Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

欲望のバージニア

2013年08月23日 | 2010年代 米

欲望のバージニア(原題:Lawless)

2012年 アメリカ
監督:ジョン・ヒルコート
脚本・音楽:ニック・ケイヴ
原作:マット・ボンデュラント
製作:ルーシー・フィッシャー、ミーガン・エリソン、ダグラス・ウィック、マイケル・ベナローヤ
出演:シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェイソン・クラーク、デイン・デハーン、ミア・ワシコウスカ、ゲイリー・オールドマン
ジェシカ・チャステイン、ガイ・ピアース



とりあえず、なんてったって物語冒頭でのサービスシーン!
付近一体を牛耳るギャングのボスを演じるゲイリー・オールドマンがトミーガンを撃ちまくる!!
理屈抜きに、全身がビリビリ痺れた。
ゲイリー・オールドマンがマシンガンを持っているっていうだけで、どうしてこうも心が震えるんだろう。
シリウス・ブラックもゴードン警部も良いけど、これでしょ、これっ☆
感涙~。わたしにとっては映画1本分の満足感のあるカット!

えーと、さて本編・・・。
舞台は、禁酒法時代のバージニア州。
密造酒ビジネスで名を馳せる兄弟がいた。
酒浸りで荒くれ者の長男ハワード、意志も力も強いリーダ格の次男フォレスト、ケンカ慣れはしていないものの野心旺盛な三男ジャック、
彼らボンデュラントは不死身だと言われている。
そこへ新たに着任した特別補佐官レイクスは、密造酒に対し、高額の賄賂を要求してきた。同業者たちが渋々従う中、いっさい拒絶する
兄弟たちにレイクスは非道な脅迫を突きつけ、激しい攻防が始まった。

それぞれのキャラクターが利いてて、悪役レイクスが同僚にまで嫌われるくらいのキザ野郎なのはもちろん
屈強で向かうところ敵無しのフォレストが、女にはめっぽう奥手だったり、
力が強い兄達にコンプレックスを感じているジャックは、そのくせ無鉄砲で世間知らずなんだか怖いもの知らずなんだか、
ありがちだけどツボをしっかり抑えてる!

原作は、マット・ボンデュラントの小説『The Wettest County in the World』。作者の祖父・大叔父たちが密造酒ビジネスにからんで
腐敗した警官相手に巻き起こした復讐劇を描いたもの。
親族間で語り継がれて来た伝説が、オールスター・キャストでの映画化とは何とも心ときめきます。



最後のマイウェイ

2013年08月08日 | 2010年代 欧州

最後のマイウェイ(原題:Cloclo)

2012年 フランス
監督:フローラン=エミリオ・シリ
製作:シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン
脚本:ジュリアン・ラプノー、フローラン=エミリオ・シリ
出演:ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル、マルク・バルベ、モニカ・スカッティーニ、ジョセフィーヌ・ジャピ、
ロバート・ネッパー、モード・ジュレ、サブリナ・セブク、アナ・ジラルド

1960年代~70年代にかけて活躍したフランスのポップスター、クロード・フランソワの生涯を綴る。



通算で6700万枚以上ものレコードを売りあげたフランスのスーパースター。
彼の代表曲のひとつ「Comme d'Habitude」は、新たな英語の歌詞をつけてフランク・シナトラが歌い、
「マイ・ウェイ」として世界的に知られている。



クロード・フランソワを演じたのは、実力派俳優ジェレミー・レニエ。画像をみると、ばっちり似せてきてる!
17歳頃~39歳までを熱演しているのですが、青年時代はどうしても無理がある・・・な。
が、その後のあまりの成りきりぶりに、ぐいぐい惹き込まれる。

クロード・フランソワは、1939年エジプトでスエズ運河の運行管理に関わる実業家の息子として生誕。
裕福な子ども時代を送ったが、スエズ運河国営化によって職を失った一家は、モナコに移住を余儀無くさせられる。
家計を助けるために、クロードは楽団にドラマーとして雇われることになった。

その楽団で唄い始めたクロードは、パリに進出し、レコード会社フィリップスと契約。
ファーストシングルは失敗に終わったものの、セカンド・シングル「ベル!べル!べル!」は200万枚のセールスを記録した。
一躍トップスターの座を獲得し、敏腕マネージャーがつくようになる。

このマネージャー役のブノワ・マジメルも、圧倒的な存在感があった。
ほぼムッとした表情を変えないのだけど、その中に喜びも哀しみも驚きも詰まっていて
小さな目の動きで、何を考えてるかが伝わってくる。

絶好調のクロードが恋に落ちたのは、フレンチポップ界のアイドルであるフランス・ギャル!
うわあ、彼女がクロード・フランソワと熱愛関係にあったなんて、全然知らなかった。
この頃のフランス・ギャルといえば、15、16歳。デビューしたばっかりじゃないですか。
うーむ、したたかだわ。女としての強さもみえ、彼女のイメージがちょっと変わったなぁ。

ギャルとの破局後は、家庭的なイザベルと結婚し、二児の子どもにも恵まれたクロード。
(ちなみにギャルの本名もイザベル・・・)
マネージャーとの決別後は、自らのプロデュースを細部にわたり拘り抜いて行い、世界ではじめて
ファンクラブを立ち上げ、出版社やモデル事務所を経営するなど実業家としての才能も発揮した。
アメリカ、イギリスのヒット曲を自在にカヴァーし、自らの作詞・作曲ナンバーも多数。勢力的に
公演を行い、39歳までの生涯を一気に駆け抜けた・・・。

見終わって感じたのは、この傲慢で独善的で革新的なエンターティナーは、フランス国民に深く深く愛されたのだという事。
なんだろう、この創り手のなみなみならぬ愛は。
もちろん愛がなきゃ、その人の映画なんて創らないだろうけど。それだけじゃない、違和感があった。
そこでもう一度、映画のチラシを読み返して、納得。クロード・フロンソワの息子たちが「世界デビューする直前に、39歳で
夭逝した父を世界に伝えるチャンスを与えてやりたかった」と全面協力しているのだ。
ひとつとして描き漏らしたくないというようなエピソードの詳細さや、心の傷までをもみせるようなプライベートシーンの多さに
それが現れていると思う。
当時の華やかなエンターテイメント界を上っ面で再現するのではなく、リアリティをも感じることのできる作品だ。

詩人、愛の告白

2013年08月07日 | 2010年代 欧州

詩人、愛の告白(原題:La confession d'un enfant du siècle)

2012年 フランス=ドイツ=イギリス
監督・脚本:シルヴィ・ヴェレイド
原作:アルフレッド・ドゥ・ミュッセ
出演:シャルロット・ゲンズブール、ピート・ドハーティ、リリー・コール、アウグスト・ディール、フォルカー・ブルッフ、
ギョーム・ガリエンヌ、カロル・ロシェ、ジョゼフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム

UKロックの問題児ピート・ドハーティが銀幕デビュー!!
しかも相手役はシャルロット・ゲンズブールという、クランクインのニュースが流れたときから
ずっと楽しみにしていたのですが、日本では劇場未公開。
wowow にて初上映を観賞しました。
そして、劇場未公開の状況に激し~く納得。

ピートは、なんでまた、こんなに太っちゃってブクブクの顔をみせているのか。

物憂げな表情で、ゆったりとした動作、自らの演技に酔っちゃってる感じ。
も、戻ってこいと言いたいところですが、本人インタビューによると、周囲のスタッフには絶賛だったとか・・・。
(腫れ物扱いされてたんじゃなくって?)

ストーリーは、作家ジョルジュ・サンドとの恋愛を描いた詩人アルフレッド・ドゥ・ミュッセの
私小説「世紀児の告白」を元にしています。
貴族の家系に生まれ自堕落な日々を送る詩人は、年上の未亡人に出会って強く惹かれ、熱烈なアプローチを続け、
恋仲にと関係を進展させる。全編にわたり、詩人ミュッセの心情がモノローグとして語られます。
それは酒と女に溺れ続ける彼のエクスキューズのよう。

未亡人を演じるシャルロット・ゲンズブールは、なかなかに雰囲気を出して良かったのだけど
画面が切り替わってピート・ドハーティが映ると、どうにもこの2人が同じ時代、同じ場所にいるとは
思えないほど、違いすぎます。
そして、厭世観に囚われ酒漬けの生活を送らざるを得なかった詩人ミュッセと、筋金入りの快楽主義者で
嬉々としてドラックの海にダイブするピート・ドハーティとの差異。
周囲には絶賛の演技をもってしても、埋められない溝がありました。