Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

レイルウェイ 運命の旅路

2014年04月27日 | 2010年代 豪

レイルウェイ 運命の旅路(原題:The Railway Man)


2013年 オーストラリア=イギリス
監督:ジョナサン・テプリツキー
製作:クリス・ブラウン、ビル・カービシュリー、アンディ・パターソン
脚本:フランク・コットレル・ボイス、アンディ・パターソン
出演:コリン・ファース、ニコール・キッドマン、ジェレミー・アーヴァイン、ステラン・スカルスガルド、
サム・リード、石田淡朗、真田広之



第二次世界大戦時に、日本軍の捕虜であったエリック・ローマクスの自叙伝『泰緬鉄道 癒される時を求めて』の映画化。

ローマクスは、捕虜としてタイとビルマを結ぶ鉄道の建設に従事させられ、拷問を受けた過去を持つ。
戦後は口を閉ざし、故郷でひっそりと暮らしていたが、老年に差し掛かった頃に出会った
パトリシア(ニコール・キッドマンのボブが可愛い!!)と幸せな結婚生活を送る中で、
戦争時の記憶が生々しく蘇り、彼を苦しめていく。



何も感じずに生きて来たのに、今になって心が荒ぶるのは愛する人が現れたから。

彼が負う責め苦を知った軍人仲間は、軍の通訳を務めていた「永瀬」が今もタイで生き延びており、
戦争体験を伝える記念館で働いていることが書かれた新聞記事をそっと差し出す。
復讐を果たせ、と。

当事者にとっては、国がどれだけ謝罪をしようとも、国交を正常化させても、関係ない。
憎まずにいられないのは、個人の顔。
永瀬が「我々は・・・」と言うのに対し、ロマークスは「私は、と言え」と正す。
ロマークスの「なぜ、お前が生きている?」との問いに、永瀬は「戦争の悲劇を伝えるため」と言う。
ロマークスは「犯罪だろ」と叫び返す。
まさに、これだと思う。日本の多くのメディアが使う“戦争の悲劇”。
被害者ヅラで「我々は戦争の痛みを知っている」という日本人と、日本以外の国の感覚のズレ。

50年以上の時を経たロマークスと永瀬の対峙は、仕草ひとつ表情ひとつ見逃せなかった。
別々の形であれ、向き合おうと努力をし続ける二人は凄いと思った。



地下室のメロディー

2014年04月21日 | 1960年代 欧州

地下室のメロディー(原題:Mélodie en sous-sol)

1963年 フランス

監督:アンリ・ヴェルヌイユ
脚本:ミッシェル・オーディアール、アルベール・シモナン、アンリ・ヴェルヌイユ
出演:アラン・ドロン、ジャン・ギャバン、ヴィヴィアーヌ・ロマンス、モーリス・ビロー、ジャン・カルメ



数々の悪事を働いてきたシャルルは、出頭後に人生最後の犯罪として
カンヌのカジノから大金を奪う計画を立てる。
仲間に誘ったのは、服役中に知りあった青年フランシス。
これを演じるは、まだアゴが細い、いかにも色男風のアラン・ドロン。
さっそく、フランシスをカンヌへ行かせ、計画の下準備をさせるが、
三流のチンピラでしかない彼は、たぶらかしたはずの踊り子に本気になるわ、
仲間からの連絡も無視するわ、どうにもこうにも。

強奪計画の当日でも、排気口をくぐるもなかなか進まず、屋根をつたうのも
一苦労だったり、ヒヤヒヤし通りで、今日びの映画では、ここまで大事な局面にきても
主役が不器用すぎて話が進まないって、そんなにないかも。
当時のアラン・ドロンファンじゃないけど「もうやめてあげて!!」って思ってしまうほど。

そして、最後の最後の、アラン・ドロンの突っ伏した背中! 
最低で、最高!!!!!
予想していなかったくせに、これが見たかったんだって気にさせられる。
加えて、ジャン・ギャバンの表情も絶品。
もうこの先、人生で何かあったら、これを思い出せばいいんだな・・。
オチとしては、「太陽がいっぱい」以上だと思う。

世界残酷物語

2014年04月06日 | 1960年代 欧州

世界残酷物語(原題:MONDO CANE)

1962年 イタリア
監督・脚本:グァルティエロ・ヤコペッティ
製作:グァルティエロ・ヤコペッティ、パオロ・カヴァラ、フランコ・プロスペリ

ニューギニアでは豚に人が授乳していたり、南の島では女性たちが多数で男狩りをしていたり、
アメリカでは死んだ愛犬にお墓を建てたり・・・と世界各国でのあらゆる奇妙な風俗、習慣、趣味嗜好を
ジャーナリストであり、映画監督であるグァルティエロ・ヤコペッティが映し出す。
嘘かホントか!?
今みればユーモアに満ち満ちている映像をニヤニヤ観察する感覚だけど
この映画が公開されたのは50年以上前!

願わくはタイムスリップして、往事の映画館で往事の人々と一緒に見てみたい!!
お尻がムズがゆくてたまらないだろうけど、一緒に驚愕してみたいなあ。

捏造映像もかなり仕込まれている、いかがわしいドキュメンタリー作品☆
本作の世界的な大ヒットを受けて、原題 "MONDO CANE" から、これ以降の
いかがわしいドキュメンタリー映画は「モンド映画」と総称されるようになったという
記念碑的作品でもあります。
しかし60年代によく、これだけ世界各国の文化を知っていたなあ、と感心しきり。

残酷、ということで言えば
太古から変わらぬ暮らしを続けていた未開の地に、キリスト教の布教者がやってきて
今まで何も不自由ないと思っていた現地の人々が教えを受けることで、「漠然とした不安」を持ち
心身ともに苦しみ、信仰なしでは生きられないと思うようになるのが、悲しいなと思った。
しかしその発想から、貨物飛行機信仰へ向かうなんて、ユーモアの感覚が尋常じゃない。
ヤコペッティの目、凄すぎる。

世界が歪んでみえるのではない、
いかに世界が歪んでいるかが、よくわかるのだ。