パリ、テキサス(原題:Paris,Texas)
1984年 フランス=西ドイツ
監督:ヴィム・ヴェンダース
製作:クリス・ジーヴァニッヒ、ドン・ゲスト
製作総指揮:アナトール・ドーマン
脚本:L・M・キット・カーソン、サム・シェパード
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ハンター・カーソン、
ディーン・ストックウェル 、オーロール・クレマン
撮影:ロビー・ミューラー
編集:ペーター・プルツィゴッダ
音楽:ライ・クーダー
覗き部屋で客と女給として、かつて愛し合った男と女が壁を隔て、電話で話をする。
壁には大きなマジックミラーが設えてあり、男から女の姿は見えるが、女からは男の姿は見えない。
一方通行の視線、一方通行の会話が、なんとも切ない。
男は4年前に女と息子を残して失踪していた。
行方を知った弟が砂漠まで訪ねてきても、記憶も言葉も失ってしまっている。
すったもんだの末にロサンゼルスまで帰ってきて、弟夫婦に育てられていた息子と再会し、
閉ざしていた心を取り戻していく。
この息子のハンター(8歳)の戸惑いや恥ずかしさや甘えや思いやりが、逐一手に取るようにみえて
かわいくて仕方ない。
おい、こんな子をよく放っておけたな。もーーー!!
ぜったいぜったい離しちゃだめだよ、って思うのに。
出てくる人たちは、みんな愛し合っているというのに。
うまくいかないの。想いが強すぎるがゆえに。
愛さえあれば、なんていうけれど、幸福に生活していくのに必要なのは「至上の愛」ではなく、
バランス感覚なのかな、と思わされてしまう。