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No268「しゃべれども しゃべれども」~小さな幸せ~

自分の感じたこと、思ったことをきちんと人に伝えるのは難しい。
そもそも、「話す」こと自体が苦手だったりすれば、
なおさらだ。

話し方に自信のない三人。
落語をやれば、悩ましい現状、今の自分を変えられそうな気がして
小さな落語教室に通いはじめる。

美人だけど、無愛想で、
相手を怒らすようなことばかり言って、
自分を守ろうとしている十河(香里奈)。
大阪から東京に越してきたばかりで、
大人相手だろうと、思ったことをぽんぽん口に出し、
生意気だけど、憎めない小学生の村林(森永悠希)。
元プロ野球選手で、批評眼は鋭いが、
あがり症で口下手な解説者の湯河原(松重豊)。
彼らを教えるのは、
古典落語をこよなく愛しているが、
腕も上がらず悩んでいる、二つ目の落語家、今昔亭三つ葉(国分太一)。

小さな村林に、ぬっとした巨体の湯河原が言いこめられたり、
自信もあり、落ち着いているように見えて、
実はそうでもなく、どこかたよりなげな三つ葉と、
この不器用な4人のユーモラスなとりあわせがいい。

教室のたびに、言い争いばかりしていたのが、
いつしか、口にはしないけれど、互いを気づかい、心配しあっている。
このほのぼのとした暖かい雰囲気は、まるで寄席みたいで、すてきだ。
ある時は言葉で、ある時は間や空気、行動で、
相手に思いが伝わったときのうれしさにあふれている。

クライマックスの三つ葉の一門会での舞台は、みどころ。
噺家を育てるのは、客だ、というのがよくわかる。
客が噺にのり、のった客が、噺家の可能性をひきだす。
そんな緊張感あふれる、見事な舞台、
噺家が「化ける」瞬間も、ぜひスクリーンで味わってほしい。
演じているのが、TOKIOの国分太一というから、驚く。
きっと、相当に練習を積んだのだろう。

伊東四郎のくせのある師匠ぶり、
八千草薫の可愛いおばあちゃんぶりと
脇を固める役者も、個性的で楽しい。

「好きなものから逃げると、一生、後悔する」
という湯河原の言葉が身にしみる。
原作も読んだが、その心意気をみごとに映像世界におさめている。

決して派手ではなく、感動やら感涙を呼ぶ作品ではない。
でも、なんだか楽しく、ほろりと涙をさそい、なんとなく元気をくれる
そんな等身大のすてきな作品。

ぜひ久々に家族や友人を誘って劇場で観てほしい。
隣の人の笑い声をきくのも、また映画を観る幸せの一つかもしれない。

満足度★★★1/2(星5個で満点)
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (an ziming)
2007-06-15 10:12:05
>>「好きなものから逃げると、一生、後悔する」
という湯河原の言葉が身にしみる。

…良い言葉ですね!

最近、元気にしてる?
 
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