Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

ビル・カニンガム&ニューヨーク

2013年05月26日 | 2010年代 米

ビル・カニンガム&ニューヨーク(原題:Bill Cunningham, New York)

2010年 アメリカ
監督:リチャード・プレス
製作:フィリップ・ゲフター
出演:ビル・カニンガム、アナ・ウィンター、カルメン・デロリフィチェ、トム・ウルフ、エディッタ・シャーマン

長期にわたり、ニューヨーク・タイムズ紙でストリートの写真を元にしたファッションコラムと社交コラムを連載している
フォトグラファー、ビル・カニンガム84歳を追ったドキュメンタリー。
彼は、愛用のカメラ片手に自転車でニューヨークの街角をゆききし、夕方になれば社交パーティのはしご。
いち早くトレンドを嗅ぎ付け、それを記事にする。
映像に出現するのは、ビルが撮り続けた数多くのスナップ。
ファインダーという限られた画角の中でさえ、彼の視点の豊かさに目を奪われる。

ビルが住むのは、フィルムのネガが詰まったキャビネットだらけの狭い部屋、自分の着るものは耐久性重視、
食べ物にもこだわらない。
さらに、一度として恋をしたことがないという。

若い頃のビルの写真はなかなかの美男。
新進気鋭の帽子デザイナーで、センスとアイデアに溢れたカメラマン。
そして、周りには、恋に浮かれてるセレブリティたち。
なぜ一度も?と思うけれども、それはやはり彼が少し別の場所にたって、冷静に目の前の世界を見ているからなんだろう。
それと、もうひとつ。
撮りたいって気持ちは、彼にとって欲望そのものだから、じゃないかと思う。
他のことは何もいらない。
撮りたい。
撮り続けたいという気持ちが彼の姿から、強く伝わってきた。

この映画を見たら、ニューヨークに行きたくなっちゃうんじゃないかなあ、という予感があった。
でも、違っていた。
そんなことはどうでもい!!
とっとと、カメラにフィルムを詰めて、街に出よう!

若者のすべて

2013年05月20日 | 1960年代 欧州


若者のすべて(Rocco e i suoi fratelli)

1960年 イタリア=フランス
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
製作:ゴッフリード・ロンバルド
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、
マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリ
出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、クラウディア・カルディナーレ
カティーナ・パクシヌー、アドリアーナ・アスティ、シュジー・ドレール、ニーノ・カステルヌオーヴォ

イタリア南部の貧しい地域から、北部の大都市ミラノへ移住してきた兄弟たちの物語。
ボクサーとしてカネを稼ごうとジムに入った次男のシモーネと、三男のロッコ、その二人の間を揺れ動く娼婦のナディアとの
関係が核となって描かれています。

この3人の、変りゆくさまが実に見事なのです。
シモーネは、先に出稼ぎに出ていた長男に代わって一家を支える次男のはずなのに、マイペースでおだてにのりやすい単細胞。
ナディアに入れあげて、ボクシングのトレーニングにも身が入らず、カネをたかったり、盗みをしでかしたり、好き放題。

一方、三男坊のロッコは、おとなしくて、まだまだ大人にはなりきれていない様子。
家族で安アパートの一間に転がり込んだ頃は子どもっぽさをわざと出しているのか、椅子をぎっこぎっこ揺らしながら唄ったり、
朝食のコーヒーをフーフーしながら飲んでいるポーズが可愛いすぎる!のです。

すれっからしの娼婦であるナディアは、シモーネにもたかるように寄っていったのですが、突然姿を消し
数年後、偶然に出会ったロッコの優しさにひかれていきます。
客をとることをやめ、すっかりロッコ一筋になったナディア。まさに恋する乙女の表情。

ふたりの関係に嫉妬したシモーネは仲をひきさこうと、嫌がるナディアをロッコの目の前で無理矢理に犯します。
この事件を経て、シモーネはさらに荒れるようになり、深く傷ついたナディアはシモーネを軽蔑しながらも復讐するために寄り添います。
ここでは、典型的な悪女を演じるナディア。すっかり破れかぶれといったていで、この「演じてる」感じも、演じているのですよね。
ボクサーとしての立場も、惚れた女の心も奪われて、放蕩を繰り返すシモーネを、いつまでも赦すロッコ。
現実派の四男チーロに「聖人ロッコ」とまで言わしめるのですが・・・あまりに考え方が観念的。
シモーネも愚かだけど、ロッコもまた愚かだと思えます。

大勢で構想を練った脚本だけに、どのシーンも見応えがあってインパクトがありました。
原題は「Rocco e i suoi fratelli」ロッコと兄弟たち ですが、最初っからロッコが主役の設定だったのかなあ?
と疑いたくなるほど、途中からのロッコへの光の当て具合が急激に増したように思えます。
ヴィンチェ/シモーネ/ロッコ/チーロと、それぞれの兄弟の名前がついた回にくぎってあるし、もとは兄弟たちが
それぞれの立場で南北の貧困の差を感じていく物語だったのが、撮影の中でアラン・ドロンがロッコの役に入り込む
うちに、急成長を遂げたような気がしてなりません。

見終わった後は、どうにもうまくいかない現実に寂しさを感じるのですが、ラストシーンで五男のルーカがロッコの
ポスターをそっと撫でて去っていく姿に、心をやさしく撫でられるような感じがします。

夕陽のガンマン

2013年05月06日 | 1960年代 欧州

夕陽のガンマン(原題:Per qualche dollaro in più)

1965年 イタリア
監督:セルジオ・レオーネ
製作:アルトゥーロ・ゴンザレス、アルベルト・グリマルディ
脚本:セルジオ・レオーネ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
出演:クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテ

ポンチョを羽織った若武者の流れ者モンコ、黒ずくめのスーツ姿の初老の大佐、二人は凄腕の賞金稼ぎだ。
この二人が次に狙った相手は同じでだったので、協力しながら、まあ時には出し抜きながら
一味を撃退することになった!!

『荒野の用心棒』の大ヒットから2作目のセルジオ・レオーネ監督作品。
そもそも黒澤明監督の『用心棒』を西部劇に作り替えたのは「荒野の用心棒」なのだけど、
「もしも黒澤明が西部劇を撮ったら?」と仮定すると、この作品の方が近くなるのではないかと思ってしまう。
とてつもなく長い間を持たせて緊張感を持たせたり、男達の荒々しい目の煌めきから深い情感を感じさせるところに
黒澤スピリッツを思い起こさずにはいられません。

それから役者陣の天性の輝きも見事なもの。
クリント・イーストウッドの早撃ちがキレッキレで☆
振り向き様の早撃ちに痺れまくる!!
これまで無名で、これが映画2作目だなんて、信じられないくらいだけど
ちょっとした間を持たせて、そこで目が細させる表情が甘くて、サマになりますなあ。

それに比べ、リー・ヴァン・クリーフの怪しさときたら・・・。
馬の鞍にのせた各種の銃をあやつり、黒ずくめのスーツに、パイプくわえて
だまし合いだらけのセリフ。
胡散臭いっっ!! でも、たまりません!!!