Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

夢売るふたり

2012年09月30日 | 2010年代 邦

夢売るふたり

2012年 日本
監督・脚本:西川美和
出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木村多江


貫也と妻の里子は小料理屋を営んでいたが、天ぷら油から火が燃えうつり、店が全焼してしまう。
すべてを失い、酒びたりの日々を送る貴也が、酔った勢いでした浮気がきっかけで、
妻・里子は、寂しい女たちの心のスキをついて金を騙し取る結婚詐欺を思いついた。
夫婦は、店の再開資金を得るため、女たちを次々にだましていく。

里子は、それを「夢を売る」と呼ぶ。
都会の喧噪の中で、自らの光を失った星たちを照らす些細な夢。
こんな、どうしようもない私でも誰かの役にたてるんだ、と。
自ら進んで貴也に金を渡す女たち。

じゃあ、その中で「夢を買った」と思える女性はどれだけいるんだろうか。
里子は、強く、賢く、どこか破綻している。
貴也は、この策謀は、里子の「腹いせ」に過ぎないという。

誰かしらの、心の闇をずっと見続けなければならない映画だ。
ずうっと胸が痛い。

監督/脚本の西川美和さんが現代版「夫婦善哉」を描こうと企画された作品らしいが
善哉のように甘くはない。
独自のスパイスが塩どころでは、ないからだ。

暗黒街のふたり

2012年09月23日 | 1970年代 欧州

暗黒街のふたり(原題;DEUX HOMMES DANS LA VILLE)

1973年 フランス=イタリア
監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
出演 :アラン・ドロン、ジャン・ギャバン、ミムジー・ファーマー、ミシェル・ブーケ 、イラリア・オッキーニ


10年前に銀行強盗を首謀したとして逮捕され、12年の求刑を受けたジーノ。
保護司のジェルマンの力添えによって出所し、愛する妻とともに新しい生活を始める。

「暗黒街のふたり」という日本語のタイトルから
前科者である主人公がさらに進んで犯罪に手を染めていくのを想像したのですが
ギャング映画ではありません。
原題も「街のふたり」といった感じだけど、前科者に対する街の反応がひとつのテーマかな。

ジーノは昔の仲間からの誘いを断り、真面目に働きだし、保護司とは家族ぐるみのつきあいで
順調に社会復帰をしていきます。

アラン・ドロンの保護司になついている、従順な瞳がたまらないですね。
岡惚れする保護司の娘の気持ちもよくわかります。

しかし、ある日、ピクニックの帰りに暴走車を避けようとしてジーノと妻の乗った車は
暴走車を避けようとして大破。
この事故で、最愛の妻を失ったジーノは、悲嘆にくれ自暴自棄になるが
やがてそれも乗り越えて、小さな街に移り住み、印刷工場で働くようになる。
新しい恋人もでき、ようやく傷も癒えたかにみえるが、以前ジーノを逮捕した警部が
その地に赴任してくる。
警部はジーノを今もって悪人だと決めつけ、執拗にジーノに迫り、追いかけまわし
悲惨な結末を自ら呼び込んでいく・・・。

警部は一方的であり、嫌な野郎に見えるけれども、これが現実だろう。
ジャン・ギャバン演じる保護司が良い人すぎるのかも。
ラストまで見終えた後に、オープニングでジャン・ギャバンがとぼとぼと歩いていた姿が
余韻として残ります。




反撥

2012年09月12日 | 1960年代 欧州

反撥

1965年 イギリス
監督:ロマン・ポランスキー
出演:カトリーヌ・ドヌーブ、イヴォンヌ・フルノー、ジョン・フレーザー

エステサロンで働く若い娘キャロルは、姉と同居している。
姉は毎日のようにボーイフレンドと会い、情事を重ねているが、
キャロルは自身の性の目覚めとともに嫌悪感を抱くようになる。
情事・・・ひいては、男というだけで。
その鬱積とした心持ちは日に日に大きくなり、彼女の精神をも蝕んでいく。

暗い目をした少女。
この役は、カトリーヌ・ドヌーブにあってないんじゃないか?
とも、感じるのだけど
演技や演出は素晴らしく、後半はかなり恐ろしかった。

暗い目がいつしか虚ろとなり、狂気に侵されていく。
現実と白昼夢が交錯する。

大人への階段は、こんなに険しかっただろうか。

真夜中のピアニスト

2012年09月07日 | 2000年代 欧州
真夜中のピアニスト
(原題:Da Battre Mon Coeur S'est Arre^te')

2005年 フランス
監督:ジャック・オーディアール
出演:ロマン・デュリス、ニ-ル・アレストラップ、リン・ダン・ファン、オーレ・アッティカ、エマニュエル・ドゥヴォス

不動産ブローカーの青年トム。
彼の亡き母はピアニストだった。
トムも子供の頃から、ピアノ漬けの生活だったのであろう。
しかし母の死後、父は酒と若い女に溺れ、トムは仕事に追われ、不法占拠する住民たちに
多少手荒っぽいこともしなければならない。

ある日、母のマネージャーだった男に再会したトムは、ピアニストとしてのオーデションの
機会を与えられる。
久しぶりにピアノに触れたトムは、忘れていた情熱を取り戻し、中国人ピアニストにレッスンを頼み
荒れた生活に翻弄されながらも、練習に熱中していく。

・・・のだけど
ピアノの音がいかにも教科書的。
これって、ピアノの音がミソになる映画じゃなかったのか?! あれ、捉え違いか。
まあ・・・シーンも割いてないし、そういうとこを観てほしいわけじゃないんだろうな。

ロマン・デュリス演じる、根がいい(であろう)青年が世間の荒波にもまれて、もみかえして
それなりにタフに生きてる感じもよかったし
後半の怒濤のように目まぐるしく変わる表情も見ものだった。

好みとしては、もっと狂気に走ってほしいけどね。