欲望という名の電車(原題:A Streetcar Named Desire)
1951年 アメリカ
監督:エリア・カザン
製作:チャールズ・K・フェルドマン
脚本:テネシー・ウィリアムズ、オスカー・ソウル
出演:ヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランド、キム・ハンター、カール・マルデン、ルディ・ボンド
ニック・デニス、ペグ・ヒリアス、ライト・キング、 リチャード・ガリック
ニューオーリンズの駅に降り立った未亡人ブランチ・デュボワは、「欲望」行きと表示された電車へ
乗り込んだ。「墓地」で乗り換え、妹のステラが住む街へと向かう。
家を失い、身一つでの駆け込みだった。しかし彼女の期待よりも妹夫婦は貧しい生活をしており、
妹の夫スタンリーは、「妻の実家の財産は俺のもの」とばかりにブランチの荷物を漁って問い詰めるが
上等な衣服で着飾り、貴婦人きどりで、ひらり、ひらりと交わすブランチ。以後も反目し合う二人の
シーンは、画面から溢れんばかりの緊迫感が漂う。粗暴な役を演じたマーロン・ブランドからは、
男臭さがムゥムゥ匂ってくる。
ブランチは、生活のためにスタンリーの同僚ミッチに言い寄る(自分が働くという考えは、お嬢様には
浮かばない)のだが、心も体も許すことはできない。そんな中、徐々に明らかになっていくブランチの過去。
実は、彼女は夫と子、父を亡くした後、自暴自棄になって次々と巷の男を誘惑しては放蕩に耽り、悪評に
追われるようにして故郷をでてきたのだった。それを知り、下卑た女だと執拗に体を求めてくる男達。
ついには精神を崩壊させていくブランチは、浅ましくも醜くみえる。
これが、これが、あの人の姿だろうか。
大地主の娘であり、戦争を経て南部に追われ貧しい生活を余儀なくされても、輝くばかりに強く
美しかったスカーレット・オハラがどうして・・・!
混同甚だしいのはわかっているのだけれども、それでも勝手に心はショックを受けてしまっている。
だってもうヴィヴィアン・リーを見たら名作「風と共に去りぬ」を想起せずにはいられない。その変貌
ぶりに胸がつぶれるような思いがする。誰もがスカーレットのように生きられるわけではないのだ。
「生き方」を知らない没落貴族は堕ちていくだけ。そこには、あらゆる欲望が渦巻いている。