Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

風立ちぬ

2013年07月23日 | 2010年代 邦

風立ちぬ

2013年 日本
監督・脚本:宮崎駿
製作:奥田誠治、福山亮一、藤巻直哉
声の出演:庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、志田未来、野村萬斎

戦闘機ゼロ戦を設計したことでも知られる航空機技術者・堀越二郎をモデルとし、堀辰雄の小説「風立ちぬ」で描かれた、
結核患者である恋人を支えながら生きるストーリーもからめつつ、太平洋戦争当時の恋人たちを映し出します。


日本の貧しい暗い時代の物語を、こんなに夢いっぱいに魅せるなんて !!
主人公の二郎は、夢の中で憧れの航空機設計者カプローニと出会い、飛行機を造る夢を追い続けて
何があっても繰り返し繰り返し夢を見続けています。
どこまでが二郎の頭の中のことなのか、回想なのか、すべてが夢のよう。
見る人によって、受け取る物語が違うだろうなあと感じられる作品です。

風立ちぬ いざ行きやめも・・と、堀辰雄が訳したポール・ヴァレリーの詩が沁みてきました。
それを宮崎駿は「生きねば」と更に強い解釈を加えています。
二郎と、その恋人・菜穂子にとっての「生きる」とは、ただ単に命を長らえるという意味ではありません。
愛する人の側に居て、やらなければいけない事を行動し続け、我がままかもしれないけれど
めいっぱい生きたいように、生きるのです。

だからこそ菜穂子が二郎にあてる「生きて!」は力強い。
その背景となる空や雲には、突き抜けるような美しさがあります。
長年に亘り、空を、風を、描いて来たスタジオジブリの真骨頂。
おそらくは、ゼロ戦好きの監督の心の奥底に昔から眠っていた物語。
宮崎駿は、こんなことを思って、ずうっと風を描いていたのか!


アンコール!!

2013年07月11日 | 2010年代 欧州

アンコール!! (原題:SONG FOR MARION)

2012年 イギリス
監督・脚本:ポール・アンドリュー・ウィリアムス
製作:ケン・マーシャル、フィリップ・モロス
出演:テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジェマ・アータートン、クリストファー・エクルストン

気難し屋のアーサーは、最愛の妻マリオンの体調を常に気遣っている。
マリオンは、シニア合唱団“年金ズ”で歌うことが何よりの楽しみで、いつも明るく振る舞っている。
ガンを再発し、余命数ヶ月の告知を受けながらも、合唱の練習へ通い続けるマリオン。

そんな彼女が夫に向けて唄う「True Colours」(シンディ・ルーパー)、
そしてアーサーが妻を想って唄う「Lullabye」(ビリー・ジョエル)が心に沁みた。
単純に上手いとか下手っていう話じゃなくて、重要なのは歌詞でも表情でもなくって
とてもとても大切な人のために、とてもとても心を込めて唄って
それが聴いている人の心には確実に届くっていう情景をしっかり描いている。

合唱団“年金ズ”は、老人クラブながらロックンロールを唄うことを特色として
国際コンクールに出場することになるのだけど、その選曲が素晴らしい。
ストレートなロックンロールには走らず、ヒップホップにハードコア・パンク!
ソルト・ン・ペパの「Let's Talk About Sex」は、映画的に意表をつくためと推測されるとしても
モーターヘッドって!!
おばあちゃん、おじいちゃんたちが、Ace of Spades! Ace of Spades!! と弾けまくるっ。
にやけちゃいます♪♪♪
わたしは大好きだけど、合唱団をひっぱる明るく若い音楽の先生・エリザベスが同世代の間では
浮いてしまうことには納得。

チャーリー・リッチの「The Most Beautiful Girl」も劇中のアーサーの心情にぴったり。
勝手な想像だけど、堅物のアーサーが唄を口ずさむのは、若い頃から歌好きのマリオンに聴かせるため
だったのかな、なんて。

アーサーのする事は、すべてマリオンに捧げられている。
良い息子を持ちながらも、つい強く当たってしまうアーサーの親子間の確執にも触れられているけれど
たぶん奥さんのことが好きすぎて、自分の子どもも(子どもの世話をする奥さんに焼きもちをやいて)
受け入れにくかったのでは。
ともすれば教訓的な内容になってしまいがちだけど、強い絆で結ばれたアーサー&マリオンの夫婦が実に魅力的。
年老いた夫が妻を思う気持ちに、強烈に心を揺さぶられた。

モンスターズ・ユニバーシティ

2013年07月08日 | 2010年代 米

モンスターズ・ユニバーシティ(原題:Monsters University)

2013年 アメリカ
監督:ダン・スキャンロン
製作:コリー・レイ
脚本:ダン・スキャンロン、ダン・ガーソン、ロバート・L・ベアード
出演(英語版):ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、ヘレン・ミレン、スティーブ・ブシェミ
日本語吹替版:田中裕二、石塚英彦、一柳みる、青山穣

人気ディズニー映画「モンスターズ・インク」のシリーズ第2作。
恐がらせ屋の名コンビ・マイクとサリーの学生時代を描く。


子どもの頃から恐がらせ屋に憧れていたマイクは、名門大学「モンスターズ・ユニバーシティ」に恐がらせ学部に入学。
猛勉強に励むが、「見た目が怖くない」というモンスターとしては致命的欠点に悩まされ、同学部のサリーとも諍いが
絶えず、ついに試験会場で大げんか。マイクとサリーは、学長に学部からの退席を求められるが、自分の実力を皆に
証明する!!と、恐がらせ大会へ出場することを決意する。
大会出場の為に参加したクラブ「ウーズマ・カッパ」のメンバーたちは、ユニークで、ちょっとダメな奴らで、プリティ。
他にも、モンスターがわんさか出てくる。今回は、あったりまえだけど、モンスターだらけでとにかくスクリーンが賑やか。
山場につぐ山場で気が抜けないし、マイクとサリーがいくつもの壁を超えて成長していく姿も見られ、内容は盛りだくさん♪

それにしたって・・・サリーの好感度は下がりまくりだった。
登場からして、エリートの親の七光りと生まれもっての体格を武器にいばり散らすサリー。
自信過剰で、勝手なことばかりするし、便乗するくせにスグあきらめる。
前作では温厚だったサリーの若い頃がこんな嫌な奴だったなんて!! がーん。

でも仲違いをしていたマイクに対して、先に友情を抱くのはサリーの方。
自分なりにではあるけれどマイクを気遣い、フォローをしようと懸命になる様子はモンスターながら人間的だし
心配そうなサリーの表情に愛おしさも感じる・・・
けど、子どもの頃に今作を見ていたら、サリーの事はキライになってたかも。

一方、今回のマイクは(吹替版で見たのだけど)まんま爆笑問題・田中さんに見える!!
こんなにハマり役だったっけ? マイクがより小さくなってるのが要因なのかも。
いかにも田中さんが言いそう!なセリフのオンパレードだし。これは訳者の人もうまいんだろうなあ。
もう田中さんがマイクに見えて、いや、マイクが田中さんに見えて仕方ない・・あれ、どっちだ!?