Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

チェイサー

2013年03月31日 | 1970年代 欧州

チェイサー(原題:Mort d'un Pourri)
1978年 フランス
監督:ジョルジュ・ロートネル
製作:ノルベール・サーダ
脚本:ジョルジュ・ロートネル、ミシェル・オーディアール
出演:アラン・ドロン 、モーリス・ロネ、ミレーユ・ダルク、ステファーヌ・オードラン、クラウス・キンスキー、オルネラ・ムーティ

親友から殺人のアリバイを頼まれた男は、事件に関わるうちに財界を揺るがす書類を手に入れ、
警察からも犯行グループからも追われる立場に・・・。
ジャズのリズムにのせて、とんとん拍子に事件の深みに嵌まっていきます。
男臭さがムンムン薫る、アラン・ドロン43歳の時の作品です。
ただ、ドロンと親友のシーンは仲の良さがあまり感じられなくって、なぜ、この人のために
こんな骨を折ってやるのか、納得いきません。

なにが起きても表情はさほど変えなくて、まさに苦虫を噛みつぶすだけ。
これは文化の違いだと思うのですが、小説にしてもドラマにしても日本のハードボイルドものには
とことん侠気を感じるのに対して、欧州のそれは淡々としています。
泥臭さはなく、あっさりと。
しかし、そんな渋い演技の中でも、嘘をつくときの瞳のきらめきは
アラン・ドロン独特のものがあって、思わずほくそ笑んでしまいます。
エンドロールへの流れのキザったらしさときたら・・・さすが世紀の二枚目ですね。

ある女の存在証明

2013年03月19日 | 1980年代 欧州

ある女の存在証明(原題:dentificazione di una donna )

1986年 イタリア=フランス
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
製作:ジョルジョ・ノーチェラ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ、ジェラール・ブラッシュ
出演:トーマス・ミリアン、ダニエル・シルヴェリオ、 クリスティーヌ・ボワッソン、ララ・ウェンデル、マルセル・ボズフィ

映画監督であるニコロを主人公に、マーヴィとの出会いと別れ、イーダとのつかの間の恋を描く。
屋外でのシーンは美しく幻想的に映し出され、家の中のシーンでは一挙一動をつぶさに、またベットシーンは濃密に描かれている。
この悩める監督は、アントニオーニ自身か。

男は、鞄を手に旅行から自宅へ帰ってきた。
しかし、防犯警報解除のキーを持っていなかったため、警報が鳴り始める。
出ていった妻は、警報装置を残していったのだ。

彼女の名はマーヴィ。
もともと医師である姉の患者であったが、深くつきあうようになった。
マーヴィとつきあっていることによって、見知らぬ男から忠告を受けたり、跡をつけられたりする。
2人の中で、少しずつすれ違いが起きていく中、彼女は旅先で深い霧に紛れ去っていってしまう。

マーヴィへの未練を持ちながらも、男はイーダという女性と頻繁に会うようになる。
イーダと愛し合うようになり、結婚を決意するも、イーダは彼と出会う前につきあっていた男との間に
できた赤ちゃんを妊娠していた・・・。

そうして、男はまた自分の世界へと旅立っていく。
きっと帰ってきたら、警報装置が鳴り出し、以前の女を思い出しながらも
また次の女と恋をするのだろう。

問わず語らず、男は旅を続ける。この映画は、彼の夢想であり、半生でもある。
愛の不毛を描き続けた監督が、辿る愛の迷路。
ある女の・・・というより、むしろ「ある男の存在証明」ではないかと、
女の私からしたら、思ってしまう。

よりよき人生

2013年03月09日 | 2010年代 欧州
よりよき人生(原題:Une vie meilleure)

2011年 フランス
監督:セドリック・カーン
製作:クリスティナ・ラルサン
脚本:セドリック・カーン、カトリーヌ・パイエ
出演:ギョーム・カネ、レイラ・ベクティ、スリマン・ケタビスリマン、ブリジット・シィ

コックのヤンは、有名レストランで働くナディアと恋に落ちた。
彼女はシングルマザーで、9歳の男の子がいる。
彼女と息子を連れて、湖畔に遊びにでかけた先で、ヤンは理想としていた自分のレストランのイメージに近い
空き家を見つける。
ヤンの頭の中で、夢が現実味を帯びて広がっていく。
すぐに物件を手に入れ、レストランを開く準備をすすめるが、資金繰りのために多額の借金を抱えてしまう。
カウンセラーに「レストランを手放して借金を返済し、小さな物件で再スタートを」と説得されるが、
どうしてもヤンは諦めることができない。

わかる!わかる!!
絶対、諦めた方がいいことでもね・・・諦めたらダメって思ったりして・・・
踏ん切りつかないよね。
悩んだあげくに、いつもいつも、ダメな方を選んでしまう。
どうしてなんだろう、よりよい人生を模索してるはずなのに。

ヤンは不器用だし、詰めが甘いところがあるけれど、地道に頑張る。
何度断られても、何度でも出向く。
一方、ナディアは今の生活にもヤンにも不満がある。焦りがある。
カナダでのよりよい生活を求め、子供をヤンに預けて、旅立っていく。

残されたヤンと子供のスリマン。
ヤンは、子供を放り出したって良いくらいの状況なのに
がんばるんだなあ。

ギョーム・カネのタレ目の瞳に奥深い優しさを、
その先にセドリック・カーン監督の誠実さを感じる。
何度でもやり直せばいいんだって、言ってくれてる。

ジャンゴ 繋がれざる者

2013年03月03日 | 2010年代 米

ジャンゴ 繋がれざる者(原題:Django Unchained)

2012年 アメリカ
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
製作:レジナルド・ハドリン、ステイシー・シェール、ピラー・サヴォン
出演:ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン


男の名は、ジャンゴ。
1858年テキサス、奴隷のジャンゴは賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツに買い取られ、
自由の身になった。
ジャンゴは、奴隷市場で売り飛ばされた妻ブルームヒルダを取り戻すべく、シュルツとともに
キャンディの大農場に乗り込んだ・・・。



農場には、たくさんの黒人奴隷たち。
産まれたときから、奴隷に囲まれ、育てられてきた領主カルヴィン・キャンディ。
白人は馬に乗り、食卓につき、命令を出す。
黒人は、あらゆる用事をいいつかり、荷物をもち、罰をうけ、殺し合う。
それがここでの秩序だ。奴隷制度を長く引きずってきたアメリカの暗部だ。
でも、ジャンゴは違う。
だからこそ、かっこいい。とても。とてつもなくだ。

タランティーノが撮る西部劇☆
大好物が2つもお皿に乗ってて、嬉しすぎて、どうしよう!!って感じです。
お約束はぜんぶ実行、至るところのツボを押す、サービス満点の
タランティーノ節炸裂で大満足。
映画館を出るころには(架空の)銃を腰からぶらさげていました。