Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

アリゾナ・ドリーム

2016年12月03日 | 1990年代 欧州

アリゾナ・ドリーム(原題:Arizona Dream)

1992年 フランス=アメリカ
監督:エミール・クストリッツァ
製作:クローディー・オサール
脚本:デヴィッド・アトキンス、エミール・クストリッツァ
出演:ジョニー・デップ、フェイ・ダナウェイ、リリ・テイラー、ジェリー・ルイス、ヴィンセント・ギャロ
撮影:ヴィルコ・フィラチ
音楽:ゴラン・ブレゴヴィッチ
美術:ミリアン・クレカ・クリアコヴィッチ

 アクセルは、アラスカの雪原で暮らすエキスモーの親子を夢に見る。その夢は「おはよう、コロンブス」
なんてセリフで目が醒める。かつて彼の母は「コロンブスの大陸発見は幻想だった」と説いていた。
 アメリカンドリームは、もはや叶うことのない幻なのかーーー。
 こんな出だしから始まり、不毛の地アリゾナを舞台に、夢追い人たちの崩壊を描く。

 ニューヨークの漁業局で働き、魚になりたいと願う男アクセルは、叔父の結婚式のために戻ったアリゾナで
鳥になりたい女エレインと亀になりたい女グレースの義母娘に出会う。およそ現実的でない夢を抱えた3人は、
愛し合い憎しみ合いながらも、いびつな共同生活を営んでいく。
 しかし、そんな日々も長くは続かない。両親の死後に面倒をみてくれた叔父の死により、大人にならざるを
得なくなったアクセルを前にして、率直な怒りをぶつけるエレイン。そして、自らの幕引きを着々と実行して
いくグレース。

 「シザー・ハンズ」後「ギルバート・グレイプ」前(撮影当時28−29歳頃)のジョニー・ディップが主演
だけど、まだどこか初々しさがあって、当たりの強いベテラン女優と個性派女優に挟まれて四苦八苦している
様がおかしかった。喜劇王ジェリー・ルイスの存在感は言うまでもなく、また、往年名画の空真似ばかりして
いる従兄弟役のヴィンセント・ギャロがいい味出してた! 

 要所要所でこれでもかといじりたおす喜劇テイストながら、物語は徐々に悲劇へと転げ落ちていくのが
やるせなく、アコーディオンの音色が後をひいて、たまらなく悲しい気持ちにさせる。

黒猫・白猫

2016年11月14日 | 1990年代 欧州

黒猫・白猫(原題:Crna macka, beli macor)

1998年 フランス=ドイツ=ユーゴスラビア
監督:エミール・クストリッツァ
脚本:ゴルダン・ミヒッチ
製作:カール・バウムガルトナー
製作総指揮:マクサ・チャトヴィッチ
出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トロヴイッチ、ブランカ・カティク、フロリアン・アジニ、
リュビシャ・アジョヴィッチ、サブリ・スレジマニ、ジャセール・デスタニ、アドナン・ベキール、ザビト・メメドッフスキ
撮影:ティエリー・アルボガスト
編集:スヴェトリク・ミカザイッチ
音楽:ネレ・カライリチ、ヴォイスラフ・アラリカ、デーシャン・スパラヴァロ
美術:ミレンコ・イェレミッチ
衣裳:ネボイシャ・リパノヴィッチ

 ユーゴスラビアのジプシーの人々を役者として大量起用した(プロ俳優はマトゥコ・ダダン・イダの3人だけ)、
ドタバタ喜劇。

 ドナウ河沿岸でその日暮しに興じるマトゥコとザーレ親子。岸辺には黒猫と白猫。アヒルやヤギたちも放し飼い
されている。博打好きの親父マトゥコは有り金を擦ってしまい、父と旧知の仲のゴッドファーザーに相談するも
軽くあしらわれ、貨物列車強盗を企てるも、行き当たりばったりで大失敗。

 やったこともない列車強盗になんで恐れもせず一人で忍びこむのか??? 目当ての列車が来ただけでニヤニヤ
しちゃって・・・与太郎まるだし、落語ですかコレ、あーもう、上手くいかないよなっていうのが最初っから目に
見えてるんだけど、本人は全くめげてない。

 息子のザーレも良いお年なんだろうけど、設定年齢いくつ?ってくらいに子供っぽい立ち振る舞い。出てくるたびに、
おとぼけな効果音がついてまわるのが、たまらないのだ。そんな彼も、お転婆娘のイダにからかわれて恋に落ちる。

 しかし地元ギャングの親玉ダダンに金の返済を迫られたマトゥコは金の代わりに、息子のザーレとダダンの妹・
アフロディタの結婚を勝手に承諾していた。アフロディタは「テントウムシ」と呼ばれる身の丈1メートルほどの娘で、
夢の中で会った運命の人とでなければ結婚したくないと拒否する。時を同じくして、運命の人を探すのは
ゴットファーザーの息子・・・とくれば、運命の糸がもつれあい、上へ下への大騒ぎ。

 はちゃめちゃなんだけど、何があろうと明るく乗り越えていく姿にたくましさを感じる。ここでいう明るさとは
闇がないことだ。犯罪も死さえも重く扱われることなく、笑いとばす。そんな中で、家族をことのほか大切にする
やくざ者たちが微笑ましく、誰も彼もの必死さにみんな応援したくなって困ってしまう。

 

シャロウ・グレイプ(映画)

2011年08月17日 | 1990年代 欧州
シャロウ・グレイプ (原題:Shallow Grave)

1994年 イギリス
監督:ダニー・ボイル 
出演:ケリー・フォックス、ユアン・マクレガー、クリストファー・エクルストン

アレックス、デイビット、ジュリエットの3人は、同じアパートをシェアして仲良く
暮らしている。彼らは4人目の同居人を募集し、入居することになったヒューゴは、
引っ越したその夜に急死してしまう・・・。

サスペンスとしては、静かな映画だと、思います。
急死した死体を、淡々と受け入れて行く彼らの日常。
犯罪に手をそめていく決意、興奮、恐れ・・・。

どの感情にも「迷い」が含まれていて、だからこそ、自分は身を置いた事の無い状況
にもかかわらず、どこか日常のリアリティーを感じとってしまう。

それが空恐ろしい気がします。

それはさておき、ユアン・マクレガーの初々しい様子(映画出演2作目)には、思わず
目をほそめてしまいます。
まだ若かりしユアンの表情の生き生きしていることと言ったら・・!!
これだけで、わたしは、ご飯3杯いけますね。