Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

長江哀歌(エレジー) 

2016年08月21日 | 2000年代 中


長江哀歌(原題:三峡好人)

2006年 中国
監督・脚本:ジャ・ジャンクー
製作:シュウ・ポンルー、ワン・ティアユン、チュウ・ジョン
製作総指揮:チャウ・キョン、ダン・ボー、レン・チュンルン
出演:チャオ・タオ、ハン・サンミン、リー・チュウビン、ワン・ホンウェイ、マー・リーチェン、
チョウ・リン、ホァン・ヨン
撮影:ユー・リクウァイ
編集:コン・ジンレイ
音楽:リン・チャン
美術:リャン・チントン、リュウ・チャン



 国家事業のダム建設のため、水の底に沈みゆく町・奉節にかつて住んでいた妻子を探す夫、奉節から帰ってこない夫に会いにいく妻らの道筋を淡々と追う。この情報社会にあって事前に何にも調べず、ただ現地に行って人づたいに丹念に訪ね歩く。

 広大な大地と人口を誇る中国で、何年も会っていない人を探すということは、大変なことなんだろうと思う。土地も家も人の気持ちも、国家の一存で深い長江の流れに呑み込まれていく。それでも手がかりが見つかるのは、人と人が繋がっているからだ。

 タバコや酒、茶、糖(アメ)という嗜好品が会話のきっかけとなり、共感をよび、思い出となり、彼らを繋げていく。唐突に文字でスクリーン表示されるので、最初は何のことか、と身構えてしまうけれど、関わる人たちの想いをふんわりとそれらに乗せてドラマはそのまま続いていく。巨大な国家に翻弄される市井の人々の悲しみの中に、力強さと希望の光が見えてくる物語だった。