Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

悪い奴ほどよく眠る

2012年12月25日 | 1960年代 邦

悪い奴ほどよく眠る

1960年 日本
製作・監督:黒澤 明
出演:三船敏郎、森雅之、志村喬、三橋達也、香川京子、加藤武、西村晃、藤原釜足

土地開発公団と建設会社の汚職疑惑。
公団の課長補佐である和田が警察に拘引され、そして・・・結婚式が始まる。
公団の副総裁である岩渕の娘・佳子と秘書の西の結婚式である。
主要人物が一同に会し、さらには汚職を嗅ぎつけた新聞記者達が遠巻きに式の様子を伺う。

うわあ、ここから何が起こるのか!!!
鮮やかな導入部だなあ!
『ゴッドファーザー』でも、妹の結婚式に一族が集まったところから物語が始まっていきますが
コッポラは、この結婚式のシーンからインスパイアを受けたのだとか。

さらに、この披露宴には仕掛けがあります。
ケーキ入刀の合図とともに、会場に運ばれてきたケーキは、なんと公団のビルをかたどっており、
7階の窓の1つにはバラの花が1本つき刺さっていたのです。
以前、この7階の窓から飛び降り自殺した社員がいたというのは、周知の事実!
ざわめく会場。顔を見合わせる役員たち。
胸騒ぎが、ざわざわと・・。それぞれの想いが交差します。
話の運び方の上手さに感嘆しきりです。
脱税ものがこんなにも、かっこいいなんて! 
主体としては、企業の汚職に絡み自殺した父の無念を晴らそうと画策する青年の話なのですが、
視点の多さにも驚かされます。
わたし達観客は、岩渕とともにほそく笑み、和田とともにヤキモキし、佳子とともに疑い、
白井とともにビクビクし、辰夫とともに苛立ち、板倉とともに嘆き、西とともに口笛を吹くのです。

「悪い奴ほどよく眠る」の最後のタイトル幕が、心にもずどーんと落ちます。
かっこいいです、はい。


砂漠でサーモン・フィッシング

2012年12月08日 | 2010年代 欧州

砂漠でサーモン・フィッシング(原題:SALMON FISHING IN THE YEMEN)

2011年 イギリス
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマス、
アムール・ワケド、トム・マイソン、レイチェル・スターリング


ポール・トーディの小説「イエメンで鮭釣りを」。
以前、この本のタイトルと装丁に惹かれて入手、とてもおもしろかったので
映画化の話を聞いて、楽しみにしていたのですが


映画で「砂漠でサーモン・フィッシング」
というタイトルは、どうにも触手を動かされない、ですね・・・。

なんだろう、この差って。
でも原作よかったし、ユアン・マクレガー主演だし、と思って、観に行きました。


物語は、熱帯の地、砂漠ひろがるイエメンに、鮭を泳がせて釣りをするプロジェクトが始まるところから。
水産学者のアルフレッド・ジョーンズ博士は、その無茶苦茶な計画に全く賛同していなかったが
イギリス首相広報のマクスウェルの思惑により、上司の圧力をかけられ、投資コンサルタント会社の担当者
ハリエットに会う事に。思いつきでジョーンズが言ったことにハリエットは乗り気をみせ、出資者の大富豪
シャイフにも別荘に招かれたのです。

すべてが説明的で、とんとん拍子に事象が流れていき、一番重要なはずのシャイフの言葉にも力がありません。
ああ、こんなものなのかと思いました。

しかし、ハリエットが恋人の戦地での消息不明にショックを受け、職場放棄をした後
ジョーンズ博士が思いあまって彼女の家を尋ねたシーン。
彼女が扉を開けたとき、ずっしりと感情が伝わってきました。
ジョーンズ博士の、彼女に対する思いやりと鮭の計画に対する野心も、やっと見えてきます。
そして、舞台はイエメンへ。鮭たちが躍動します!!

その後、原作とは袂を分つのですが
映画は映画としての落としどころがあるのだと、充分に見せつけてくれます。

初日に映画館で観ましたが、
いつもより、おじさん1人客が多かった気がします。
釣り人としては、釣られるタイトルだったのでしょうか。

恋のロンドン狂想曲

2012年12月01日 | 2010年代 米

恋のロンドン狂想曲(原題:You Will Meet a Tall Dark Stranger)

2010年 アメリカ=スペイン
監督:ウッディ・アレン
出演:ジェマ・ジョーンズ、ナオミ・ワッツ、ジョシュ・ブローリン、アンソニー・ホプキンス
アントニオ・バンデラス、フリーダ・ピントディア


これは、邦題と原題のバランスが絶妙ですね!
邦題だけだとそこまで良いとは思わないかもだけど、原題をみると・・・なるほど。
イギリス人って、ほんとに変な人が多いからね~。もちろん個人的な偏見ですよ。

それはさておき、ウッディ・アレンが2組の夫婦の恋のから騒ぎを描きます。
作家志望のロイと、美術家志望のサリーは違う恋を夢みて、サリーの父アルフィは
コールガールと再婚、元妻のヘレナは占い師にはまり中。
それぞれの思惑が行ったり来たりの大騒ぎ。
なのですが、娘夫婦であるサリーとロイも、それほど若くないし、
テーマは「老いらくの恋」なのかなーという気もします。

若いコールガールに溺れるアルフィ役;アンソニー・ホプキンスの表情が実にかわいい。
まさに老いらくの恋だけど、単なるエロじじいには見えない、アンソニー・ホプキンスの
清潔感はさすが。
その逆を行くのが、娘の夫役のジョシュ・ブローリン。窓からみえる隣のマンションの
美女に夢中の、鳴かず飛ばずの作家。だらしない風でも手練手管に長けている。
その妻サリー役には、ナオミ・ワッツ。
この人は年を重ねるごとに深みが出て、素敵になっていきますね。
その更に上をいくサリーの母:ジェマ・ジョーンズ。
上品かつ下世話な・・・矛盾した魅力をふりまきます。
彼女が言う「人生は一度きりじゃないのよ」ってセリフ、すごいなー。
来世でやり直せば良いのよって。

俳優さんたちの魅力あふれる群像劇でした。