわして
人のこころの奥の灯りをともしたり、フッっと吹き消したりするのです。

まるで魔法使いのように。


グラン・トリノ

2011年04月22日 | 2000年代 米
グラン・トリノ

2008年 アメリカ
監督: クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アーニー・ハー、クリストファー・カーレイ、ジョン・キャロル・リンチ

哀しくて哀しくて
夜ベットに入ってからも、ひっそり泣いてしまいました。

元自動車工の老人は、ある事件をきっかけに隣に住むモン族の少年と交流を持つようになり、
心を開いていくというシンプルで、美しい構成の映画です。
それだけに、描かれていない部分への想像がひろがります。
口の悪いウォルト老人が今までどんな人生を歩んできたのか、モン族のスーやタオがそれから
どんな人生を送るのか、そして、きっとアメリカのどこかであるのだろう、似たような現実。

こまかな模様が描かれた外線をハサミでナゾって切り取るように丁寧に描き出しています。
ややもすると、まどろっこしいシーンもあるのだけど、そこをゆっくりと、ゆっくりと。
それがジワジワときいてくるのです。

クリント•イーストウッドの表情で、彼がだんだんと心を許している様子が手に取るようにわかって、
ほほえましく、きっと何か起こる予兆がそこかしらにあって、哀しかった。

グラントリノの輝かしい姿とともに、淡く想い出に残り続ける映画だと思います。