Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

ダージリン急行

2022年06月09日 | 2000年代 米
ダージリン急行(原題:The Darjeeling Limited)
2007年 アメリカ
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン
製作:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、リディア・ディーン・ピルチャー、
スコット・ルーディン
製作総指揮:スティーヴン・レイルズ
出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン
撮影:ロバート・D・イェーマン
編集:アンドリュー・ワイスブラム

インド北西部を走るダージリン急行に乗り込んだ3人の兄弟。
1年前の父の死から絶縁していた彼らは、旅での触れ合いを通じて再び絆を取り戻す。
・・・なんて、わかりやすい物語じゃない。

兄弟それぞれのやっかいな性格と事情もあって、ボタンを掛け違えたようなチグハグ旅が続く。みんなして失踪した母親に会いにいけば、きっと家族は元通りになるだろうという長男フランシスの思惑は、まあわからないでもないけれど、そうは問屋が卸さない。それが幻想に過ぎない徒労感に打ちのめされる。

大ゲンカの末に列車を降ろされて、砂漠を歩いて空港に向かう兄弟たちが見たのは、現地の子どもたちが川に流されている姿。急ぎ救難に走るも、一人の子どもが助からず命を落としてしまった。その追悼の中で波のように寄せては返し、思い出される父の葬儀の日のこと。再び母へと会いに向かう兄弟は、いつでも気持ちがバラバラだった自分たち兄弟の在り様を、そのままに受け入れていた。

大団円では無いかもしれないけど、旅を経て日常へ帰っていく彼らは変わりつつあり、それがこの大騒ぎの顛末だったかと思うと、どっとした疲れと、顔がにやけるくらいのささやかな幸福感が宿る。