Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

欲望という名の電車

2015年05月18日 | 1950年代 米

欲望という名の電車(原題:A Streetcar Named Desire)

1951年 アメリカ
監督:エリア・カザン
製作:チャールズ・K・フェルドマン
脚本:テネシー・ウィリアムズ、オスカー・ソウル
出演:ヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランド、キム・ハンター、カール・マルデン、ルディ・ボンド
ニック・デニス、ペグ・ヒリアス、ライト・キング、 リチャード・ガリック

 
 ニューオーリンズの駅に降り立った未亡人ブランチ・デュボワは、「欲望」行きと表示された電車へ
乗り込んだ。「墓地」で乗り換え、妹のステラが住む街へと向かう。

 家を失い、身一つでの駆け込みだった。しかし彼女の期待よりも妹夫婦は貧しい生活をしており、
妹の夫スタンリーは、「妻の実家の財産は俺のもの」とばかりにブランチの荷物を漁って問い詰めるが
上等な衣服で着飾り、貴婦人きどりで、ひらり、ひらりと交わすブランチ。以後も反目し合う二人の
シーンは、画面から溢れんばかりの緊迫感が漂う。粗暴な役を演じたマーロン・ブランドからは、
男臭さがムゥムゥ匂ってくる。

 ブランチは、生活のためにスタンリーの同僚ミッチに言い寄る(自分が働くという考えは、お嬢様には
浮かばない)のだが、心も体も許すことはできない。そんな中、徐々に明らかになっていくブランチの過去。
実は、彼女は夫と子、父を亡くした後、自暴自棄になって次々と巷の男を誘惑しては放蕩に耽り、悪評に
追われるようにして故郷をでてきたのだった。それを知り、下卑た女だと執拗に体を求めてくる男達。
 
 ついには精神を崩壊させていくブランチは、浅ましくも醜くみえる。
 これが、これが、あの人の姿だろうか。
 大地主の娘であり、戦争を経て南部に追われ貧しい生活を余儀なくされても、輝くばかりに強く
美しかったスカーレット・オハラがどうして・・・!

 混同甚だしいのはわかっているのだけれども、それでも勝手に心はショックを受けてしまっている。
だってもうヴィヴィアン・リーを見たら名作「風と共に去りぬ」を想起せずにはいられない。その変貌
ぶりに胸がつぶれるような思いがする。誰もがスカーレットのように生きられるわけではないのだ。
「生き方」を知らない没落貴族は堕ちていくだけ。そこには、あらゆる欲望が渦巻いている。
  

シェーン

2014年05月06日 | 1950年代 米

シェーン(原題:Shane)


1953年 アメリカ
監督・製作:ジョージ・スティーヴンス
脚本:A・B・ガスリー・Jr.
原作:ジャック・シェーファー
製作:ジョージ・スティーヴンス
出演:アラン・ラッド、ジーン・アーサー、ヴァン・ヘフリン、ブランドン・デ・ワイルド、エミール・メイヤー


 流れ者のシェーンは、ワイオミング州の開拓地を抜ける途中で、スターレットの一家に
世話になり、下働きとして雇われることになった。
 その地では、以前から開拓移民たちと、牧畜業者のライカー一味との諍いが絶えない。
 スターレット家も弾圧に苦しめられており、新参者のシェーンもその争いに巻き込まれていく。

 名作西部劇として長くアメリカで愛されてきた作品だけど、非常にシンプルな構成で、
開拓時代のかけらも感じられない21世紀の今みると物足りないかも。
 逞しく誇り高い父親像も、優しく美しい母親像も、古き良きアメリカの理想の姿と言ったところ。
 
 ただ後半になって、さすらいの旅に出ざるを得なかったシェーンの悲しみが見えてくると
グッとシェーンが近い存在になってくる。
 いつから、こんな旅を続けてきたのか。
 彼の早撃ちや身のこなしに、彼の半生を伺うようになってくる。
 子どもと一緒になって「シェーン、カムバック」と叫んでしまう。

リオ・ブラボー

2013年12月08日 | 1950年代 米

リオ・ブラボー(原題:Rio Bravo)

1959年 アメリカ
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:ジュールス・ファースマン、リイ・ブラケット
出演:ジョン・ウェイン、ディーン・マーティン、リッキー・ネルソン、アンジー・ディキンソン、ウォルター・ブレナン、ジョン・ラッセル



テキサスの、とある町「リオ・ブラボー」保安官のチャンスは、これまで数々の悪事を働いていたジョーをついに捕えた!!
地方の権力を握っているジョーの兄は部下をつかって町を封鎖し、激しい攻防が始まる・・・
というほどの緊迫した展開ではなく、
余裕シャクシャクのジョン・ウェインに安心感をもって見ていられます。

銃の撃ち合いはあるものの、保安官の日常を描いたテレビドラマ的な感じ。
保安官側の、足も口も悪いスタンピイじいさんや、早撃ちで酔っ払いのデュード、まだ若いが目端の利くコロラドといった面々との掛け合いが楽しくて、手に汗を握るというよりはニヤニヤしながら観ちゃう映画です。

はらはらするシーンといえば、宵越しの金は持たねえ程に酒に溺れるデュードが
もう一杯やる金ほしさにタン唾まで手を突っ込んでコインを拾おうとしたり
酒をやめて保安官の相棒役を続けるか、酒狂いの一生を終えるかという葛藤と闘うところ。
これは、酒飲みにとっては痛いくらいにわかる!!(あ、わかるほど飲んじゃだめか)
でも人間臭さがあって、いいキャラクターなのですよね。

ダイヤルMを廻せ!

2012年03月26日 | 1950年代 米

ダイヤルMを廻せ!(原題:Dial M for Murder)

1954年 アメリカ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:レイ・ミランド/グレース・ケリー/ロバート・カミングス/ジョン・ウィリアムズ/アンソニー・ドーソン

フレデリック・ノットのテレビ劇を作者自身が脚色し直したヒッチコック監督のミステリー。

資産家である妻の浮気を知った夫は、犯罪歴のある知人を脅して、妻の殺害を計画しますが
いざ襲いかかった際に、知人は妻に刺殺されてしまいます。
それならば、と夫は妻を殺人犯に仕立て上げようと・・・展開が流れるように続き
ストーリー構成の見事さに加え、無駄のない構図に魅せられます。
今のセットのように物が多過ぎないのも良いところ。
ちゃんと一目で設定がつかめるし、登場人物たちがひとつの部屋の中で右往左往し
動きまわる様子は、如実にそれぞれの感情を表しています。

あまりに入り込んで、妻を殺害しようとする「夫」に共感しているのか、
浮気した「妻」に共感しているのか、観ていてわからなくなる・・のが技なんでしょうね。