Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

ダンケルク

2017年10月07日 | 2010年代 欧州

ダンケルク(原題:Dunkirk)

2017年 イギリス=アメリカ=フランス=オランダ
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ、グレッグ・シルバーマン
出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、
アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、バリー・コーガン、ケネス・ブラナー
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集:リー・スミス
音楽:ハンス・ジマー
美術:ネイサン・クロウリー

「『ダークナイト』『インセプション』を撮ったクリストファー・ノーラン監督の
最高傑作!!!」という触れ込みを真に受けると、物足りなさもあるかもしれない。
嘘ではないにせよ、前述2作とは同じ線上にはなく、方向性が違うのだから。

ダンケルクは、フランス北部の街。
第2次世界大戦でドイツ軍に連合軍の兵士たちが追い詰められ、彼らを救うため、
民間の小さな船舶もを動員して、総掛かりで大撤退が進められた。

この史実をもとにした戦争映画にも関わらず、敵兵の姿はない。
派手な戦闘シーンもない。
重要人物であるチャーチル首相さえ出てこない。
説明もセリフも最小限。
40万人の兵士たちが右往左往した浜辺の一週間、救助にかけつけた民間船の1日、
援護に向かった戦闘機の1時間が交差して描かれる。

敵襲に怯え、ギスギスする英仏の兵士たち。
戦況が不明のまま、にっちもさっちもいかない状況が続く。
目を凝らしても見えてこない部分が多くて、いつまでたっても緊迫感が解けず、
不安が募り、焦燥がつきない。

そんな中、名もない人達が己の信念を貫き、大撤退の礎となっていった。
その熱い想いがさざ波のように静かに広がって、胸を打つ。

グッバイ、サマー

2017年09月17日 | 2010年代 欧州

グッバイ、サマー (原題:Microbe et Gasoil)

2015年 フランス
監督:ミシェル・ゴンドリー
製作:ジョルジュ・ベルマン
脚本:ミシェル・ゴンドリー
出演:アンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、ディアーヌ・ベニエ、オドレイ・トトゥ、ジャナ・ビトゥネロバ
撮影:ロラン・ブリュネ
美術:ステファヌ・ローゼンバウム

誰も彼も、ノープランで走り出しちゃえる、そんな年。
どこの国の14歳も同じだなあ。

女の子に間違われる見た目をコンプレックスに思っているダニエルは
転校生のテオと意気投合し、自分たちで作ったスクラップの車で
旅にでる。
少年たちのワルぶってるらしき素行がかわいくて、かわいくて
胸が苦しくなるくらいだった。

大人じゃ無いし、子供じゃない。
自分たちだけでなんでもできると思っていて
気の合う友達がいれば無敵でサイコー!
一度きりの特別な夏。

トレインスポッテング2

2017年05月23日 | 2010年代 欧州

トレインスポッテング2(原題:T2 Trainspotting)

2016年 イギリス
監督:ダニー・ボイル
製作:アンドリュー・マクドナルド、ダニー・ボイル、クリスチャン・コルソン、
バーナード・ベリュー
脚本:ジョン・ホッジ
製作総指揮:アービン・ウェルシュ、アロン・ライヒ
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、
ロバート・カーライル、アンジェラ・ネディヤルコーバ、アービン・ウェルシュ
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
編集:ジョン・ハリス
美術:マーク・ティルデスリー、パトリック・ロルフ




「トレインスポッティング」20年ぶりの続編! しかも主要スタッフ・キャストをほぼ変えずに!!
リバイバルブームとはいえ、この作品がまた観れるなんて、まさかだ。
ジャンキー漬けの仲間たちとの生活を描いた前作は、映画初主演だったユアン・マクレガーの
無垢な魅力とエネルギーに溢れていた。
あのレントンに再び会えるのだろうか、いや変わってしまっただろうか、もちろん変わっていて
当たり前だよね、でもやっぱり・・・期待してはいけないと迷いつつも、学生時代の恋人に再会
するような気分で劇場に足を運んだ。


果たして・・・!
そこにはレントンがいた。
20年分の歳をとったレントン。
大金を持ち逃げした後に、他国で人生をやり直した彼が故郷のスコットランドに戻ってきた。

変わった? 変わってない? 変わった? 変わってない?
はじめの20分くらいはそんなことばっかり考えてた。
そんな私の(観客の)気持ちを追いかけるように、前作のシーンへのセルフオマージュが
幾つも仕掛けてあって、ニヤリがとまらない。
そして、なんといっても、ワンシーンごとにかっこいい!!!
そうそうそう、この感じ。
懐メロも近年のヒット曲も狙いすました映像に気持ち良くサーフしていく。
やってることは相変わらずクズなのに、どうしてこんなに惹かれてしまうんだろう。

いまだドラッグから抜け出せず自殺しようとするスパッド、美人局でせこく稼いでいる
シック・ボーイ、刑務所から無理やり脱獄してきたベグビー、かつての仲間との再会で
繰り広げられるすったもんだが、ちょー楽しかった。

前作を観てない人、はまってない人には意味不明な限定的な作品かもしれない。
これは失われた20年を埋める後日談。そして20年前のあの日に帰っていく物語。

宇宙人王(ワン)さんとの遭遇

2016年10月30日 | 2010年代 欧州

宇宙人王(ワン)さんとの遭遇 (原題:L’ARRIVO DI WANG)

2011年 イタリア
監督・脚本:アントニオ・マネッティ、マルコ・マネッティ
出演:フランチェスカ・クティカ、エンニオ・ファンタスティキーニ、ジュリエット・エセイ・ジョセフ、アントネット・モローニ
音楽:ピヴィオ、アルド・デ・スカルツィ

「宇宙人」かつ「王さん」って意外な組み合わせ、とタイトルをポップに感じて観たけど、思ってたよりは悪趣味だった。中国人は宇宙人かあ。まあジョークにもいろいろありますね。

通訳の仕事をしている女性・ガイアは、緊急の用事で今から通訳をして欲しいという依頼を受ける。何も聞くな、見るなと拘束状態で、地下室に連れてこられたガイアは、事情も分からぬまま暗闇の中から聞こえる中国語を訳していく。秘密警察らしき男の厳しい尋問に憤りを感じたガイアは、通訳をたびたび中断し、人道的に対応するよう求めるが、男は聞き入れようとしない。実は、ガイアが通訳をしている相手はイカそっくりの宇宙人だったのだ。

王(ワン)と名乗る宇宙人は、世界で一番多く使われている言語である中国語を勉強し、地球人と友好的な関係を築くために地球に来たと言う。王さんの言うことを信じ、秘密警察の男に拷問を止めるよう訴えるガイアだが・・・。

中国語を話す=口先でうまいこと言ったって信頼できっかコノヤロー、とばかりに宇宙人を疑い続ける図式が皮肉っぽい。盲目的に対話相手を信用した人には強烈なしっぺ返しが待っている。キツい冗談だなぁ。これが英語だったらどうなのか、ドイツ語なら、日本語なら、と想像も膨らむ。

前半は同じ質問を繰り返すのらりくらりから、後半は秘密警察からの脱出を図る怪しさ増す展開。この映画が日本製作だったとしても驚かないな〜。ガイアが宇宙人に同情するにつれて、真面目すぎる一面を露呈させ、深みにハマりこんでいくところがおかしかったし、ワンアイデアを引っ張りすぎなのも味噌で、B級映画はどこの国でも同じような匂いをプンプンさせてるのかなと思った。

わたしを離さないで

2016年09月02日 | 2010年代 欧州
わたしを離さないで(原題:NEVER LET ME GO)

イギリス=アメリカ 2010年
監督:マーク・ロマネク
製作:アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ
製作総指揮:アレックス・ガーランド、カズオ・イシグロ、テッサ・ロス
脚本:アレックス・ガーランド
出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ
音楽:レイチェル・ポートマン
撮影:アダム・キンメル
編集:バーニー・ピリング

カズオ・イシグロによる同名小説の映画化。
今年放送された同原作のTBS系テレビドラマがあまりに泥々としていたため、それを踏まえて観ると、非常に淡白な印象。

閉鎖的な施設「ヘールシャム」で幼い頃から育ったキャシー、ルース、トミーの3人は、18歳になると学校を出て、同じような施設で育てられた人たちと農場のコテージで共同生活を送ることとなる。
彼女たちは「提供者」となるまで自由な生活を送り、「提供者」の世話をする「介護人」の役割を担っても良いとされている。そして「提供者」は3〜4回の提供後、短い人生を終える。
だが3人は、コテージの先輩からヘールシャムで育った子どもたちには執行猶予が設けられているという噂を耳にする。

といった複雑なストーリーにも関わらず、説明は最小限に留められている。
ショッキングな展開が日常の当たり前の出来事のように進んで行く語り口は原作に近いんじゃないかと思う。ボーッとしていると彼らの当たり前ではない深い悲しみを見逃してしまう。

ルースとトミーが短い人生をかけて、たとえ自分の感情や恋心とは離れようとも、定められた運命に抵抗したいんだという強い意志は痛いほど伝わったし、それらを全て見守りながら受け入れていくキャシー役キャリー・マリガンの諦めを含んだ笑顔が春の日差しのようにどこまでも穏やかで、惹きつけられた。